喉頭全摘後の代用音声としてPROVOX2
®などのボイスプロテーゼは広く普及しているが,稀に発声困難な例も認められる。今回われわれは,PROVOX2
®挿入後に咽頭収縮筋の過緊張が原因と考えられる発声困難例を経験した。
症例:59歳男性。臨床経過:声門上癌T3N2bM0の診断で,喉頭全摘術,両頸部郭清術を行った。咽頭粘膜欠損部は縦1線に2層縫合し同部を咽頭収縮筋でカバーした。音声再建を希望されたため,二期的にPROVOX2
®挿入術を行った。以降発声訓練を行ったが発声不能であった。下咽頭,食道入口部を嚥下造影にて精査したところ,発声時にシャント口側の狭窄が確認された。狭窄部は咽頭収縮筋縫合部に一致し,咽頭収縮筋の過緊張による発声困難と考えられた。透視下に1%キシロカイン
®を狭窄部周囲に局注したところ,狭窄は速やかに改善し発声可能となった。以降再狭窄をきたすことなく良好に経過している。まとめ:喉頭全摘術の際に,縫合した咽頭収縮筋の過緊張が音声再建時には発声困難の原因となり得ると考えられ,注意を要すると考えられた。
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