日本気管食道科学会会報
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63 巻, 5 号
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特集:高齢者の癌治療—気管食道科領域における—
  • 大西 秀樹, 石田 真弓, 川田 聡
    2012 年63 巻5 号 p. 359-366
    発行日: 2012/10/10
    公開日: 2012/10/25
    ジャーナル 認証あり
    がん患者は治療のみならず,心理,社会,実存面におけるさまざまな問題を有している。これらは各々が大きなストレス因子であり,精神疾患が誘発されても不思議ではない。精神症状は患者にとって苦痛であり,治療にも負の影響をおよぼすため適切な介入が必要である。このように,がんという病気は生物学的な側面以外に,多くの人間学的な側面を併せ持っているが,この領域を取り扱う学問がサイコオンコロジー (精神腫瘍学) である。
    高齢者は治療指向,情報収集能力,判断能力などにおいて他の年齢層と異なることが知られているが,日常の臨床現場では検討されないままになっていることも多い。判断能力の問題は,患者を間違った判断による不利益から守るためにも重要であり,今後は判断能力に関して十分な検討を行ったうえで医療を行うことが求められる。
  • 藤井 正人
    2012 年63 巻5 号 p. 367-373
    発行日: 2012/10/10
    公開日: 2012/10/25
    ジャーナル 認証あり
    高齢者の頭頸部癌患者は特に喉頭癌や下咽頭癌で増加している。高齢者で進行癌の場合には根治的治療が困難な場合が多く,根治的手術に対してもさまざまな問題がある。多くの場合に放射線治療が選択され,全身状態が良好な場合には化学療法も併用する場合がある。しかし高齢者の場合の化学放射線療法は,Pignonらのメタアナリシスにおいても71歳以上になるとハザード比は約0.95となり5年生存率への上乗せは-0.7%と,高齢者になるほど化学療法併用効果は少なく,71歳以上では化学療法併用効果がないとの結果となっている。これまでの臨床試験においては高齢者での薬物療法効果は明らかではない。東京医療センターで2003年2月から2011年8月までに放射線療法を中心とした治療を行った75歳以上50例について検討した。50例中21例が死亡しているが,他癌死が4例,肺炎などによる他因死が5例を占めた。高齢者ではさまざまな合併症が存在することと重複癌も多く発生することが問題となる。高齢者に対する化学療法,放射線治療は高齢者の特殊性をふまえ治療効果と患者のQOLを十分考慮して治療計画を立て,治療後のケアも十分気をつけて行う必要がある。
  • 市川 靖子, 太田 修二, 江口 研二
    2012 年63 巻5 号 p. 374-382
    発行日: 2012/10/10
    公開日: 2012/10/25
    ジャーナル 認証あり
    高齢化社会が進んでいく中,日本の肺癌患者の半数以上が75歳以上である。しかし,高齢者には加齢に伴う臓器機能の低下や合併症のある患者が多く,個々の病態に差があり,効果や毒性が予測しにくい。従来の標準的治療を確立するための大規模臨床試験は選択条件に20歳から74歳までの年齢規定を設けていたため,日常診療で高齢者にすぐ応用できるものではなかった。高齢者,75歳以上を対象とする臨床試験は,近年少しずつ集積されてきた。患者数が増加する中で,臓器機能上に個人差の多い高齢者肺癌については効率よく,また効果的に機能評価を行いつつ,適切な治療選択をすることが重要である。
  • 加藤 健
    2012 年63 巻5 号 p. 383-391
    発行日: 2012/10/10
    公開日: 2012/10/25
    ジャーナル 認証あり
    食道癌は比較的高齢者に多く,約半数が70歳以上である。食道癌に対する化学放射線療法では,5-FU/シスプラチン併用化学放射線療法を行うことが標準的であるが,臨床病期II/III食道癌に対して5-FU/シスプラチンを用いた症例での2つのレトロスペクティブな検討では,高齢者は若年者と比べて治療コンプライアンスが悪く,毒性は強く出る傾向にあった。完全奏効割合50~60%,2年生存割合40~50%と治療成績は若干劣る傾向にある。これは高齢者が合併症割合が高く,潜在的な臓器機能低下があることを反映している。よって高齢者に対しては,毒性とコンプライアンスを改善した治療の開発が望まれている。ドセタキセル+放射線60Gy併用療法の第II相試験では,1年無増悪生存割合と1年生存割合はそれぞれ66.7%,85.7%であり,比較的良好であったが,Grade 3食道炎を31%に認めた。観察期間が短いため,有効性については今後の検討が必要である。また,パクリタキセルやオキサリプラチンなどを採用したレジメンも,高齢者食道癌の治療として可能性を秘めている。今後は前向き試験を行い,エビデンスを積み重ねていくことが肝要である。
  • 林 隆一
    2012 年63 巻5 号 p. 392-397
    発行日: 2012/10/10
    公開日: 2012/10/25
    ジャーナル 認証あり
    気管食道科領域における高齢者に対する外科治療について喉頭癌,下咽頭癌に対する喉頭温存手術を中心に述べた。1992年から2006年までに喉頭癌・下咽頭癌において初回治療として原発巣切除を行った症例は喉頭癌392例,下咽頭癌367例であった。75歳以上の患者に対する喉頭温存手術の適応は,喉頭癌では75歳から80歳までの症例に対して35例中12例 (34%) に行われ,80歳以上の症例に対しても3例 (12%) に実施されていた。一方,下咽頭癌では80歳以上の症例に対する再建手術を伴う喉頭温存手術はなく,内視鏡切除が2例 (15%) に行われた以外喉頭摘出となっており,高齢者に対する適応は喉頭癌に比べ難しいことが示された。高齢者における身体状況は個人によりそれぞれ異なってくるため,年齢の面から一概に喉頭温存手術の適応を決定することは難しい。高齢者の就労も社会的なテーマとなっていることから,高齢者であるからといって機能保持に消極的にならないことが必要である。
  • 小川 史洋, 佐藤 之俊
    2012 年63 巻5 号 p. 398-405
    発行日: 2012/10/10
    公開日: 2012/10/25
    ジャーナル 認証あり
    非小細胞肺癌罹患率は加齢とともに直線的に増加していくことが知られている。本邦では,今後も高齢者人口の増加とともに高齢者の種々の疾患に対する外科的治療の機会がさらに増加することが予想され,安全かつ合理的な手術が今後の肺癌治療成績の向上においても重要な位置を占めると思われる。
    肺癌の外科治療に際し,高齢者においては併存疾患や心肺機能低下などにより,より注意深い周術期管理が必要となる。ただし,外科的治療の適応は,年齢によっては規定されず,performance status (PS) が2以下,かつ,臨床病期I期症例であることが望ましいと考えられる。また,術後の呼吸機能温存を考慮し,術式は楔状切除や区域切除などの縮小手術を考慮すべきである。
    次に肺癌の術式だが,近年胸腔鏡下手術も早期肺癌症例に対し広く施行されるようになり,より低侵襲かつ安全な手術手法が適用されている。
    このように,高齢者における非小細胞肺癌症例に対する外科的治療は,長期予後が十分に期待できるため,術前併存疾患,加齢による臓器機能低下,手術に伴う合併症や手術自体の障害によるquality of life (QOL) 低下等の問題点を十分に考慮した上で,各症例に適した治療方針を選択すべきと考えられる。
  • 太田 俊介, 河野 辰幸, 中島 康晃, 川田 研郎, 東海林 裕, 鈴木 友宜, 宮脇 豊, 星野 明弘, 岡田 卓也, Jirawat ...
    2012 年63 巻5 号 p. 406-411
    発行日: 2012/10/10
    公開日: 2012/10/25
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    最近の高齢化社会において,食道癌診療の現場で実際に問題となるのは75歳以上のいわゆる後期高齢者である。治療法の選択においては,各患者における主要臓器の予備能をできるだけ正確に推定し,治療法の侵襲程度との兼ね合いで実際の治療方針を決めることとなる。しかし,高齢者では加齢に伴う諸臓器の機能低下があるものの,自他覚症状に乏しい。高齢者においても癌の根治性は最も基本的な要素であるが,短期的にみたADLへの影響は,非高齢者に比し一層重要である。教室では,そのような観点から各治療法の適応を決めており,高齢者では相対的適応として内視鏡的切除術を適用する比率が高い。また,外科的ないし内視鏡的な切除を避ける場合,同時化学放射線療法のみではなく,放射線単独療法を選択することもある。結果として,外科治療が選択された例での治療成績は非高齢者と差がなく,そのような例では適切な治療選択であったと考えられる。高齢者の社会的背景は非高齢者に比し著しく多様であり,今後も,各高齢患者の身体的,精神的,社会的背景に応じ,必要最小限の治療侵襲で根治を目指す姿勢が必要である。
用語解説
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