日本気管食道科学会会報
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64 巻, 1 号
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総説
  • 伊藤 博之, 清水 顕, 塚原 清彰, 岡本 伊作, 近藤 貴仁, 勝部 泰彰, 岡田 拓朗, 鈴木 衞
    2013 年 64 巻 1 号 p. 1-7
    発行日: 2013/02/10
    公開日: 2013/02/25
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    daVinci手術支援ロボットによるロボット支援甲状腺手術や経口腔ロボット支援手術transoral robotic surgery (TORS) は頭頸部癌に対する低侵襲手術の一つとして考案されている。両者とも頭頸部領域の腫瘍性疾患に対し,入り口の狭い腋窩や口腔から3D内視鏡とロボットアームを挿入して遠隔コンソール内の手術用コントローラーを操作して手術を行う。いずれも大きな頸部切開が不要であり,従来の手術法と比べて術後合併症や後遺症を減らすことができる。われわれは臨床応用の準備を行うためにロードマップの作成,手術適応の作成を行った。 4段階の準備段階を想定し,それぞれのプロセスを検討した。第1段階はロボット手術の基礎的訓練,第2段階はcadaverによる解剖学的知識の再確認と従来の甲状腺手術や咽頭癌部分切除などの経験を積むことである。第3段階はロボット手術認定資格の取得とその後の術式に応じたシミュレーション手術を行うことである。そして第4段階は適応基準作成と臨床応用とした。それぞれのステップを確実に施行したとき初めて臨床応用の開始が安全確実にできると考えた。
原著
  • 野本 剛輝, 渡嘉敷 亮二, 平松 宏之, 本橋 玲, 櫻井 恵梨子, 豊村 文将, 鈴木 衞
    2013 年 64 巻 1 号 p. 8-13
    発行日: 2013/02/10
    公開日: 2013/02/25
    ジャーナル 認証あり
    内転型痙攣性発声障害の手術治療である甲状披裂筋摘出術 (bilateral thyroarytenoid myectomy : TAM) と甲状軟骨形成術II型 (type II thyroplasty : TPII) の効果を検討し,かつ2種の手術の効果を比較した。
    対象は2008年3月から2009年8月までに手術治療を行ったSD症例14例中TAM 7例,TPII 7例。術前後の音声を術前と6カ月後に「つまり」「とぎれ」「ふるえ」の3つの指標を用いた聴覚的印象とvoice handicap index (VHI) で評価した。術前の重症度は両術式間で比較したところ「つまり」「ふるえ」において有意差はなかったが,「とぎれ」「VHI」については有意差があり,TAMの方がより重症例に施行されていた。TAMではすべての項目が手術により有意に改善していたがTPIIでは「とぎれ」と「ふるえ」の改善に有意差はなかった。術後の各評価は両術式の間に有意差がなく,どちらの手術が有用であるとはいえなかった。
    両術式ともにSDに対する治療として有用な選択肢になると考えた。
  • 岩橋 利彦, 望月 隆一, 山本 圭介, 山下 麻紀, 牟田 弘
    2013 年 64 巻 1 号 p. 14-20
    発行日: 2013/02/10
    公開日: 2013/02/25
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    結核患者は1999年以降,減少傾向にある。その中で喉頭結核の患者は年間約50人で全体の0.2%程度にすぎず,患者数の減少に伴う医療従事者の意識の低下が懸念される。また喉頭結核は多様な病型により診断に苦慮する症例も多い。今回,われわれが経験した3症例と過去の喉頭結核に関する報告を比較照合し,病型の傾向や診療の注意点について検討したため報告する。
    症例は57歳,22歳,48歳の女性であった。症例1は肉芽腫の診断で前医より当科紹介となった。全身麻酔下生検,喀痰検査により喉頭結核と診断された。症例2,3は喉頭炎の診断で前医より当科紹介となった。胸部CT,喀痰検査により喉頭結核・肺結核と診断された。
    喉頭結核は医療の進歩や検査機器の普及により初期に発見される軽症患者が増加しており,逆に診断を難しくしている可能性がある。耳鼻咽喉科医は軽症患者の受診を想定し,経過の長い難治例は速やかに喉頭結核を疑う必要があると思われた。病型では新たに“腫脹型”という概念が必要と考えられ,病型の傾向を把握して遅れがちな検査を再確認することが早期診断の一助になると考えられた。
  • 平位 知久, 福島 典之, 宮原 伸之
    2013 年 64 巻 1 号 p. 21-26
    発行日: 2013/02/10
    公開日: 2013/02/25
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    酒石酸吸入による咳反射テスト (以下,酒石酸咳反射テストと略) により不顕性誤嚥を予測できるかどうかについて検討した。嚥下障害患者149例に対して,嚥下造影検査の直前に同テストを施行した。同テストの結果と,誤嚥がみられた症例における“むせ”の有無,程度との関連について調べた。酒石酸咳反射が正常であった症例は71例 (48%),中等度低下していた症例は47例 (32%),高度低下していた症例は31例 (21%) であった。誤嚥がみられた症例は62例 (42%) あり,酒石酸咳反射テストの結果と誤嚥時の“むせ”の有無,程度との間では強い相関がみられた。また,全149例中,検査後3カ月間で嚥下性肺炎を発症した症例は15例 (10%) であった。酒石酸咳反射が低下しているほど嚥下性肺炎を発症するリスクは高く,重症化するケースもみられた。酒石酸咳反射の程度は,嚥下造影検査において,誤嚥時の“むせ”の有無,程度と相関がみられた。以上より,酒石酸咳反射の程度を評価することが,不顕性誤嚥の予測に有用であると考えた。
症例
  • 小島 敬史, 中村 智絵, 野口 勝, 西山 耕一郎, 小形 章
    2013 年 64 巻 1 号 p. 27-35
    発行日: 2013/02/10
    公開日: 2013/02/25
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    今回,われわれは喉頭に発生した血管平滑筋腫を経験したので報告する。症例は65歳男性で,主訴は嚥下時痛,くぐもり声であった。初診時喉頭ファイバーにて,左披裂喉頭蓋ヒダに粘膜下腫瘤を認めた。喉頭蓋を左側から圧排し,声門は確認できなかった。気道閉塞の可能性を考え,緊急入院の上気管切開術を施行した。CT,MRIでは径24 mm,内部はほぼ均一,境界明瞭であり,非常に強い造影効果を持つ腫瘤を認めた。喉頭微細手術による生検を施行,診断は血管平滑筋腫であった。根治的治療として舌骨上咽頭切開変法による摘出術を施行した。今回施行した舌骨上咽頭切開変法による摘出術は,術中操作が容易であり,術後合併症発生のリスクが低くなる点で従来の咽頭切開に比べ本変法は有用であると考えられた。
    血管平滑筋腫は30~50代女性の下肢に好発する。喉頭に発生するのは非常に稀であり,本症例で28例目の報告となる。本検討では25 : 3と男性に多く,年齢分布は39~78歳で平均年齢は59歳であった。主訴は嗄声が最も多く15例,本疾患に特徴的とされる疼痛を認めたのは5例であった。従来の血管平滑筋腫と咽喉頭発生例とは組織発生学的に異なるものである可能性が示唆された。
  • 杉山 智宣, 荒木 真美佳, 福喜多 晃平, 山田 弘之
    2013 年 64 巻 1 号 p. 36-40
    発行日: 2013/02/10
    公開日: 2013/02/25
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    下咽頭良性腫瘍は,症状を呈しにくいこともあり,比較的稀な疾患の1つである。今回下咽頭に発生した海綿状血管腫の症例を経験した。
    症例は79歳,女性,主訴は繰り返す咳嗽であった。下咽頭に声門を覆うような腫瘤を認めた。局所麻酔にて気管切開後,全身麻酔に移行し,喉頭直達鏡を用い,経口法にて摘出を試みたが,腫瘍が大きいこともあり困難であった。そのため,側咽頭切開による摘出に切り替え,大きな出血なく一塊に摘出可能であった。気管挿管の際の腫瘍からの出血の可能性,挿管困難の可能性,術後の喉頭浮腫の可能性を考えると,安全面から気管切開は腫瘍のサイズの大きな症例では必要であると考えられた。
    下咽頭腫瘍の摘出法として,経口法はワーキングスペースが限られているため,血管腫症例は出血による視野不良となる可能性もあり,安全さ,確実さを考慮すると,外切開による摘出も積極的に行うべきと考えられた。
  • 増田 佳子
    2013 年 64 巻 1 号 p. 41-46
    発行日: 2013/02/10
    公開日: 2013/02/25
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    右上葉切除後に中葉気管支の屈曲および扁平化による無気肺を生じ,保存的に改善した4症例と,改善しなかった1症例を経験した。屈曲に対する根本的な治療および予防は困難であり,発生した場合の標準的な対処法も確立されていないため,しばしば治療に難渋する。非侵襲的陽圧換気療法 (NPPV) および気管支鏡下の送気を行ったが,効果は一時的であった。回復に要する時間も症例によってかなりばらつきがあったが,改善がみられた症例では4カ月以内に中葉の含気が回復した。これは,気管支粘膜の浮腫が改善する時期と一致しており,ステロイドの投与が回復までの時間短縮に有効である可能性が示唆された。 回復した症例としなかった症例で喫煙歴,肺機能などに大きな差はみられなかったが,回復しなかった症例では術前放射線化学療法が施行されていた。
用語解説
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