日本気管食道科学会会報
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64 巻, 3 号
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原著
  • 長谷川 恵子, 櫟原 新平, 西川 周治, 東野 正明, 李 昊哲, 河田 了
    2013 年 64 巻 3 号 p. 175-181
    発行日: 2013/06/10
    公開日: 2013/06/25
    ジャーナル 認証あり
    急性喉頭蓋炎は時に気道閉塞を伴う疾患であり,気道確保の適応とタイミングを誤ってはならない。平成13年~平成23年の過去約10年間において,大阪医科大学耳鼻咽喉科にて入院加療を要した急性喉頭蓋炎症例91例について検討した。91例のうち,気道確保を要した症例は9例あり,全体の約10%であった。保存的加療例と気道確保例を比較したとき,初診時症状は摂食障害,呼吸困難感が気道確保例で多く認められた。しかし白血球数やCRP値両者で有意差を認めなかった。気道確保例9例のうち7例が,最初の受診科が耳鼻咽喉科以外であった。症状が出現してから当科を初診するまでの期間は,気道確保例で1.6日だったのに対して,保存的加療例では2.4日であった。喉頭所見を香取らの分類に従い区別すると,気道確保例が全例IIIBであった。すなわち喉頭蓋の腫脹が高度で声帯の半分以下しか確認できずかつ披裂部の腫脹を伴う症例であった。気道確保の方法は9例中8例に気管切開が行われ,6例は局所麻酔下に施行された。気管切開が施行された8例のうち7例は手術室で行われたが,残る1例は救急室で輪状甲状間膜切開が施行された。気道確保の適応を決定するのに喉頭所見が最も重要であるが,症状や経過もその参考になると考えられた。
  • 喜友名 朝則, 真栄田 裕行, 喜瀬 乗基, 比嘉 麻乃, 金城 秀俊, 上原 貴行, 安慶名 信也, 鈴木 幹男
    2013 年 64 巻 3 号 p. 182-188
    発行日: 2013/06/10
    公開日: 2013/06/25
    ジャーナル 認証あり
    喉頭肉芽腫は声帯突起部や軟骨部に好発する非特異的炎症による隆起性病変である。原因としては気管内挿管,咳嗽や酸逆流症,音声の酷使などが考えられているが,原因不明のことも少なくない。またさまざまな治療が試みられてきたが,難治例もしばしば経験する。今回,当科にて非特異的喉頭肉芽腫と診断した30症例について臨床的検討を行ったので報告する。
    従来,喉頭肉芽腫に対してさまざまな治療法が試みられてきたが,当科でも症例に応じて治療法を選択していた。全体的な治癒率は69.6%と過去の報告と同様であった。難治性の喉頭肉芽腫症例において音声治療が有効な症例を経験し,喉頭肉芽腫に対する音声治療が保存的治療として重要であることを再認識した。今回の検討から喉頭肉芽腫の治療に関してはPPIによる咽喉頭酸逆流を抑えることに加え,機械的刺激を抑えることが重要と考えられた。すなわち声の酷使や過緊張性発声があると考えられる症例では声の衛生指導を含む音声治療の併用が有用であると考えられた。
  • 谷山 岳司, 杉山 智宣, 荒木 真美佳, 福喜多 晃平, 山田 弘之, 細井 裕司
    2013 年 64 巻 3 号 p. 189-193
    発行日: 2013/06/10
    公開日: 2013/06/25
    ジャーナル 認証あり
    当科で施行した緊急気管切開術58例について検討した。原疾患は,炎症による上気道閉塞が22例 (38%),腫瘍性病変が16例 (28%),両側反回神経麻痺が13例 (22%) となっていた。処置は53例において手術室で施行していたが,5例については手術室に搬送する余裕がなく,病棟および救急外来で行っていた。処置に要した時間は平均18.6分であり,中央値は17分であった。気管切開に伴う合併症は3例 (5.2%) で認め,内容は皮下気腫が2例,挿管チューブの誤挿入が原因と考えられる縦隔気腫および気胸が1例であった。緊急気管切開は待機的気管切開に比べ,難易度も高くなりそれに携わる頭頸部外科医は局所の解剖および手術操作に精通している必要があると思われた。
  • 室野 重之, 吉崎 智一
    2013 年 64 巻 3 号 p. 194-198
    発行日: 2013/06/10
    公開日: 2013/06/25
    ジャーナル 認証あり
    反回神経に浸潤する甲状腺癌により片側声帯麻痺をきたし,嗄声のため生活の質 (QOL) の低下を認めることは少なくない。これらに対し甲状軟骨形成術I型や披裂軟骨内転術による音声の改善が図られる。甲状腺癌に起因する片側声帯麻痺14例において,音声改善手術後の音声を,最長発声持続時間および患者の満足度の点から2種類の質問票を用いて評価した。最長発声持続時間は,術前平均3.3秒から術後平均10.6秒へと改善した (p<0.01) 。Voice-Related QOL質問票スコア (最悪0~最良100) では,術前平均30.6から術後平均68.4へ有意な改善を認めた (p<0.01) 。またVoice Handicap Index-10スコア (最良0~最悪40) では,術前平均23.4から術後平均13.2へ有意な改善を認めた (p<0.01) 。これらの音声改善手術は甲状腺癌においても患者のQOLを高めることが示唆され,積極的に考慮すべきであると考えられた。
  • 前田 明輝, 千年 俊一, 梅野 博仁, 進 武一郎, 小野 剛治, 中島 格
    2013 年 64 巻 3 号 p. 199-205
    発行日: 2013/06/10
    公開日: 2013/06/25
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    頭頸部腫瘍における頸動脈再建症例を臨床的に検討した。
    対象は2000年~2012年までに頸動脈再建を行った頭頸部腫瘍 5症例 (下咽頭癌3例,甲状腺乳頭癌・悪性神経鞘腫各1例) 。年齢は38~75歳,性別は男性4例,女性1例であった。検討項目は治療成績 (5年生存率,術後合併症,転帰) とした。
    全症例の5年生存率は50%で,術後合併症として,誤嚥,反回神経麻痺を4例,Horner徴候を3例に認め,脳梗塞を1例に認めた。転帰は生存4例,リンパ節死1例であった。頸動脈合併切除を必要とする症例は本来予後不良ではあるが,局所制御が望める症例であれば,積極的に取り組んでいきたいと考えている。
症例
  • 後藤 多嘉緒, 高野 真吾, 田山 二朗
    2013 年 64 巻 3 号 p. 206-211
    発行日: 2013/06/10
    公開日: 2013/06/25
    ジャーナル 認証あり
    気管挿管後に,両側声帯運動障害と両側声帯突起部の肉芽を生じ,その後声帯突起間が癒着した症例を報告する。
    症例は39歳女性。アナフィラキシーショックのため前医で気管挿管された。第8病日抜管が試みられたが,両側声帯突起部の挿管性肉芽と両側声帯外転障害のため再挿管され,第15病日気管切開された。スピーチカニューレを装用したまま退院となり,前医耳鼻科再診時,両側声帯突起間の橋状癒着を指摘され,当科を紹介受診した。声帯外転時に声帯突起部の癒着が牽引されるのを確認し,癒着切除のみで再癒着はしないと予想し,喉頭微細手術下に声帯突起部癒着を切除した。声門狭窄は改善し,気管孔閉鎖が可能となった。
    本症例の声帯運動障害の原因は,運動が自然回復していることから,反回神経麻痺や輪状披裂関節部の炎症の可能性が考えられる。肉芽が存在した上に,声帯運動障害による声門狭窄が生じていたため,肉芽の存在部位で癒着したと推定した。
  • 渡邊 健一, 奥村 有理, 朴澤 孝治
    2013 年 64 巻 3 号 p. 212-218
    発行日: 2013/06/10
    公開日: 2013/06/25
    ジャーナル 認証あり
    成人の頭頸部領域に発生する脈管原性異常は,大部分は静脈奇形である。当科では,KTPレーザー手術を下咽頭・喉頭静脈奇形治療の第一選択としており,その有用性について検討した。2007年1月から2012年1月までの5年間に,当院にて全身麻酔下に直達喉頭鏡下KTPレーザー手術を行った成人8例を対象とした。性別は男性7例,女性1例,平均年齢63.8歳,発生部位は喉頭 4例,下咽頭4例,画像上病変部長径は平均16.3 mmであった。3例は主に腫瘤切除を行い,5例は光凝固を行った。光凝固を行った1例に再発があり,2年後に再手術で腫瘤切除を行った。咽喉頭部静脈奇形に対するKTPレーザーの使用法は,その切開能・止血能を利用して病変部を切除する方法と,ヘモグロビンに吸収される性質を利用して光凝固を行う方法とに大別される。切除術は病変部の径が小さく,かつ硬性喉頭鏡を通じた手術操作がしやすい症例に行われる傾向があった。術後は,出血や創部周囲の粘膜浮腫によって発症する気道閉塞リスクに十分留意する必要があるが,KTPレーザー手術は周囲組織への影響が軽度であった。また再発は1例のみであり,短~中期間の治療経過は良好であった。
  • 水田 啓介, 内藤 裕介, 出原 啓一, 西堀 丈純, 久世 文也, 青木 光広, 伊藤 八次
    2013 年 64 巻 3 号 p. 219-223
    発行日: 2013/06/10
    公開日: 2013/06/25
    ジャーナル 認証あり
    気管切開後に気管狭窄に伴う気管食道瘻を生じた例を経験した。症例は15歳男性で,交通事故後の意識障害に対して気管切開が実施された。その後抜管されたが,肺炎を反復するため,誤嚥を疑われ嚥下訓練が実施されていた。CTで気管狭窄が指摘されたが,食道造影検査では誤嚥や気管食道瘻は認めなかった。気管狭窄に対して当科で気管狭窄除去とTチューブ留置術を実施したが,術中に気管狭窄部に気管食道瘻孔を認めた。頸部局所皮弁で瘻孔部の気管と食道間に移動し閉鎖させた。術後瘻孔の再縫合を行ったが,その後肺炎はきたしていない。術後1年後にTチューブは抜去し,気管狭窄は消失した。気管切開後の気管食道瘻は比較的まれである。病歴で誤嚥が疑われる場合には検査で確定できない場合でも気管食道瘻を念頭において手術に臨むべきである。
  • 手島 直則, 岩江 信法, 平山 裕次, 四宮 弘隆, 古川 竜也
    2013 年 64 巻 3 号 p. 224-230
    発行日: 2013/06/10
    公開日: 2013/06/25
    ジャーナル 認証あり
    膝蓋骨を原発として診断に難渋したBrown腫瘍の1例を経験した。症例は43歳女性。右膝蓋骨腫瘍で当院整形外科を受診し,骨腫瘍の精査加療目的で手術を施行されたが,腫瘍の病理所見は骨巨細胞腫の疑いであった。血液検査所見で血清Ca値,血清iPTH値の上昇を認め,頸部超音波検査で頸部腫瘤を指摘され,原発性副甲状腺機能亢進症の疑いで当科紹介受診となった。当科で更なる精査の結果,甲状腺乳頭癌と副甲状腺腫瘍の合併が判明した。整形外科入院中で本人の強い継続加療希望のため当科で甲状腺全摘出術,副甲状腺全摘出術を施行した。病理診断は甲状腺乳頭癌,副甲状腺腺腫であり,結果として原発性副甲状腺機能亢進症に伴う膝蓋骨Brown腫瘍の診断に至った。Brown腫瘍は原発性副甲状腺機能亢進症に伴う骨病変で非常に稀な疾患であり,臨床検査所見や病理所見を合わせた総合的な診断が必要となる。また,骨悪性腫瘍との鑑別を要するため,高Ca血症と骨腫瘍を合併した症例においては本疾患も念頭に置くことが重要であると考えられた。
用語解説
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