日本気管食道科学会会報
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64 巻, 6 号
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原著
  • 福原 隆宏, 藤井 太平, 藤原 和典, 山崎 愛語, 片岡 英幸, 北野 博也
    2013 年64 巻6 号 p. 375-382
    発行日: 2013/12/10
    公開日: 2013/12/25
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    耳鼻咽喉科領域の内視鏡は今まで,消化器領域のものより解像度や画質で劣っていた。しかし,新たに開発された高解像度鼻咽喉スコープ“VNL-1590STi”は,消化器内視鏡と同程度の撮影センサーを搭載するため高画質が得られるようになった。さらに,デジタル信号処理によって強調画像を生成するi-scanと併用すれば,初期の粘膜病変検出精度の向上が期待される。
    2012年4月から10月の間に当科を受診した中咽頭癌と下咽頭癌の症例のうち,経口法手術の適応であった5症例全例に対し,i-scan併用高解像度鼻咽喉スコープによる切除範囲の決定を行った。そして,術後切除標本と比較検討することで,その精度を明らかにした。
    i-scan併用高解像度鼻咽喉スコープで検出された異常粘膜病変には,病理学的に上皮内癌が確認された。結果,全例で上皮内癌を含めた切除範囲を決定することができており,低侵襲手術における切除範囲の決定に,i-scan併用高解像度鼻咽喉スコープは有用である可能性が示唆された。また,色調を自由に変調できるi-scan TEのうちTErとTEgを利用すれば,頭頸部領域における粘膜病変のスクリーニングに有用であると考えられた。
症例
  • 森 蘭, 渡部 啓孝, 村上 信五
    2013 年64 巻6 号 p. 383-387
    発行日: 2013/12/10
    公開日: 2013/12/25
    ジャーナル 認証あり
    71歳男性の両側性反回神経麻痺に対し気管切開術を施行し皮下気腫,縦隔気腫と両側性気胸を呈した1例を経験した。この発症機序として,両側性反回神経麻痺による呼吸困難により強烈な努力様呼吸が起こり引き起こされた高度の胸腔内陰圧と,気道閉塞時の咳嗽や強制換気により引き起こされた気道内圧上昇の二つの機序に伴い縦隔さらには胸腔に空気が流入し発症したと考えられた。
  • 山口 智, 三枝 英人, 小町 太郎, 門園 修, 伊藤 裕之
    2013 年64 巻6 号 p. 388-397
    発行日: 2013/12/10
    公開日: 2013/12/25
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    一側反回神経麻痺に輪状披裂関節固着を合併し,高度の発声障害をきたした3症例を経験した。3症例の音声は,失声の状態であった。すべて弓部大動脈瘤の術後に発生した反回神経麻痺であった (症例1,3は術中に反回神経を切断,症例2は,後輪状披裂筋の病理検査にて神経原性変化を認め,反回神経麻痺と確定診断された) 。全例で,大動脈瘤に対する術中に,経食道心臓超音波内視鏡にて,循環血行動態のモニタリングを行ったというエピソードがあった。喉頭内視鏡検査にて,左声帯が開大位に固定され,右声帯に比べて高位に存在し,披裂軟骨の声帯突起の輪郭は不明瞭であり,発声時の高度な声門閉鎖不全を認めた。喉頭ヘリカルCT検査では,左披裂軟骨が輪状軟骨の後方へ乗り上げ固着している所見であった。音声改善のため手術を行ったが,輪状披裂関節を直視した所,輪状披裂関節は固着し,不動であった。さらに,後輪状披裂筋を後方に剥離すると,披裂軟骨は輪状軟骨の後端を超えて後方に乗り上げ,輪状披裂関節は固着していることが確認された。その後,輪状披裂関節の固着を解除した上で,披裂軟骨の筋突起を内転させた所,音声の改善を得ることができた。
  • 杉山 智宣, 荒木 真美佳, 福喜多 晃平, 山田 弘之
    2013 年64 巻6 号 p. 398-404
    発行日: 2013/12/10
    公開日: 2013/12/25
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    腺様嚢胞癌は大唾液腺に好発するが,喉頭に発生することは稀である。今回,喉頭に発生した腺様嚢胞癌の1例を経験した。
     症例は54歳,男性,主訴は嗄声と労作時の呼吸困難であった。右披裂に基部を有する腫瘤を認め,声門を覆うように存在していた。全身麻酔下に腫瘍より生検,永久病理診断は腺様嚢胞癌 (充実型) であった。PET-CTにて,喉頭に集積を認めるとともに,左頸部リンパ節転移,多発性肺転移を認めた (T1N2cM1) 。多発性の遠隔転移が制御困難であり,右披裂部の腫瘤増大が近々の気道閉塞も危惧されるため,喉頭温存を前提とした喉頭への陽子線治療を施行した。陽子線治療を施行後,喉頭腫瘍は消失した。治療から1カ月後,口臭と呼吸困難が出現し,両側声帯不全麻痺を認めた。抗生剤,ステロイドの投与も声門狭窄が改善しないため,治療後3カ月後に気管切開術を施行した。PET-CTでは披裂を中心とした集積を認め,腫瘍残存,もしくは放射線性喉頭壊死が考えられた。
    喉頭に発生した腺様嚢胞癌に対して,陽子線治療を選択し,有効性が確認された。しかし,治療後に喉頭壊死が発生した。治療に伴う障害を予期し,患者にも治療前に情報を提供する必要性があった。
  • 松本 祐磨, 横井 秀格, 松田 雄大, 中川 秀樹, 甲能 直幸
    2013 年64 巻6 号 p. 405-410
    発行日: 2013/12/10
    公開日: 2013/12/25
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    今回われわれは声門下狭窄と喉頭肉芽腫症に対して逆流性食道炎 (以下GERD) に対する3剤併用療法が奏効した症例を経験したので若干の文献的考察を加え報告する。症例は62歳女性で,咳嗽と嗄声を主訴に当院を受診した。既往の潰瘍性大腸炎に対して2カ月間に3回の手術歴があり,逆流性食道炎に対してproton pump inhibitor (以下PPI) を内服していた。軟性ファイバーや頸部単純CTにて喉頭肉芽腫様病変と声門下狭窄を認めた。病理学的検索にて炎症所見であり,PPIに追加して,クエン酸モサプリド (ガスモチン®),さらに六君子湯を用いたGERDに対する3剤併用治療により症状や喉頭所見の改善を認めた。GERDと短期間で頻回の気管内挿管が声門下狭窄と喉頭肉芽腫症の原因として示唆された。このため3剤併用のGERD治療が効果的と考えられた。
  • 戎本 浩史, 西山 耕一郎, 大上 研二, 杉本 良介, 酒井 昭博, 飯田 政弘
    2013 年64 巻6 号 p. 411-418
    発行日: 2013/12/10
    公開日: 2013/12/25
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    当科では頭頸部癌治療後や各種の脳血管神経疾患に起因する嚥下障害に対して嚥下機能改善手術を行っている。経口摂取は多くの例で改善がみられているが,手術合併症も経験している。今回,当科での嚥下機能改善手術の合併症に関する検討を行い,その改善点について考察した。
    対象と検討項目:2009年から2012年までに当科で嚥下機能改善手術を行った7例について年齢,性別,基礎疾患,手術内容,術後合併症,術前後食形態をretrospectiveに検討した。
    結果:年齢は64歳から82歳,男性6例,女性1例だった。基礎疾患は頭頸部癌・食道癌治療後例が3例,脳血管・中枢神経疾患例が4例だった。輪状咽頭筋切除術は全7例10側に行われ,6例には喉頭挙上術が併施された。
    喉頭挙上術を行った6例中3例が術後3カ月以降に縫合糸感染をきたし,抜糸を必要とした。両側輪状咽頭筋切除術を行った3例中1例で食道穿孔をきたし,縦隔炎を併発したため全身麻酔下に穿孔閉鎖術を要した。また,2例で胃食道逆流に伴う誤嚥性肺炎をきたし,うち1例が死亡した。
    結論:嚥下障害の手術例は全身状態が不良な例が多く,合併症の回避は重要な課題である。術前後栄養管理と術後胃食道逆流の制御が必須で,喉頭挙上術に関しては縫合糸感染予防の工夫が必要と考えられた。
  • 佐藤 拓也, 中村 努, 太田 正穂, 成宮 孝祐, 白井 雄史, 山本 雅一
    2013 年64 巻6 号 p. 419-424
    発行日: 2013/12/10
    公開日: 2013/12/25
    ジャーナル 認証あり
    症例は77歳女性。既往歴:昭和57年カセイソーダ誤飲による腐食性食道炎に対して食道抜去術,食道外瘻,空腸瘻造設術,昭和60年当科で胸壁前経路にて左側有茎結腸による咽頭空腸間バイパス手術を施行されている。現病歴:平成22年4月食物つかえ感が出現し近医受診。上部消化管内視鏡検査で再建結腸癌を認め当科紹介。上部消化管内視鏡で上切歯より12 cmに40 mm大隆起性病変を認め,超音波検査で腫瘍は筋層に接しているとの所見であった。胸腹部造影CTでリンパ節転移・遠隔転移は認められなかった。再建結腸癌の診断で,全身麻酔下に腫瘍局所切除術を施行した。病理所見ではwell differentiated adenocarcinoma (tub1) pMP (INFb) ly1 v0 pPM0 pDM0 pRM0であった。術後経過は良好であった。
  • 堀之内 宏久, 渡辺 真純, 河野 光智, 大塚 崇
    2013 年64 巻6 号 p. 425-429
    発行日: 2013/12/10
    公開日: 2013/12/25
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    気管乳頭腫は気管に発生する良性腫瘍の中で最も頻度が高く,全気管腫瘍の6%程度とされている。気管乳頭腫は多発傾向を呈し,HPV感染症との関連が証明される症例もあり,症例ごとに治療方針を決定する必要がある。
    1995年~2010年までに経験した気管乳頭腫3例について診断,治療法と治療後の経過について検討した。
    症例は男性1名 (67歳,単発),女性2名 (49歳,54歳,多発) であった。単発男性例は肺炎後の精査で発見され,扁平上皮癌を疑われたため,気管管状切除端々吻合を行った。断端陰性で5年間再発を認めていない。女性の2例はいずれも気管・気管支の多発症例で気管支鏡下の高周波切除およびレーザー焼灼を複数回行った。このうち1例では乳児期より上気道の乳頭腫症を認めていた。HPV感染は1例で検査を行うことができ,陽性所見を得た。病理学的には全例squamous papillomaで明らかな異型を認めなかった。
    考察:気管乳頭腫は気管支鏡下のインターベンションにより制御が可能と考えられる。気管乳頭腫とHPVとの関係は症例の蓄積が必要で,再発を繰り返す症例には抗ウィルス剤の投与などの新しい治療法の開発が望まれる。
短報
  • 谷合 信一, 山下 拓, 冨藤 雅之, 荒木 幸仁, 塩谷 彰浩
    2013 年64 巻6 号 p. 430-436
    発行日: 2013/12/10
    公開日: 2013/12/25
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    嚥下障害の臨床において,生活の質 (QOL) を評価することは重要である。Dysphagia Handicap Index (DHI) は,Silbergleitらが2012年に報告した嚥下障害に関する質問紙である。今回われわれは,DHI日本語版を他言語で作成された質問紙を翻訳する標準的手順に準じて作成した。翻訳は,原著者の了解を得たうえで,順翻訳・逆翻訳・パイロットテストの順で行った。その結果,言語的妥当性を担保したDHI日本語版が完成した。国際的な比較が可能な質問紙が日本語で使用できることは非常に有益である。今後,妥当性・信頼性の検討を進め,本質問紙の有用性を明らかにしていく予定である。
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