日本気管食道科学会会報
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65 巻, 6 号
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総説
  • 西山 耕一郎
    2014 年65 巻6 号 p. 441-446
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/12/25
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    日本は超高齢社会に突入し嚥下障害例が増加しており,嚥下障害診療を避けて通れない。嚥下内視鏡にて嚥下機能評価するのには,兵頭らの方法が有用である。嚥下障害例を軽症・中等症・重症に分類し,それぞれの対応法を提示した。軽症例は嚥下指導が中心となる。中等症例は,気管支炎や肺炎の対応が必要になる。また食事形態の変更と,姿勢調整を嚥下造影検査 (VF) と嚥下内視鏡検査 (VE) にて確認する必要もある。嚥下指導と嚥下リハビリは言語聴覚士 (ST) に依頼すると良い。重症例は,専門施設に紹介することが原則であろう。嚥下障害は全身疾患の成れの果ての結果なので,医師が中心となり対応すべきである。その対応は,全身状態・精神・呼吸・栄養・運動・口腔・消化など多方面からの正しいアプローチが必要である。
原著
  • 中島 康晃, 川田 研郎, 東海林 裕, 宮脇 豊, 岡田 卓也, 了徳寺 大郎, 藤原 直人, 齋藤 賢将, 藤原 尚志, 小郷 泰一, ...
    2014 年65 巻6 号 p. 447-456
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/12/25
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    頸部食道癌治療において咽頭・喉頭機能の温存は重要な要素となる。当科では切除可能頸部食道癌症例に対し,病変口側が食道入口部直下に及ぶ場合でも喉頭温存を目指した手術を行い,良好な成績をえてきた。その手術手技は頸部食道口側端の確保,吻合のためのワーキング・スペースを確保するための工夫であり,気管を咽喉頭ごと腹側に牽引・挙上する気管挙上法,そして甲状軟骨を中心に咽喉頭を反時計回りに90度以上回転させる喉頭回転法を併用した手術である。今回,本術式にて手術を行った7例を対象に検討を行った。食道入口部から病変口側までの距離は平均0.6 cmで,2例は病変口側が食道入口部より口側に及んでいた。声帯麻痺は片側が6例,両側が1例に認められたが,一時的であった。軽度の誤嚥性肺炎,嚥下障害は認められたが,重篤な合併症は経験されていない。観察期間は中央値881日であるが,喉頭温存に起因する再発は認めていない。本術式では咽頭後壁への浸潤であれば食道入口部よりも口側へ伸展する病変でも喉頭温存が可能であり,治療選択肢を拡げ,頸部食道癌治療成績向上に貢献しうる。今後は嚥下機能にも配慮した術式,再建法の工夫が必要である。
  • 本橋 玲, 塚原 清彰, 佐藤 宏樹, 遠藤 稔, 中村 一博
    2014 年65 巻6 号 p. 457-463
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/12/25
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    当科では下咽頭癌頸部リンパ節転移症例に対し,根治目的に化学放射線療法 (CCRT) を行った場合,計画的頸部郭清術 (PND) は行っていない。治療終了時に効果判定し,リンパ節転移残存例には頸部郭清術 (ND) を施行している。それ以外は経過観察とし,リンパ節再発を認めた場合に救済頸部郭清術 (SND) を行う方針としている。当科の治療成績について検討した。対象は2008年5月から2012年5月までに当科で初治療を行った下咽頭癌104例中,頸部リンパ節転移を認め,根治目的にCCRTを行い,1年以上経過観察が可能であった14例。全例男性で平均年齢は65歳,平均観察期間は32カ月であった。亜部位は梨状窩10例,後壁4例で病期分類はstage IIIが2例,stage IVが12例であった。CCRTのリンパ節に対する効果はCR 7例,PR 7例であった。SNDは3例4側に行った。NDの合併症はみられなかった。6例が非担癌生存,8例が死亡で,うち1例は他癌死であった。再発転移部位は原発3例,頸部リンパ節3例,咽頭後リンパ節2例,縦隔リンパ節1例,多臓器転移3例 (重複含む) であった。頸部リンパ節制御率は79%であった。頸部リンパ節にのみ再発し,PNDを行うことにより根治の可能性があったのは14例中1例のみであった。以上より当科の方針が妥当である可能性が示唆された。
症例
  • 谷 亜希子, 多田 靖宏, 小野 美穂, 松見 文晶, 横山 秀二, 大森 孝一
    2014 年65 巻6 号 p. 464-467
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/12/25
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    輪状甲状靭帯穿刺・切開は耳鼻咽喉科のほか,救急科や外科でも行われる手技である。日本気管食道科学会の行ったアンケートでは術中合併症として出血,皮下気腫などが多く,穿刺部の誤りは調査中25%の医師が経験している。今回,輪状甲状靭帯穿刺部の誤りがあり,声帯麻痺を生じた症例を経験した。症例は82歳男性,大動脈弁置換術後である。喀痰排出困難があり担当医によりミニトラックの挿入が行われた。一般病棟に転棟後,嚥下評価目的に当科紹介となった。喉頭内視鏡では右声帯を貫くようにチューブが留置されており,頸部CT検査では甲状軟骨右板,右声帯を貫くことが確認された。気管切開術を行い,声門の経過観察を行ったが両声帯麻痺の状態がつづき気管孔管理が必要な状態で転院となった。これまでも輪状甲状靭帯穿刺・切開による声門下狭窄の報告は散見され,予防のためには正しい位置に挿入する,長期留置を避ける,などの考察が行われている。留置期間や合併症について報告する。
  • 岸根 有美, 川島 慶之, 水島 豪太, 竹田 貴策, 鎌田 知子, 伊藤 卓, 喜多村 健
    2014 年65 巻6 号 p. 468-473
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/12/25
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    インフルエンザによる死因として肺炎,脳炎,心筋炎などの合併に加え原因不明の心肺停止が報告されている。今回われわれはインフルエンザを契機に発症したと考えられる喉頭蓋膿瘍の3例を経験した。症例1 (45歳,男性) はインフルエンザB型の診断の後,自宅安静を指示されたが,その数時間後には呼吸困難感が出現し,まもなく窒息による心肺停止に至った。症例2 (62歳,男性) はインフルエンザA型の診断のもとノイラミニダーゼ阻害薬を処方されたが,数時間後には呼吸困難感が出現した。症例3 (53歳,女性) はインフルエンザA型の診断のもとラニナビルの処方をうけ,咽頭痛は一旦軽快したものの,4日後に呼吸困難感が出現した。いずれの症例も喉頭ファイバースコープ検査にて腫脹した喉頭蓋による高度の気道狭窄を認めた。インフルエンザに関連した原因不明の心肺停止の原因の一部に本症例のような気道狭窄性病変が含まれると考えられた。インフルエンザ症例の診察の際には気道狭窄に伴う症状,所見がないか確認すること,また,自宅安静を指示する際には,気道狭窄症状出現時には早急に医療機関を受診するよう指示することが肝要と考えられた。
  • 竹林 慎治, 林 泰之, 康本 明吉, 籔内 咲, 鈴木 千晶, 暁 久美子, 大野 覚, 池田 浩己, 三浦 誠
    2014 年65 巻6 号 p. 474-480
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/12/25
    ジャーナル 認証あり
    急性喉頭蓋炎は,日常臨床でしばしば遭遇する疾患であるが,まれに急速に進行し,窒息で死亡する危険性のある疾患である。窒息の危険性がある場合は,すみやかな気道確保が必要であるが,重症例になると,腫脹で声帯が直視不可能な場合や呼吸困難で仰臥位困難になる場合があり,気道確保が非常に困難になる。今回われわれは,急性喉頭蓋炎による気道狭窄が重症で,仰臥位困難となったが,頸部外切開により気道確保した3症例を報告する。重症例での気道確保はとても困難であり,予防的な気道確保が推奨される。緊急時には,気道確保を最優先し,気道確保後は後遺症をできるだけ残さないようにすみやかな対応が必要である。また,普段から緊急時の対応を想定した準備も必要である。
  • 平澤 一浩, 塚原 清彰, 中村 一博, 本橋 玲, 上田 百合, 遠藤 稔, 佐藤 宏樹, 鈴木 衞
    2014 年65 巻6 号 p. 481-484
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/12/25
    ジャーナル 認証あり
    下咽頭梨状陥凹瘻は第4䚡弓の発生の左右差により生じるが,多くは左側である。今回われわれは,比較的稀な右側の下咽頭梨状陥凹瘻を経験したので報告する。症例は8歳の男児で,主訴は右頸部痛および発熱。造影CTでは,甲状腺右葉とその周囲に低吸収域が認められた。急性甲状腺炎と診断され,抗菌薬による治療を行った。下咽頭食道造影を3度行い,右側の下咽頭梨状陥凹瘻が認められ,全身麻酔で手術を行った。直達鏡にて右下咽頭梨状陥凹に瘻孔が認められ,ピオクタニンを注入して瘻孔を染色した。頸部外切開によりアプローチし,甲状腺へ続く瘻孔が認められたため,瘻孔と甲状腺右葉の一部を切除した。
  • 中城 正夫
    2014 年65 巻6 号 p. 485-488
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/12/25
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    口腔内粘膜残渣の誤嚥による気道閉塞をきたした要介護者症例を経験したので報告する。患者は73歳の男性で,基礎疾患に脳梗塞後遺症があり,寝たきり状態にある。現病歴では,数日前からの発熱を主訴に入所中の施設から当院へ搬送され,尿路感染症の診断で入院となった。口腔ケア施行後約2時間で湿性咳嗽が出現し,SpO2が低下した。CTで右主気管支から中間幹内腔に充満する異物吸入が疑われ,直ちに気管支鏡で異物除去を行った。スネア鉗子で異物を裁断して吸引をかけながら摘出する操作を数回繰り返してすべて摘出した。処置中に酸素化は改善した。摘出異物の病理所見から,口腔内粘膜残渣の脱落・誤嚥による気道閉塞と診断した。気道異物は窒息の原因となり,放置すると肺炎や無気肺などの合併症を引き起こすことがあり,適切な診断と早急な対応が必要とされる。要介護高齢者の場合,自分から異物吸引のエピソードを告知できないため,医療従事者・介護担当者の客観的な判断が大切である。また,口腔ケアを行う場合,口腔内粘膜残渣の誤嚥を生じないような操作や体位の工夫が必要である。
用語解説
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