特発性食道破裂 (Boerhaave's syndrome) は,急激な食道内圧上昇により,食道全層の破裂・穿孔をきたすまれな疾患である。診断が遅れると予後不良であり,迅速な対応が必要とされる。今回われわれは下咽頭癌の化学放射線療法中の嘔吐を契機に食道破裂を発症した症例を経験したので報告する。
症例は61歳男性で,下咽頭癌T3N1M0の診断で化学放射線療法を施行中であった。嘔吐の直後から左胸背部痛が出現した。より緊急性の高い循環器疾患の除外診断から開始したが,早期に全身状態が悪化し,敗血症となった。食道への造影剤注入後のCTで胸腔内への漏出を認め,特発性食道破裂の診断となった。
発症から約19時間で手術を開始し,開腹アプローチで下部食道に穿孔部位を確認,縫合閉鎖・大網充填を施行したが,術後縫合不全を認め,救命できなかった。
近年制吐療法が進歩してきたが,依然CDDP投与時など嘔吐に悩む症例は多い。さらに支持療法としての胃瘻やオピオイド投与も嘔吐の原因になるため,頭頸部癌の治療ではより一層嘔吐への対応を重視し,また胸痛発作の鑑別診断で本疾患を早期に除外することが重要になると考えられる。
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