日本気管食道科学会会報
Online ISSN : 1880-6848
Print ISSN : 0029-0645
ISSN-L : 0029-0645
65 巻, 1 号
選択された号の論文の12件中1~12を表示しています
原著
  • 岩城 忍, 望月 隆一, 山下 麻紀, 岩橋 利彦, 川村 直子, 梅田 陽子
    2014 年65 巻1 号 p. 1-8
    発行日: 2014/02/10
    公開日: 2014/02/25
    ジャーナル 認証あり
    加齢による音声障害に対して発声機能拡張訓練 (vocal function exercise,以下VFE) 簡易法を施行したのでその結果につき報告する。対象はVFE簡易法を4~8週施行した60~83歳の男性8例,女性2例 (VFE群) 。また63~74歳の男性5例を対照群とし,VFE群との比較検討を行った。VFE群では,練習前には中等度以上の声門間隙が4例に見られたが,練習後は全例が小さな間隙もしくは間隙が消失した。また練習後には聴覚印象評価のG・B,MPT,PPQ,APQ,VHIが有意に改善,F0は有意に上昇,声域下限の下降・声域の拡大も有意であった。声域上限も上昇傾向であった。これらの結果から,加齢による音声障害に対してVFE簡易法は有用な発声練習であることが示唆された。さらにVFE簡易法後に音声が著明改善した8例 (改善群) と,改善の乏しかった2例 (非改善群) の差異を検討した結果,非改善群は改善群と比べて練習前のMPTが短縮,声域下限が上昇しており声域が狭く,肺活量が少なかった。したがってVFE簡易法は音声障害の軽度な例が良い適応であると思われた。
  • 前田 明輝, 梅野 博仁, 千年 俊一, 中島 格
    2014 年65 巻1 号 p. 9-15
    発行日: 2014/02/10
    公開日: 2014/02/25
    ジャーナル 認証あり
    1989年から2011年までに久留米大学病院耳鼻咽喉科・頭頸部外科で治療を行った下咽頭癌360例を対象とした。下咽頭癌・食道癌重複は88例 (24%) で,同時性は67例,異時性は21例であった。食道癌重複例の5年生存率は37%で,そのうち異時性食道重複癌の5年生存率は50%,同時性食道重複癌の5年生存率は30%であった。この中で食道癌重複進行下咽頭癌の5年生存率は24%であった。食道癌重複の頻度は24%で,同時性が多く,下咽頭進行癌に多く見られた。同時性でかつ食道進行重複癌は予後が不良であった。
  • 久保木 章仁, 今野 渉, 後藤 一貴, 中島 逸男, 金谷 洋明, 平林 秀樹, 春名 眞一
    2014 年65 巻1 号 p. 16-23
    発行日: 2014/02/10
    公開日: 2014/02/25
    ジャーナル 認証あり
    副甲状腺機能亢進症の唯一の治療は病的副甲状腺の摘出である。近年,検診などで偶発的に発見される原発性副甲状腺機能亢進症や,透析治療の合併症である二次性副甲状腺機能亢進症が増加傾向にある。
    今回われわれは当科で過去2年間に経験した副甲状腺機能亢進症手術症例29例に対して病的副甲状腺の局在につき頸部超音波検査やcomputed tomography (CT),technetium 99m 2-methoxyisobutyl-isonitrile scintigraphy (MIBIシンチ) など術前画像診断の正診率や,術後合併症として近年問題となっているhungry bone syndromeの予測因子等につき検討した。
    その結果,各術前画像診断の有用性が確認され特に頸部超音波検査とMIBIシンチを組み合わせることにより90%以上の高い局在診断率が得られた。また,hungry bone syndrome合併の予測因子として今回の術前評価項目 (血清アルカリフォスファターゼ,血清尿素窒素,年齢,術前後でのインタクトPHT減少率) の中では血清アルカリフォスファターゼの高値のみが予測因子となりうる可能性が示唆された。
  • 南 和彦, 佐藤 進一, 土師 知行
    2014 年65 巻1 号 p. 24-31
    発行日: 2014/02/10
    公開日: 2014/02/25
    ジャーナル 認証あり
    副甲状腺に発生する副甲状腺腫瘍は比較的まれであるが,原発性副甲状腺機能亢進症の原因となることは広く知られており,内分泌疾患の中では頻度が高い疾患である。近年,血液生化学検査や画像検査の普及に伴い,無症状の原発性副甲状腺機能亢進症例が偶然発見される機会が増え,このような症例に対する手術件数も増加傾向であるが,原発性副甲状腺機能亢進症に対する本邦でのまとまった報告は少ない。
    原発性副甲状腺機能亢進症に対して倉敷中央病院耳鼻咽喉科・頭頸部外科で2000年~2011年までの12年間に手術を施行した114症例について検討した。術前局在診断率は94.7%であった。術前の平均血清Ca値は11.8mg/dlで,82.5%が無症候性であった。組織型は腺腫91.2%,過形成1.8%,癌1.8%,嚢胞1.8%であった。108例 (94.7%) で術後の血清Ca値が正常化したが,このうち11例 (9.6%) でintact PTH値は正常化しなかった。
    術前に単一腺腫と診断することができれば病的副甲状腺のみを摘出するminimally invasive surgeryは97.0%の手術成功率であり,低侵襲で効率的な手術であると考えられた。しかし,術後にdouble adenomaの診断となった症例もあり,病的副甲状腺摘除の指標として術中intact PTH濃度測定が可能であればより治療成績を上げることができると考えられた。
症例
  • 泰地 秀信, 守本 倫子, 安岡 義人
    2014 年65 巻1 号 p. 32-37
    発行日: 2014/02/10
    公開日: 2014/02/25
    ジャーナル 認証あり
    小児の喉頭気管狭窄は主に声門下に狭窄部があり,また声門下狭窄の主な原因は呼吸管理のための長期間の気管内挿管である。今回われわれは15歳,男性で,両側声帯運動障害にgradeⅢの声門下狭窄を合併していた症例を報告する。甲状腺原発の奇形腫があり,出生直後に甲状腺全摘出が行われた。その後は気管挿管管理となり,生後1カ月で気管切開が行われた。その後15年間は気管切開管理が行われていた。喉頭ファイバースコープでは両側声帯運動障害がみられ,左披裂部が偏位し声門上に突出していた。全身麻酔下のファイバースコープでは披裂軟骨部の関節固着およびgradeⅢの声門下狭窄がみられた。そこで前後方のcricoid splitを行って喉頭を拡張・形成する手術を行った。喉頭截開にて正中で喉頭・気管前壁を開き,喉頭および輪状軟骨の後壁を正中で切離した。切離した声門後部および截開した喉頭・気管前面に肋軟骨片を移植し,声門および声門下腔を拡大した。ステントを抜去してから内視鏡で確認したが明らかな気道狭窄はなかった。術後3カ月目に気管カニューレ抜去を行い,術後7カ月目に気管孔を縫合閉鎖した。披裂軟骨部の関節固着のような声門後部の狭窄がある場合はposterior graftが必要である。
  • 岩江 信法, 原 聡, 長谷川 稔文, 米澤 宏一郎, 平山 裕次, 古川 竜也, 森田 成彦
    2014 年65 巻1 号 p. 38-43
    発行日: 2014/02/10
    公開日: 2014/02/25
    ジャーナル 認証あり
    57歳女性の輪状軟骨弓進展声門部扁平上皮癌T4aN0M0症例に対して,輪状軟骨弓を合併切除する拡大喉頭亜全摘出術 (extended supracricoid laryngectomy : ESCL) とtracheocricohyoidoepiglottopexy (TCHEP) を施行後に術後照射をおこなった。現在術後7年5カ月が経過しているが明らかな再発はなく,嚥下障害や呼吸困難も認められない。輪状軟骨弓を切除してもTCHEPでは舌骨が第1気管輪に接するようにpexyされるため,舌骨体部が輪状軟骨弓の代わりに喉頭内腔確保のための支持組織としての役割を果たし,呼吸困難や嚥下障害は生じなかった。声門下進展喉頭癌に対する喉頭機能温存手術として,ESCL-TCHEPは有効な手段の一つと思われる。
  • 古川 竜也, 岩江 信法, 平山 裕次, 米澤 宏一郎, 森田 成彦
    2014 年65 巻1 号 p. 44-49
    発行日: 2014/02/10
    公開日: 2014/02/25
    ジャーナル 認証あり
    特発性食道破裂 (Boerhaave's syndrome) は,急激な食道内圧上昇により,食道全層の破裂・穿孔をきたすまれな疾患である。診断が遅れると予後不良であり,迅速な対応が必要とされる。今回われわれは下咽頭癌の化学放射線療法中の嘔吐を契機に食道破裂を発症した症例を経験したので報告する。
    症例は61歳男性で,下咽頭癌T3N1M0の診断で化学放射線療法を施行中であった。嘔吐の直後から左胸背部痛が出現した。より緊急性の高い循環器疾患の除外診断から開始したが,早期に全身状態が悪化し,敗血症となった。食道への造影剤注入後のCTで胸腔内への漏出を認め,特発性食道破裂の診断となった。
    発症から約19時間で手術を開始し,開腹アプローチで下部食道に穿孔部位を確認,縫合閉鎖・大網充填を施行したが,術後縫合不全を認め,救命できなかった。
    近年制吐療法が進歩してきたが,依然CDDP投与時など嘔吐に悩む症例は多い。さらに支持療法としての胃瘻やオピオイド投与も嘔吐の原因になるため,頭頸部癌の治療ではより一層嘔吐への対応を重視し,また胸痛発作の鑑別診断で本疾患を早期に除外することが重要になると考えられる。
  • 堀 健志, 廣瀬 敬信, 原 浩貴, 山下 裕司
    2014 年65 巻1 号 p. 50-53
    発行日: 2014/02/10
    公開日: 2014/02/25
    ジャーナル 認証あり
    気管切開術は気道確保の手段としてわれわれ耳鼻咽喉科医のみならず,外科系医師の手によって日常的に行われているが,頸部大血管の走行異常症例に施行する場合さまざまな注意が必要である。今回われわれは,右総頸動脈蛇行症の高位気管切開術症例を経験した。
    症例:80歳女性。僧帽弁置換術翌日に脳出血を発症し,経口挿管状態となった。頸部CT検査にて右総頸動脈の蛇行が確認され,当科紹介となった。術後管理の安全性も考慮し,輪状軟骨を一部鉗除する形で気管孔を形成した。後方支援病院へ転院されたが,気管孔トラブルなどなく良好に経過している。
    まとめ:基本的術式である気管切開術であっても,施行前に十分な診察と検査を行い,患者の状態や背景に即した術式を選択すべきである。
  • 竹澤 公美子, 柴山 将之, 神前 英明, 大脇 成広, 清水 猛史
    2014 年65 巻1 号 p. 54-60
    発行日: 2014/02/10
    公開日: 2014/02/25
    ジャーナル 認証あり
    高度肥満と血友病A,HIV・HCV感染症を伴う患者に対する気管切開術を経験したので報告する。症例は42歳,男性。2歳時に血友病Aと診断され,出血症状を反復していた。また,20代でHIV陽性,30代でHCV陽性となった。頭痛・発熱を訴えて当院救急外来を受診し,右硬膜下血腫の診断で緊急入院したが,夜間に心肺停止状態となり気管内挿管された。挿管後9日目でも人工呼吸器から離脱できず,気管切開術目的に当科へ紹介された。身長172 cm,体重は推定120 kg以上,body mass index (BMI) は推定40.6以上で高度な肥満を認めた。術前のCTでは,皮膚から輪状軟骨直下までの厚みが約7 cmであった。術前に第VIII因子製剤の投与と血小板輸血を行ったうえで,全身麻酔下に気管切開術を施行した。鎖骨上約2横指で16 cmの襟状切開を行い,皮弁を上下に挙上したのち,皮下組織および前頸筋周囲から脂肪組織を切除して皮下の厚みを減量した。輪状軟骨直下で逆U字切開を行い,GBアジャストフィット®を挿入した。術後は徐々に呼吸状態は改善し,術後74日目にカニューレを抜去して気管切開孔を閉鎖することができた。閉鎖後も声門下狭窄や呼吸状態の悪化は認めなかった。
  • 平川 治男, 西 康行, 渡部 泰輔, 多田 誠, 藤原 裕美
    2014 年65 巻1 号 p. 61-67
    発行日: 2014/02/10
    公開日: 2014/02/25
    ジャーナル 認証あり
    頸部ガス壊疽を含む深頸部感染症に対して抗生剤と手術の併用は確立された治療法の一つである。しかし合併症のある患者では手術ができないことがある。今回われわれは手術の代わりに高気圧酸素療法 (HBO) を併用して治癒した頸部ガス壊疽症例を報告する。患者は80歳の男性で,前医で抗生剤の経口および点滴投与を受けたが2週間近くも喉の痛みと発熱が続くため当院を受診した。内視鏡検査では,左披裂喉頭蓋ひだ近傍に腐敗臭と膿性分泌物を伴う潰瘍病変と咽頭後壁腫脹,左声帯固定を認めた。前頸部には硬結腫脹を認めた。腫脹周辺には握雪感を認めた。CTとMRIでは,ガス産生性膿瘍が頤から鎖骨の間に存在していた。患者には,不整脈,心不全,糖尿病,腎機能障害,アスピリンとワルファリン服用による出血傾向など多くの合併症があった。加えて咽頭の潰瘍形成と声帯固定から悪性腫瘍が潜んでいることが疑われた。手術では播種の可能性があった。合併症と悪性腫瘍が疑われることから外科的治療を行わなかった。最終的に患者は手術をしないで抗生剤とHBOの併用により治癒した。1年の経過観察で今のところ悪性腫瘍はみられていない。
用語解説
feedback
Top