日本気管食道科学会会報
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65 巻, 3 号
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原著
  • 谷山 岳司, 杉山 智宣, 荒木 真美佳, 福喜多 晃平, 山田 弘之, 細井 裕司
    2014 年 65 巻 3 号 p. 221-225
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/06/25
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    急性喉頭蓋炎は急激な気道狭窄により致命的となりうる疾患であり,迅速かつ的確な診断と治療が必要である。今回,われわれは当科にて2004年から2010年までに入院加療を行った急性喉頭蓋炎症例68例について検討した。男性42例,女性26例であり,平均年齢は56歳であった。発症季節は春(3~5月)が35%,夏(6~8月)が24%,秋(9~11月)が22%,冬(12~2月)が19%であった。68例中8例(11.8%)に糖尿病を合併していた。「Katoriらの分類」ではI,IIが全体の80%以上を占め,IIIは11.8%であった。気管切開は11例で施行されており,そのうち4例(36.4%)に糖尿病を合併しており,9例で喉頭蓋に膿瘍形成していた。気道確保の適応についてはいくつかの指標を用いて総合的に判断する必要があるが,造影CTを用いた膿瘍形成の確認は気道確保を行うかどうかの判断の一助になると思われた。
  • 大田 隆之, 西山 耕一郎, 松井 和夫, 呉 晃一, 江洲 欣彦
    2014 年 65 巻 3 号 p. 226-233
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/06/25
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    当院は急性期型の総合病院であり,医療圏は高齢者が多く,高齢者の嚥下障害者や誤嚥性肺炎患者が多く入院している。そのため内科等他診療科から嚥下評価の要求が多く,それに答えるべく2009年4月に嚥下外来を開設した。嚥下外来では,診察時に嚥下内視鏡検査と嚥下造影検査を行う方針で診療し,2009年4月からの1年間に,初診患者64名,のべ101名の診察を行った。患者の平均年齢は77.2歳であった。嚥下障害の原因は,老人性が最多で,その他に脳血管・神経障害,肺疾患などが続いた。嚥下障害は,咽頭期に関与するものが最多であった。誤嚥があったものは77%で,そのうち食物誤嚥が90%であった。その中に,唾液誤嚥を10%に認めた。嚥下評価を,藤島の摂食・嚥下能力のグレードと嚥下食ピラミッドにて患者本人・家族または主治医に伝える方法が有用であった。嚥下はNST (栄養サポートチーム;nutrition support team) 活動において密接にかかわるものと考えられ,耳鼻咽喉科医はNSTの一員としての嚥下障害診療にかかわるべきと考えられた。
  • 山田 光一郎, 田中 信三, 平塚 康之, 隈部 洋平, 渡邉 佳紀, 小山 泰司, 古田 一郎, 吉松 誠芳
    2014 年 65 巻 3 号 p. 234-240
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/06/25
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    はじめに:甲状腺分化癌は予後が良好であるが,なかには予後不良のものもある。甲状腺癌分化癌の危険因子について検討した。対象と方法:対象は1991~2000年に手術を行った甲状腺分化癌166例 (年齢56.4±14.1歳,男性/女性:35/131例,乳頭癌/濾胞癌:144/22例,経過観察期間13.1±4.8年,T1-2/T3/T4 : 60/84/22例,N0/N1a/N1b : 81/40/45例,M0/M1 : 164/2例,stage I-II/III/IV : 60/54/52例) 。なおTNM・病期分類はUICC第7版に基づき分類し,生存率と有意差検定を行った。結果:166例中14例の原病死を認めた。全体の疾患特異的生存率は10年96.6%,15年92.0%であった。T4とT1-2,T4とT3,N1bとN0,M1とM0,stage IVとstage I-II,stage IVとstage IIIの間に有意差 (p<0.05) を認めた。T4,N1b,M1について多変量解析を行ったところ,T4,M1で有意差を認めた。結論:T4,N1b,M1は危険因子であり,特にT4,M1の予後が不良であった。
  • 石永 一, 大津 和弥, 宮村 朋孝, 中村 哲, 竹内 万彦
    2014 年 65 巻 3 号 p. 241-245
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/06/25
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    2008年から2013年の間に当科で治療を行った12例の甲状腺癌縦隔リンパ節転移症例を検討した。6例では頸部アプローチで縦隔リンパ節摘出を行い,残る6例は胸骨アプローチで行った。病理組織学的検査では縦隔郭清した全症例でリンパ節陽性であった。3例が腫瘍の縦隔再発をきたし,1例は死亡した。縦隔郭清における合併症としては,L字切開後の2例で気胸が認められ,頸部アプローチの1例で術後出血をきたし,結果的に気管切開を行った。頸部アプローチも胸骨アプローチも,いずれも甲状腺乳頭癌の上縦隔リンパ節転移に対し,安全で有用な治療法であると思われた。ただし予防的縦隔郭清は必要ないと思われた。
症例
  • 坂井 利彦, 高野 真吾, 牧角 祥美, 黄 淳一, 田山 二朗
    2014 年 65 巻 3 号 p. 246-251
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/06/25
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    音声機能改善を目的とした骨折整復は周囲との癒着が生じる以前に行うことが望ましいが,喉頭外傷では救命が優先されるため,陳旧例にも遭遇する。今回われわれは受傷後2年経過した喉頭外傷後音声障害の症例に対し甲状軟骨整復術を行い,良好な結果を得た。症例は34歳,男性。自動車の組み立て中に,上から落下した鉄パイプで頸部~胸部を受傷した。事故直後から高い声が出ないことを自覚していたが,気胸,肋骨骨折に対する治療が優先され,喉頭外傷に関しては評価されなかった。約2年後に音声障害を主訴として地元病院耳鼻咽喉科を受診し,甲状軟骨の骨折を指摘され,精査加療目的に当科紹介となった。喉頭内視鏡検査で右声帯は短く緊張を失っていた。CTでは甲状軟骨が縦方向に骨折し,左側が後方に落ち込んでいた。喉頭枠組みの変形が音声障害の原因と判断し,手術により正常解剖に近づけるように整復した。結果,自覚症状は改善し,音域検査では喉頭調節機能の改善を認めた。陳旧例であっても,喉頭の変形を整復することで音声機能を改善し得る場合があり,画像検査,内視鏡検査,音声検査等により喉頭の状態を適切に評価し手術を検討する必要があると考えられた。
  • 倉上 和也, 長瀬 輝顕, 神宮 彰, 和氣 貴祥
    2014 年 65 巻 3 号 p. 252-259
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/06/25
    ジャーナル 認証あり
    アルカリ性薬物の誤飲による咽喉頭食道炎は,粘膜びらん,壊死,瘢痕狭窄などさまざまな病態を呈し,致死的な状況となりうる。アルカリ性薬物誤飲例の報告自体が稀であるが,喉頭蓋脱落を観察した症例は文献的にはない。今回われわれは,95%水酸化カリウム誤飲により生じた腐食性咽喉頭食道炎に対し,長期入院および手術的加療を行い救命し得た症例を経験したので,詳細な咽喉頭所見の経過を含め報告する。症例は39歳男性。飲酒後にアルカリ性パイプ洗浄剤を誤飲し,嘔吐,振戦様痙攣をしているところを家人に発見され,当院急患室へ救急搬送された。声門狭窄は認めなかったものの,中下咽頭,舌根部,披裂部,喉頭蓋に粘膜の腐食性変化を認めた。全身麻酔下に気管切開術を施行し,集中治療室にて人工呼吸管理を行った。喉頭浮腫や粘膜炎は徐々に軽快したものの,第37病日より喉頭蓋の脱落を認め,喉頭蓋はほぼ完全に脱落した。脱落後は,喉頭蓋基部で周囲組織と癒着し,発声および経口摂取が不能な状態になった。第175病日に咽頭喉頭食道摘出術および有茎空腸による再建,永久気管孔形成術を施行した。2年経過した現在,重大な有害事象の出現を認めず,社会復帰し,経過観察中である。
  • 田中 寿明, 的野 吾, 森 直樹, 西村 光平, 日野 東洋, 白水 和雄, 藤田 博正
    2014 年 65 巻 3 号 p. 260-264
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/06/25
    ジャーナル 認証あり
    Zenker憩室は下咽頭食道移行部に発生する圧出性の憩室である。欧米での報告例は多いが,本邦では比較的まれな疾患である。憩室固定術は欧米では憩室切除術と同様に広く行われているが,わが国では憩室切除術が主に施行されており,憩室固定術の報告例はない。今回,Zenker憩室に対し憩室固定術を行い良好な結果が得られた1例を経験したので文献的考察とともに報告する。症例は78歳の男性で,強度な嚥下障害を主訴に当院に紹介された。精査にてZenker憩室と診断され,輪状咽頭筋切開を伴う憩室固定術を受けた。術後経過は良好で,術後2年9カ月経た現在も再発なく経口摂取は良好である。憩室固定術は簡便で合併症の少ない術式であり,高リスクの高齢者症例においては有用な術式と考えられる。
  • 古川 竜也, 岩江 信法, 平山 裕次, 手島 直則, 松居 秀敏, 米澤 宏一郎
    2014 年 65 巻 3 号 p. 265-271
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/06/25
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    甲状腺乳頭癌が頸部リンパ節に転移した後に未分化転化したと推測される3症例を報告する。症例1は上頸部リンパ節転移巣での未分化転化病変に対して根治切除を行い,無再発生存が得られている。症例2は同様に手術を施行したが,内頸静脈腫瘍塞栓のため切除不能であった。症例3も側頸部リンパ節での未分化転化病変で切除不能であった。術後放射線治療中に増大を認め,早期に死亡した。甲状腺未分化癌は極めて予後不良な疾患ではあるが,早期に根治切除ができた場合長期生存を得られることもあり,未分化転化して急速増大するタイミングを逃さずに切除を行うことが重要と考える。また切除不能例の予後は不良のため,早期に緩和医療に移行する必要がある。そのためには転移巣のみが未分化転化している甲状腺乳頭癌症例が存在することを念頭に置いて迅速に検査治療にあたる必要性がある。
  • 成毛 聖夫, 高岡 卓司
    2014 年 65 巻 3 号 p. 272-277
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/06/25
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    胸腺様分化を示す癌carcinoma showing thymus-like differentiation (CASTLE) は,甲状腺内あるいは頸部軟部組織に発生する稀で組織診断が困難な悪性腫瘍である。組織像は胸腺上皮性腫瘍と類似し,また甲状腺の扁平上皮癌や未分化癌との鑑別診断を要する。緩慢な増殖をするとされ,より良好な経過をとる。症例は64歳男性。CTにて甲状腺左葉に接する1.5 cm大の辺縁不整の腫瘍を認め,確定診断と根治切除目的にて腫瘍切除術を施行。直接浸潤を認める食道筋層と左反回神経の一部を合併切除した。病理学的に甲状腺近傍の異所性胸腺より発生したB3型胸腺腫と当初診断し,切除断端に腫瘍細胞を認めたため,術後照射と抗癌剤による補助治療を行った。その後摘出標本の再検討の結果CASTLEと最終診断した。他病死するまでの術後3年5カ月間に再発を認めなかった。甲状腺腫瘍の組織診断において本腫瘍の鑑別を念頭におくように留意したいと考える。
用語解説
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