日本気管食道科学会会報
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65 巻, 5 号
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特集:超高齢社会と気管食道科
  • 平林 秀樹
    2014 年65 巻5 号 p. 365-372
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/25
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    気管食道科領域の超高齢社会での問題点を総論的に考えてみた。高齢者の特徴を踏まえ日々の診療に取り組むべきは当然である。また,各方面で述べられているように,人口問題はわれわれ医療者にとって医療経済的に重要であることは言うまでもなく,一方,われわれ気管食道科学会にも会員の高齢化率が高まっており重大な問題で,早期の対策が望まれる。
  • 兵頭 政光
    2014 年65 巻5 号 p. 373-378
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/25
    ジャーナル 認証あり
    嚥下障害は高齢化社会の到来とともに医療的にも社会的にも大きな問題となってきた。高齢者では生理的に嚥下機能が低下する結果,誤嚥性肺炎の危険性が増大し,高齢者の生命予後を左右する。そこで,加齢による嚥下機能の変化について臨床的観点から述べた。高齢者では,嚥下関連器官の解剖学的および生理学的変化により嚥下機能が低下する。特に咽喉頭の感覚機能の低下や下咽頭収縮筋の機能的変化などによる嚥下反射の惹起遅延,食塊の駆動力低下,食道入口部開大障害が大きな要因となる。これらの障害に対する治療あるいは予防法としては,食物形態の調整,嚥下関連筋の機能訓練,感覚刺激を目的とした薬物療法などが有用と考えられ,今後の臨床研究およびエビデンスの蓄積が望まれる。
  • ―機能形態学からみた音声の加齢―
    佐藤 公則
    2014 年65 巻5 号 p. 379-387
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/25
    ジャーナル 認証あり
    高齢者の声帯粘膜では,細胞外マトリクスの質的・量的変化が加齢とともにおこっている。すなわち細胞外マトリクス複合体の三次元構築と各細胞外マトリクスの組成が変化し,声帯粘膜の形態と粘弾性が変化している。加齢に伴う喉頭の組織学的変化は,振動体としての声帯の物性と声帯振動に影響を与え,声の加齢的変化に関与している。Functional morphology (機能形態学) の観点から,振動体としての声帯の形態学的加齢変化と音声機能を関連させると,高齢者の音声機能の病態生理が説明できる。喉頭組織の加齢的変化は個人差が少なくない。声の老化に個人差があるのと同様である。
  • 菅澤 正
    2014 年65 巻5 号 p. 388-394
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/25
    ジャーナル 認証あり
    高齢者の約70%は,若年層と同様のガイドラインに基づいた治療が可能である。究極のテイラーメイド治療であり,他職種の参加した治療前評価が重要であり,特に社会的サポートの有無は治療立案に重要である。治療前の精神神経学的評価は特に重要であり,MMSE, HDS-Rについて説明した。また,治療判断,意思決定過程に問題を有する患者が多く,マスクされた認知症,うつ状態の存在に留意しなければならない。化学療法,分子標的薬治療の高齢者に対する有用性は確認されておらず,適応には十分に注意する。低侵襲の治療期間の短い手術的治療を優先すべきである。
  • 山口 泰弘
    2014 年65 巻5 号 p. 395-402
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/25
    ジャーナル 認証あり
    高齢者に特徴的な肺組織像である老人肺では,炎症性変化や不規則な肺胞壁の断裂を伴うことなく,気腔が拡大し,肺の弾性収縮力は低下する。また,加齢とともに胸郭は硬くなり,呼吸筋力も低下する。そのため,呼吸機能検査では,一秒率が低下,肺活量が低下,残気量が増加,肺拡散能が低下する。そのほか,特に運動時には,加齢とともに肺動脈圧は上昇しやすくなる。睡眠呼吸障害の頻度も高齢者で増加する。また,高齢者では気道過敏性の亢進を示す症例が増えることや,線毛活動による気道異物の排出が遅延していることも報告されている。運動時には呼気流速の低下から一回換気量が十分に増加せず,加齢による運動耐容能低下の一因となっている。さらに,高齢者では,脊柱の強い後弯や著しいるい痩など,多様な病態が気道・肺機能の低下を増強する。加齢による劇的な呼吸機能の低下に比べて,安静時の動脈血酸素分圧の低下は軽く,動脈血二酸化炭素分圧は変化しない。すなわち,高齢者では,肺の障害に対する予備能が低下しているといえる。このような機能低下は,肺結核後遺症による呼吸不全の進行や慢性閉塞性肺疾患患者の経年的な呼吸機能低下の要因であり,また,高齢者に肺炎が頻発し,重症化,長期化しやすい一因でもある。
  • 金子 教宏
    2014 年65 巻5 号 p. 403-411
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/25
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    今後日本は高齢化社会を迎えることになる。高齢化社会の地域にある当院での問題点を検討することは,今後の日本の高齢化医療を考える上で有用な情報を提供することになると考えている。その中で,COPDと気管支喘息は呼吸器疾患の中で頻度の多い疾患である。特に,COPDはタバコが主な原因であり,今後さらに増加し,死亡原因としても上昇するものと考えられている。COPDは喫煙歴を有する高齢者に多く,多くの併存疾患が存在していることが指摘されている。そのため,COPDという疾患を診るのではなく,COPDを有している患者を全人的に診察する能力が求められている。また,気管支喘息も一般的には小児や若い人に多い疾患であるが,高齢化に伴い高齢者の気管支喘息患者も多い。そのような喘息患者にも多くの併存疾患が存在していることがわれわれの検討で明らかになった。また,COPDや気管支喘息の治療薬として吸入薬剤が多く使用されているが高齢者ではうまく使用できない場合も存在する。これも,高齢化社会特有の問題点であると考える。さらに,高齢化社会では,病院へのアクセスも大きな問題である。本人のADLだけでなく,家族の介護度によっても通院が困難となることもある。このように,高齢化社会での医療は,単に疾患を診るだけでは良い治療はできず,併存疾患を含めた全人的な医療が求められる。さらに,患者だけでなく,その家族のさまざまな状況を考慮した医療をしなければならないことを理解しなければいけない。
  • 小村 伸朗, 矢野 文章, 坪井 一人, 星野 真人, 山本 世怜, 秋元 俊亮, 柏木 秀幸, 矢永 勝彦
    2014 年65 巻5 号 p. 412-420
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/25
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    食道運動機能障害は一次性食道運動機能障害と二次性食道運動機能障害とに大別される。一次性食道運動機能障害にはアカラシア,食道び慢性痙攣症,ナットクラッカー食道,hypertensive lower esophageal sphincter (hypertensive LES),非特異的食道運動機能障害などがある。非特異的食道運動機能障害の中で食道体部運動などが低下した一群をineffective esophageal motility (IEM) として分類することがある。近年,新たなる食道運動機能検査機器としてhigh resolution manometryが臨床応用され,食道運動機能疾患はさらに詳細に分類 (シカゴ分類) されるようになった。一方,高齢者のみに認められる特有の食道運動機能障害はないが,若年者と比較した場合には疾患ごとに特徴があり,文献的考察を行った。高齢者でよく認められる疾患に食道裂孔ヘルニアや逆流性食道炎があるが,しばしばIEMを合併する。外科的治療としては腹腔鏡下噴門形成術が有効であり,食道運動機能障害が改善することもある。また食道アカラシアではLESの弛緩不全と食道蠕動運動障害が認められるが,腹腔鏡下Heller-Dor手術がきわめて有効であり,症状の改善が得られる。
  • 上野 正紀, 宇田川 晴司
    2014 年65 巻5 号 p. 421-428
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/25
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    食道癌治療はこの30年の間に飛躍的に治療成績の向上,生存期間の延長を果たしてきた。これは手術における頸・胸・腹の3領域リンパ節郭清の確立,その後の内視鏡治療の登場と進歩,化学放射線治療の工夫によるものである。食道癌患者には高齢者が多くさらにその比率は今後増加するものと思われる。高齢者に対しては有効性,安全性を含めたリスクベネフィットバランスをもった治療選択が必要であり,現在のsurgical managementにおいての高齢者の短期成績と長期予後を非高齢者と比較することで,手術治療の在り方を再考した。方法:75歳以上を高齢者群,75歳未満を非高齢者群と定義し,とくに2000年以降の1545例を対象に,高齢者群と非高齢者群で術式選択,郭清範囲の違い,さらに右開胸症例に限って,高齢者に対する治療の工夫と治療成績につき非高齢者と比較した。結果:リンパ節郭清範囲では高齢者はD1,D2が多く,非高齢者はD3が多かった。胸管合併切除および胸管周囲リンパ節郭清は非高齢者に多く行われていた。術前治療は高齢者の71%には行われておらず,非高齢者では47%に化学療法もしくは化学放射線治療が行われていた。以上の治療の結果,在院死,治療関連死,長期生存には2群間に差を認めなかった。考察:食道癌に対して第一選択となる手術治療は高齢者でも受けることができる。厳密な術前評価や周術期管理に加えて,手術における合併症軽減,術前併用療法の適応についての慎重な選択が必要である。
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