日本気管食道科学会会報
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66 巻, 1 号
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原著
  • 愛甲 健, 谷垣 裕二, 矢吹 健一郎, 折舘 伸彦
    2015 年66 巻1 号 p. 1-6
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/02/25
    ジャーナル 認証あり
    T2N0声門扁平上皮癌は生命予後良好な疾患であるが,放射線単独治療の場合,局所再発が30%程度あると報告されている。われわれは局所制御,喉頭温存率を高める目的で放射線治療に加え経口抗癌剤S-1を併用し治療を行っている。2004年4月から2010年7月までに当院を受診しS-1併用放射線治療を行った27例について検討した。S-1の投与量は体表面積から算出される初回基準量より1段階減量し (80~100 mg/day),放射線治療の間2週間投与1週休薬を繰り返し続けた。疾患特異的5年生存率は100%,5年喉頭温存率は88.2%であった。Grade 3以上の有害事象は皮膚炎10例,粘膜炎7例,白血球減少,感染,下痢が1例みられたが,放射線治療の中止や中断はなかった。S-1併用放射線治療は十分管理可能で有用な治療と考えられた。
  • 東野 正明, 鈴木 倫雄, 櫟原 新平, 櫟原 崇宏, 李 昊哲, 河田 了
    2015 年66 巻1 号 p. 7-12
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/02/25
    ジャーナル 認証あり
    全身状態の改善や上気道狭窄の改善によって気管切開孔の必要性がなくなり,気管カニューレを抜去しても自然に閉鎖しない場合,外科的に閉鎖せざるを得ない。その際,われわれは基本的にはhinge flapによる気管孔閉鎖術 (Hinge群) を施行し,hinge flapで閉鎖困難な症例に対しては前胸壁皮弁を加えた術式 (前胸壁群) を用いており,これらの症例について検討した。対象は2004年から2013年までの10年間に気管切開孔閉鎖術を施行した70例 (男性41例,女性29例),平均年齢は63歳 (13~83歳) 。原疾患は甲状腺腫瘍が26例で最も多く,次いで口腔癌13例,中咽頭癌9例であった。気管切開孔閉鎖の術式は,Hinge群は62例 (89%),前胸壁群は8例 (11%) であった。術前の気管切開孔の最大径は,前胸壁群が有意に大きかった。気管切開術から気管切開孔閉鎖術までの気管切開孔開存期間は2群間で有意差はなかった。術後合併症は,Hinge群で62例中18例 (29%) 生じ,前胸壁群では8例中4例 (50%) に生じた。術後創部哆開および感染を認めた18例は有意差をもって放射線治療歴があり,うち16例は2週間~6カ月 (中央値1.5カ月) で自然閉鎖したが,2例は現在も気管孔が残存している。
  • 土師 知行, 岩永 健, 千代田 朋子, 大野 恒久
    2015 年66 巻1 号 p. 13-19
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/02/25
    ジャーナル 認証あり
    われわれは耳疾患や嚥下障害のない正常成人例10例に超小型マイクロホンを外耳道内に挿入して,検査時に行われたすべての嚥下で,特徴的なクリック音を有する嚥下音を記録することができた。電子内視鏡検査と耳内嚥下音との同時記録から,クリック音は咽頭期嚥下の開始時期に一致して現れ,耳管咽頭口の開大と一致すること,またサウンドスペクトログラムによる分析では,このクリック音は持続が短く,高周波成分を多く含むことなどから,嚥下時の耳管開放に関連した音が記録されていると考えられた。検査例がまだ少なく,耳管機能や加齢による影響の検討,嚥下障害患者での試行など,今後行うべきことも多い。しかし,耳内嚥下音は記録するのに高価な機器を要せず,聴覚的にも,スペクトルによる分析で視覚的にも識別しやすい信号であり,嚥下運動の定点を時系列上で詳細に同定できるため,非侵襲的な嚥下運動のモニタリング,嚥下障害のスクリーニングや質的診断へ応用できる手段の一つとなると考える。
症例
  • 出嶋 仁, 川村 雅文
    2015 年66 巻1 号 p. 20-24
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/02/25
    ジャーナル 認証あり
    クループ症候群は,種々のウイルス感染を契機として上気道狭窄をきたす小児科領域で広く認識されている病態である。成人では気道の発達に伴い,発症することは非常に稀である。症例は24歳女性,3日前より咽頭痛と咳嗽があり,市販の感冒薬で対応していたが,強い呼吸困難が出現したため救急外来を受診した。吸気性喘鳴,嗄声,犬吠様咳嗽があり,マルチスライスCT (multidetector computed tomography : MDCT) での3次元再構築で声門下腔の狭窄,途絶像を認めクループと診断した。さらに喉頭・気管支鏡を緊急で施行し声門下腔に高度の粘膜浮腫,腫脹による狭窄を確認した。緊急入院し,アドレナリン吸入とステロイド全身投与の治療により症状は改善し第6病日に軽快退院した。稀な成人クループの症例を経験し,3D-CTによる診断が有用であると考えられた。
  • 濱口 宣子, 大津 和弥, 石永 一, 竹内 万彦
    2015 年66 巻1 号 p. 25-30
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/02/25
    ジャーナル 認証あり
    下咽頭の神経鞘腫は稀な腫瘍である。今回,下咽頭に発生した神経鞘腫の1例を経験した。症例は43歳男性。主訴は嗄声,既往歴に精巣癌がある。現病歴では,精巣癌を経過観察中の病院でCTを撮影された際に右梨状窩付近に腫瘍性病変を指摘された。同院耳鼻咽喉科を受診し,下咽頭に腫瘍性病変が認められたため,精査加療目的に当科へ紹介された。局所所見では右披裂後方,輪状後部粘膜下に白色腫瘤が認められ,右声帯は正中位で固定していた。頸部MRIにてT1低信号,T2高信号,ガドリニウムによる増強効果を示す腫瘤が認められた。下咽頭粘膜下腫瘍の術前診断で,直達喉頭鏡を用いて,顕微鏡下に摘出術を行った。腫瘍直上に粘膜切開を入れ,腫瘍を周囲組織から剥離,摘出した。腫瘍径は15×10×5mmであった。病理組織診断では神経鞘腫であった。経過良好にて術後8日目に退院とした。現在まで再発は認めていないが,術前からの右声帯の正中固定は変化ない。本例は下咽頭において発生した神経鞘腫であった。手術は直達喉頭鏡を用いて経口アプローチで行った。外切開と比較し,低侵襲であること,また翌日より経口摂取が可能である点からも,有用な術式であったと考える。
  • 遠藤 稔, 塚原 清彰, 本橋 玲, 佐藤 宏樹, 勝部 泰彰, 中村 一博
    2015 年66 巻1 号 p. 31-35
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/02/25
    ジャーナル 認証あり
    喉頭全摘出術後合併症の一つである縫合不全,咽頭皮膚廔形成は最も避けたい合併症である。廔孔閉鎖困難症例では生涯経口摂取不可となりQOLは著しく低下する。咽頭チューブの一つであるHar-El Pharyngeal Tubeを使用し,経口摂取可能となった1例を報告する。症例は77歳,男性,喉頭癌T2N0M0stageIIと診断された。60歳時に頸部に放射線治療の既往あり,喉頭全摘出術および両側頸部郭清術を施行した。縫合不全から感染をきたし,広範囲な咽頭皮膚廔を形成した。遊離前腕皮弁および大胸筋皮弁を用いた瘻孔閉鎖術を行ったが,閉鎖できなかった。また2回目術後より循環機能低下があり,全身麻酔手術が困難となった。経口摂取への強い希望あり,Har-El Pharyngeal Tubeを個人輸入して,咽頭と食道のバイパスチューブとして使用した。チューブ留置により飲水および五分粥摂取が可能となった。一方で,疼痛のため,1日1回15分程度が使用の限界であった。チューブ使用に伴い,咽頭皮膚瘻孔が拡張し,経口摂取時に漏洩が出現した。心機能を含めた全身状態の悪化から咽頭チューブ使用開始後8カ月目に永眠した。咽頭チューブは永眠1カ月前まで使用していた。Har-El Pharyngeal Tubeは難治性咽頭皮膚瘻孔症例での一手段となりえる。
  • 山本 聡, 阿部 創世, 三上 公治, 前川 隆文
    2015 年66 巻1 号 p. 36-39
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/02/25
    ジャーナル 認証あり
    症例は57歳,男性。甲状腺乳頭癌 (T2N1M0) の診断で,甲状腺左葉切除+左頸部リンパ節郭清術 (D2b) を施行した。術翌日より経口摂取開始して頸部ドレーン抜去した。2病日より左頸部に10cm大の腫脹みられ,試験穿刺で乳糜液の排出を認めた。低脂肪食で経過観察するも腫脹は軽減せず,術後12日目に再手術を施行した。再手術当日に乳製品200mlを摂取してMRIを施行し胸管の走行と,嚢胞への流出部を確認して手術にのぞんだ。前回の皮膚切開を使用してアプローチした。乳糜漏出部はMRIの所見と同様に左内頸静脈角部にあり,切開創部より採取した皮下脂肪織をプレジェットとして,マットレス縫合で閉鎖し,タコシールでカバーして乳糜漏はみられなくなった。術後経過は良好で常食摂取でも乳糜の排出なく再手術後5日目にドレーン抜去,8日目に退院となった。
  • 小町 太郎, 三枝 英人, 山口 智, 門園 修, 中村 毅, 粉川 隆行, 愛野 威一郎, 木村 繁, 伊藤 裕之
    2015 年66 巻1 号 p. 40-45
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/02/25
    ジャーナル 認証あり
    症例は66歳男性。3日前から左側咽頭痛が出現し,急激に悪化した。左側頸部の発赤・腫脹が出現し,経口摂取も不能となったため当科へ緊急入院した。初診時,左側頸部の発赤・腫脹が顎下部から鎖骨上まで及んでいた。また,左側扁桃下極後下方付近の発赤・腫脹,左側咽頭側壁から喉頭蓋,披裂喉頭蓋襞に浮腫性変化を認めた。頸部造影CTでは左側扁桃後下方付近から副咽頭間隙,咽頭後間隙,前頸間隙に膿瘍の形成を認めたため,緊急で局所麻酔下に気管切開後,切開排膿術を行った。その後,開放創の洗浄と抗生剤の点滴投与を行い,局所所見および血液所見は徐々に改善したため退院予定であったが,退院前日 (術後29日目) に左側口蓋扁桃および後口蓋弓の再腫脹を認めた。頸部造影CTを施行したところ左側口蓋扁桃後下方に限局した膿瘍の再形成を認めた。このため,翌日,左側口蓋扁桃摘出術を行った。その結果,扁桃床に開口する第2鰓溝の遺残と思われる瘻管を認めた。病理学的検査にて第2鰓溝の遺残による内瘻孔と診断した。その後,6年間再発を認めていない。
用語解説
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