日本気管食道科学会会報
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66 巻, 6 号
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原著
  • 佐久間 康徳, 塩野 理, 小松 正規, 池田 陽一, 折舘 伸彦
    2015 年 66 巻 6 号 p. 365-372
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/12/25
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    喉頭気管分離術は反復性誤嚥性肺炎を完全に防止できる手術として非常に有用である。われわれは,誤嚥防止手術の中で侵襲が比較的小さく,かつ喉頭機能を温存できる方法として,喉頭気管分離術を施行している。症例はLindeman変法が7症例,気管弁法B-typeが7症例,年齢は7カ月から69歳,手術時間は,Lindeman変法が143±39分 (平均±標準偏差),気管弁法は103±23分で,気管弁法はLindeman変法と比較して短かった。カニューレは,成人では呼吸器装着が必要な2症例以外は抜去できたが,小児症例では2例ともカニューレ挿入のままであった。術後合併症は2症例で認め,1例は心不全の悪化による死亡,もう1例は縫合不全,創部の感染のため再手術を要した。気管弁法は声門閉鎖術と同様に,症例によっては局所麻酔下でも手術が可能な低侵襲手術であり,Lindemanの手術と同様に声帯に侵襲を加えず,手術時間の短縮や縫合不全などの合併症低減も期待しうる術式であり,今後の誤嚥防止術として積極的に選択されるべき方法である。
  • 髙橋 紘樹, 津布久 崇, 松村 道哉, 古田 康
    2015 年 66 巻 6 号 p. 373-379
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/12/25
    ジャーナル 認証あり
    脳血管障害・神経筋疾患等で頻回に嚥下性肺炎を繰り返す症例に対し,さまざまな誤嚥防止術の有用性が報告されている。当科では鹿野らが報告した甲状軟骨・輪状軟骨鉗除と筋弁充填による声門閉鎖術を施行している。本術式の術後経過を検討した。対象は2010年3月から2014年7月までに当科で手術を行った20例 (男性15例,女性5例),年齢の中央値は68.5歳 (16~88歳) であった。米国麻酔学会術前状態分類class 3の重症例が12例と半数以上を占めたが,全例全身麻酔下に手術を行い人工呼吸器離脱困難例は認めなかった。術後の声門閉鎖不全・創感染は認めなかった。人工呼吸器が必要な4例,気管軟化症併存の1例を除き15例でカニューレ不要となった。気管孔が大きく人工呼吸器使用中カニューレが抜けやすくなった1例で気管孔縮小手術を行い,気管孔狭窄の2例で気管孔開大術を行った。気管切開術後の7例では声門閉鎖術後,吸痰回数は著明に減少した。本術式は閉鎖が確実で安全な術式であり,全身状態不良例にも適応可能であった。基本的にカニューレ不要となるが,人工呼吸器使用例では気管孔とカニューレの大きさの適合へ配慮を要すると考えられた。
  • 東海林 裕, 中島 康晃, 川田 研郎, 宮脇 豊, 岡田 卓也, 了徳寺 大郎, 藤原 直人, 齋藤 賢将, 藤原 尚志, 小郷 泰一, ...
    2015 年 66 巻 6 号 p. 380-384
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/12/25
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    頸部食道癌手術における頸部手術視野では完全な上縦隔郭清は困難である。そのために上縦隔リンパ節郭清を必要とする場合は胸骨縦切開の付加や右開胸食道切除を選択することになる。しかし転移診断は現在なお困難で,より低侵襲でまた106recLリンパ節の確実な郭清を行える手段があれば望ましい。ここではcadaverを用いた気縦隔下の上縦隔郭清法の検討について述べる。左頸部やや上方に4cmの襟状切開を置き直視下に開始する。左反回神経の露出後にwound retractor XSを挿入し,単孔デバイスを装着し気縦隔操作に移行,左鎖骨下動脈,胸管に沿って食道左側背側を剥離し,気管壁に沿って左反回神経背側を剥離,気管膜様部から食道を遊離,最後に左反回神経の腹側の106recLリンパ節を郭清した。気縦隔にて良好な視野展開,剥離が可能であった。6献体での検討では全例で左反回神経および胸管を同定しえた。また左反回神経から気管への索状物も後半例の3例で同定しえた。気縦隔下の上縦隔郭清は経胸腔操作を要せず,低侵襲なため有用なアプローチ法と思われた。
  • 宮本 真, 阪上 智史, 八木 正夫, 宮田 恵里, 友田 幸一, 道浦 拓, 福井 淳一
    2015 年 66 巻 6 号 p. 385-390
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/12/25
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    食道癌術後の反回神経麻痺の発生頻度,自然回復率,発生に影響した要因などについて検討した。対象は2011年1月から2013年12月の3年間の手術症例のうち,術前術後に耳鼻咽喉科で反回神経麻痺の有無を確認できた59例について検討した。術後抜管時には,約半数の29例 (49.2%) に反回神経麻痺を認め,ほとんどが正中位固定であった。術後反回神経麻痺を認めた29例中18例で麻痺の回復を認め,術後半年以降も麻痺の残存したものは食道癌全体59症例中11例 (18.6%) であった。抜管時に反回神経麻痺を認めた群と認めなかった群に分け,術前因子 (年齢,術前血清アルブミン値,BMI,占拠部位,stage,術前治療),術中因子 (術式 (右開胸開腹か胸腔鏡下補助),リンパ節郭清 (2領域か3領域),手術時間,出血量),術後因子 (挿管期間,#106recへの転移) について検討した。2群間比較では有意差を認めず,術後の反回神経麻痺の有無を目的変数として,上記要因を説明変数として行った多変量解析においても有意差を認めなかった。術後に反回神経麻痺の回復した群と麻痺の残存した群において,麻痺の残存した群のBMIは高値であった (p<0.05) 。また手術時の年齢での検討では,70歳以上で麻痺の発生が高くなる傾向があり,高齢者の手術にはより注意が必要と考える。
  • 原口 正大
    2015 年 66 巻 6 号 p. 391-399
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/12/25
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    [目的]嚥下の咽頭期における咽頭収縮筋運動による咽頭周囲組織の受動運動を解明する。[対象と方法]健常成人30名を対象とした。3.0テスラ全身MRIのT2強調画像を使用し,上下歯列と第二頸椎前縁下端を通る水平断面で嚥下運動を連続撮影した。安静時と咽頭最大収縮時の水平断画像を選択した。各画像における咽頭枠組みの面積から咽頭収縮率 (PCR) を算出し解析の指標とした。PCRに対する,①年齢,②Body mass index (BMI),③肉眼的な口蓋扁桃の大きさ,④安静時の口蓋扁桃の面積,⑤嚥下による外頸動脈の移動距離,⑥嚥下による副咽頭間隙の面積変化の相関関係を検討した。[結果]年齢とPCRには弱い相関関係があるも有意差はなかった (r=-0.21, r2=0.045,p=0.26) 。BMI (r=-0.52,r2=0.27,p<0.05) および口蓋扁桃の面積 (r=-0.55,r2=0.30,p<0.05) とPCRは中等度の負の相関関係にあり有意差があった。外頸動脈の移動距離 (r=0.45,r2=0.21,p<0.05) および副咽頭間隙の面積変化 (r=0.54,r2=0.29,p<0.05) とPCRは中等度の正の相関関係にあり有意差があった。[まとめ]嚥下咽頭期には,咽頭収縮運動に伴う受動運動として咽頭周囲組織は形態変化し咽頭方向へ移動した。BMI,両側口蓋扁桃の面積,外頸動脈移動距離および副咽頭間隙の面積変化は,咽頭収縮に伴う中咽頭の形態変化に関与する因子であることが推察された。
  • 田中 是, 菊地 茂, 大畑 敦, 大木 雅文
    2015 年 66 巻 6 号 p. 400-405
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/12/25
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    本邦では,数種類の気管切開チューブが使用可能な環境であるが,使用するチューブは各医師の経験に基づき決定されているのが現状である。近年シリコン製チューブにラセン状のステンレス鋼を組み込んだBivona® (Smiths Medical) が発売された。今回,チューブの柔軟性を比較し,チューブを0度,30度,60度と曲げた際の一回換気量の変化量,変化率を既存のポリ塩化ビニル製,シリコン製気管切開チューブと比較し,実験的に有用性を検討した。柔軟性はポリ塩化ビニル製よりシリコン製気管切開チューブで高く,Bivona®は最も柔軟であった。一回換気量の変化量はBivona® 30-60度間のみで低下しなかった。一回換気量の変化率は既存のシリコン製チューブで変化が多く,ポリ塩化ビニル製チューブで変化が少なく,Bivona®で最も変化が少なかった。Bivona®は既存製品と比較し,チューブの柔軟性が高く,屈曲時の一回換気量が安定しており,気管切開を施行した患児に対し侵襲が少なく,呼吸管理が容易なチューブと考えられる。
  • 東海林 裕, 中島 康晃, 川田 研郎, 宮脇 豊, 岡田 卓也, 了徳寺 大郎, 藤原 直人, 齋藤 賢将, 藤原 尚志, 小郷 泰一, ...
    2015 年 66 巻 6 号 p. 406-410
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/12/25
    ジャーナル 認証あり
    頸部食道癌手術における頸部手術視野では完全な上縦隔郭清は困難である。そのために徹底した上縦隔リンパ節郭清を必要とする場合は胸骨縦切開の付加や右開胸食道切除を選択することになる。しかし転移診断は現在なお困難で,より低侵襲でまた106recLリンパ節の確実な郭清を行える手段があれば望ましい。ここでは気縦隔下に106recLリンパ節郭清を行った症例について報告する。 (症例) 57歳,男性で術前診断は食道癌 (Ce type 4 cT3 cN0 cM0 cStage II) であった。PETでは陰性なるもCTでは106recLに8 mm大のリンパ節を認め,組織学的判定が必要と判断,気縦隔下の左上縦隔郭清を行う方針とした。左頸部やや上方に4 cmの襟状切開を置き直視下に開始する。左反回神経の露出後にwound retractor XSを挿入後に単孔デバイスを装着し気縦隔操作に移行,左鎖骨下動脈,胸管に沿って食道左側背側を剥離し,気管壁に沿って左反回神経背側を剥離,気管膜様部から食道を遊離,最後に左反回神経の腹側の106recLリンパ節を郭清した。尾側では左反回神経が大動脈弓を反回する部位まで確認できた。また左反回神経からの気管への分枝も確認しえた。気縦隔下の上縦隔郭清は経胸腔操作を要せず,反回神経の気管枝温存の可能性も備えた有用なアプローチ法と思われた。
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