日本気管食道科学会会報
Online ISSN : 1880-6848
Print ISSN : 0029-0645
ISSN-L : 0029-0645
67 巻, 3 号
選択された号の論文の7件中1~7を表示しています
原著
  • 若山 望, 三枝 英人, 山口 智, 中村 毅, 小町 太郎, 門園 修, 愛野 威一郎, 粉川 隆行, 松岡 智治, 伊藤 裕之
    2016 年 67 巻 3 号 p. 201-208
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/06/25
    ジャーナル 認証あり
    混合性喉頭麻痺の病態診断は,原因となる病変の存在や,その進展範囲を知る上で診断的価値をもつ。しかし,諸検査の結果,未だに原因が不明な症例も存在する。今回,私たちが過去19年間で経験した混合性喉頭麻痺症例のうち,頭部MRIで占拠性病変や肥厚性硬膜炎などの器質的疾患が除外され,ヘルペス疹を認めず,また血清学的にも水痘帯状疱疹ウイルスと単純ヘルペス感染が完全に否定され,原因疾患が特定できなかった混合性喉頭麻痺症例のうち,発症2週間以内に当科を受診し,1年以上経過が追跡できた患者16名について後方視的検討を行った。検討項目は,脳神経麻痺の状態とその予後,前駆症状の有無,初診時の白血球分画,各種ウイルス抗体価のペアー血清,初診時の髄液検査である。混合性喉頭麻痺は,1例で対側視神経障害を合併していた。他は全例,頸静脈孔症候群を呈していた。脳神経麻痺の予後は全例が発症23カ月以内 (平均6.5カ月) にすべての神経障害が回復した。何らかのウイルス感染が示唆された8症例は,回復に平均8.5カ月と長期間を要したが,すべての検査で陰性であった7症例は,平均1カ月と明らかに回復期間が短かった。特にすべての検査で陰性であった症例の中には発症から11日以内にすべての神経障害が回復するという従来から言われていた末梢神経障害でのWaller変性に従う神経障害の回復過程よりも明らかに早く回復する症例も存在した。
  • 竹林 慎治, 谷上 由城, 中平 真衣, 林 泰之, 木村 俊哉, 暁 久美子, 池田 浩己, 三浦 誠
    2016 年 67 巻 3 号 p. 209-216
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/06/25
    ジャーナル 認証あり
    気管切開は,気道の管理のために,日常臨床でしばしば施行される手技であるが,必ずしも有益なことばかりではないため,必要がなくなれば速やかに閉鎖することが望ましい。今回われわれは,適切な気管切開孔の管理を行うために,2010年から2014年の期間に当科で気管切開を施行した162例を検討した。気管切開孔の閉鎖が可能であった症例は87例で,急性炎症に伴う症例はほぼ閉鎖可能であったが,閉鎖不可能だった症例には,腫瘍による狭窄や長期挿管,誤嚥性肺炎による症例が多かった。気管切開孔の閉鎖可能症例について検討すると,カニューレ抜去までの期間が長いと気管切開孔の閉鎖に時間がかかる傾向にあった。気管切開孔の作成方法は,皮膚と気管の縫合が多いと手術時間が長くなる傾向にあり,カニューレ抜去から気管切開孔閉鎖までの期間も長くなる傾向にあったが,長期に開存が予想される症例は,開窓術を選択することがよいと思われた。気管切開孔の閉鎖方法は,状態を考慮しながら,適宜選択することがよいと思われた。
  • 伊藤 恵子
    2016 年 67 巻 3 号 p. 217-223
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/06/25
    ジャーナル 認証あり
    睡眠時無呼吸症候群 (sleep apnea syndrome : SAS) 患者において,簡易検査と終夜睡眠ポリグラフ検査 (polysomnography : PSG) を施行し,両検査の間でAHI, AI, HIについて比較検討した。対象は,2011年4月から2015年9月までの4年6カ月の間に,睡眠呼吸障害随伴症状を主訴に当院耳鼻咽喉科を受診し,簡易検査とPSGの両者を施行した67例とした。SASの診断に関し,簡易検査のAHIは,PSGのAHIとの間で,重症では相関を認めたが (p<0.01),軽症~中等症では相関を認めなかった。またAIについては簡易検査とPSGとの間に相関を認めたが (p<0.01),HIについては相関を認めなかった。米国AASM (American Academy of Sleep Medicine) による分類で,タイプ3とタイプ4の簡易モニター機器によるAHIをPSGのAHIと比較したところ,タイプ3の方がよい相関が得られ,特異度も高かった。簡易検査にてAHIが低値の場合でもSASを完全には否定できないため,日中過眠症状の有無に加え,循環器疾患,脳血管障害等の合併に注意しながら,PSGを実施するかどうかを総合的に判断することが重要である。
症例
  • 弘瀬 かほり, 西窪 加緒里, 小森 正博, 兵頭 政光
    2016 年 67 巻 3 号 p. 224-229
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/06/25
    ジャーナル 認証あり
    外傷性神経腫は,末梢神経の切断端にできる良性の腫瘤性病変で,神経修復過程の異常により発生するとされる。今回われわれは,小児の声門下から頸部気管内に発生した稀な外傷性神経腫を経験した。長期にわたる気道管理と段階的手術により良好な結果を得ることができた。  症例は4歳,男児。出生時より喘鳴があり徐々に増強,2歳時に声門下狭窄を認めたため,気管挿管および気管切開を受けた。その後も,気管カニューレ抜去困難を呈し,4歳時に気管後壁粘膜下腫瘤による気管狭窄と診断した。気道管理を継続しつつ段階的気管形成術を予定した。11歳時に気管截開により気管内腔後壁に硬い粘膜下腫瘤を認めたため腫瘤摘出した。病理組織診断は外傷性神経腫であった。粘膜下腫瘤の再増大による気管狭窄をきたすため,3回の腫瘤切除術を追加して行った。呼吸困難症状がないことを確認して15歳時に気管切開口を閉鎖し,2年を経過したが経過良好である。
  • 後藤 理恵子, 印藤 加奈子, 森 照茂, 星川 広史
    2016 年 67 巻 3 号 p. 230-236
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/06/25
    ジャーナル 認証あり
    喉頭上皮過形成症は,病理組織学的に細胞異型を伴わない過形成からさまざまな程度の細胞異型を伴うものが含まれ,前癌病変ともされている。中には再発を繰り返す症例や治療が困難な難治症例も存在し,対応に苦慮することがある。今回,複数回の切除術を行うも再発を繰り返し,経過中に悪性化し喉頭摘出するに至った症例を経験したので報告する。症例は77歳男性,声帯白色病変の増悪を認め喉頭微細手術を施行した。病変は両側声帯および披裂間部にかけて存在し,可能な範囲で切除したが再発を繰り返し,6年間に計5回手術を施行した。いずれも病理結果は異形成および高度過角化であった。最終手術から1年2カ月後に両側声帯麻痺が認められたためCTを撮影したところ,喉頭後方を中心とした骨破壊を伴う陰影を認め,PET-CTでも悪性が強く疑われ喉頭摘出術を施行した。病理結果は扁平上皮癌であった。現在再発なく経過している。喉頭上皮過形成症では,細胞異型の程度によらず喉頭癌に準じた長期の経過観察が必要である。また,病変が粘膜下に浸潤増殖した場合には診断が遅れることがあり注意を要する。
  • 新田 美穂, 島田 英雄, 西 隆之, 小澤 壯治, 幕内 博康
    2016 年 67 巻 3 号 p. 237-241
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/06/25
    ジャーナル 認証あり
    食道癌術後残頸部食道は,異時性食道癌の発生リスクが高い。今回われわれは,内視鏡治療を施行した食道癌術後残頸部食道癌の1例を経験した。症例は71歳,男性。術前診断cT1b N0の食道癌に対し,右開胸開腹胸部食道全摘3領域リンパ節郭清胸壁前経路胃管再建術を施行した。病理組織結果は,moderately differentiated squamous cell carcinoma,pT1a-LPM,ly0,v0,pN0であった。術後4年8カ月の上部消化管内視鏡検査で,食道入口部から頸部食道胃管吻合部におよぶ4/5周性の0-IIb病変を認め,生検にてsquamous cell carcinomaと診断された。頸部食道の広範な病変であったため,アルゴンプラズマ凝固法 (APC) を施行した。5年間で計8回のAPCを施行し,良好な局所制御を得た。頸部食道は生理的狭窄部であり内視鏡観察が難しく,進行癌で発見された場合の手術や化学放射線療法は侵襲の大きな治療となる。食道癌術後残頸部食道の観察は,field cancerizationの観点から,常に異時性食道癌を念頭におく必要がある。食道癌術後残頸部食道癌は,早期診断と適切な内視鏡治療の選択が重要である。
用語解説
feedback
Top