日本気管食道科学会会報
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67 巻, 6 号
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原著
  • 加納 滋, 川崎 広時, 辻 裕之, 三輪 高喜
    2016 年 67 巻 6 号 p. 379-385
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/12/25
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    喉頭画像の記録方法は,テープに記録するアナログ方式から,ハードディスクにファイル形式で記録するデジタル方式に移行している。しかしながら,記録内容は動画像と音声のみである点に関しては変化はなかった。音声解析・音響解析によりさまざまな情報が得られるようになっているが,喉頭動画像記録とは別に行われ,その結果の保存に関してはもとのデータとの関連性を含めて保存しておく必要があり,ある程度の専門的な知識が要求される。通常の喉頭画像撮影時に記録される音声をリアルタイム処理し,解析結果をそのまま動画像内に描き込む方法を構築した。描き込む情報は,音階,基本周波数,基本周波数の標準偏差,PPQ,APQ,NNEa,HNR,パワースペクトル波形であり,撮影中のモニタで視認できるように約0.2秒 (6フレーム) ごとに更新した結果を描き込む。描き込まれた情報は画像の一部となるため,動画再生可能であればいつでも見ることができる。描き込まれるデータはテキスト形式でも出力されるため,二次利用も容易に行える。

  • 太田 俊介, 熊谷 洋一, 小林 宏寿, 山崎 繁, 河野 辰幸
    2016 年 67 巻 6 号 p. 386-391
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/12/25
    ジャーナル 認証あり

    はじめに:残食道胃管吻合部の縫合不全回避には,胃管血流が重要である。目的:術中ICG蛍光法での血流評価と,術後の胃管状況の相関性の検討。対象:2014年1月~2015年6月に,当科で施行した食道癌手術21例。方法:胃管を作成後,ICG蛍光法で胃管先端が造影されるまでの時間を計測。次に,術後6日目に内視鏡で胃管観察を行い,吻合部の状況と胃管吻合部付近の粘膜色調を3段階で評価した。結果:造影時間の中央値は20秒。胃管観察で,吻合部の白苔が全周性なのは4例 (A群),半周以上全周未満は6例 (B群),半周未満は11例 (C群) であった。造影時間の中央値はA群29秒,B群19秒,C群16秒で有意差はないが,A群で時間が長い傾向を認めた。また粘膜色調ではgoodは15例 (71.4%),slightly poor 6例 (28.6%),poor 0例 (0%) であった。造影時間の中央値はそれぞれgood 16秒,slightly poor 42秒で,有意にslightly poorで時間が延長した (p=0.003) 。結語:ICG蛍光法での胃管造影時間が術後の胃管状況と相関している可能性が示唆された。

  • 馬場 大輔, 西嶌 ちひろ, 藤井 良一, 小形 章
    2016 年 67 巻 6 号 p. 392-397
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/12/25
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    内視鏡による摂食・嚥下機能評価方法は摂食・嚥下評価の初期診断方法として用いられるが,兵頭スコアが普及することによって評価者間での評価の差が少なくなり,経時的な変化を簡便に評価できるようになった。しかし,耳鼻咽喉科一般医が専門医の診療を必要と判定する客観的な評価基準はなく,今回われわれは,客観的な評価基準の検討を行った。166症例について嚥下内視鏡検査での検討を行い, ①兵頭スコアで中等度 (5点) 以上,②咽頭後壁残留や逆流あり,③唾液貯留が2点以下の場合で喉頭に唾液の付着,のいずれかを認める場合に常食摂取が不可能か可能かについては,p<0.01,感度:0.97,特異度:0.92であった。①~③のいずれかを満たす症例では常食摂取が困難なことが多く,嚥下障害診療専門医へ依頼するためのスクリーニング検査として有用であると考えられた。

  • 長尾 明日香, 田中 加緒里, 弘瀬 かほり, 小森 正博, 兵頭 政光
    2016 年 67 巻 6 号 p. 398-405
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/12/25
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    高度の嚥下障害に対して,経口摂取の回復を目的とした外科的治療は有効な治療手段である。今回,われわれは2008年~2014年の間に嚥下機能改善手術を行った15例の術後経過を後方視的に検討し,手術適応と限界について考察を加えた。症例の年齢は43~87歳,男女比は12 : 3であった。嚥下障害の原因は脳血管障害が10例,加齢が3例,その他2例であった。嚥下機能は藤島らの摂食状況レベル評価法と兵頭らの嚥下内視鏡検査スコア評価法により評価した。摂食状況レベルは術後 (退院時,最良時,最終受診時) に有意に改善したが,高齢者では経過中に悪化がみられた。嚥下内視鏡検査スコアも術後 (退院時,最良時) には有意に改善がみられた。7例では経過中に嚥下内視鏡検査スコアが悪化したが,そのうちの6例では経口摂取は継続できていた。70歳代後半以降の高齢者では,ALDや認知機能の低下により手術効果が満足すべきものではなかった。手術後のリハビリテーションや療養支援プランは予め検討しておくべきと考える。

症例
  • 坂倉 淳, 牧本 一男
    2016 年 67 巻 6 号 p. 406-411
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/12/25
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    著者らは18年後に気管孔閉鎖に成功した稀な先天性特発性両側声帯麻痺正中位固定例を報告する。患者は生直後よりチアノーゼおよび両側声帯麻痺 (正中位固定) が認められ,生後4カ月で全身麻酔下に気管切開術 (開窓術) を受けた。当初は上気道炎,肺炎,腎疾患で小児科入院を繰り返し,この間,スピーチカニューレを使用し続けた。9歳時にテープによる気管孔縮小を試みた。以後はカニューレなしとなった。11歳時に気管孔部分閉鎖術を局所麻酔下に行い気管孔はさらに縮小し,2×4 mm大の小瘻孔となった。18歳に達した時点で,入院の上,オプサイト&絶縁テープで気管孔を一時的に完全閉鎖し,血液ガス分析,SpO2,フローボリューム検査などで呼吸機能を評価した。運動負荷も行った結果,概ね呼吸機能に問題がなく気管孔閉鎖可能と判断された。気管孔閉鎖術を局所麻酔下に実施した。気管孔左右からヒンジフラップをおこし正中で縫合し,皮弁を頭側と尾側から寄せて被覆した。術後呼吸困難はなく,SpO2および血液ガス分析にて著変なく退院となった。術後1年1カ月後の現在経過良好である。

  • 岡上 雄介, 庄司 和彦, 堀 龍介, 児嶋 剛, 藤村 真太郎, 奥山 英晃, 北野 正之
    2016 年 67 巻 6 号 p. 412-417
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/12/25
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    下咽頭に発生する腫瘍は発育・増大してくると突然に呼吸障害や嚥下障害をきたすものもある。今回われわれは下咽頭に基部を持つ有茎性腫瘍3例に対して経口的に摘出術を施行した。いずれの症例も初診時には腫瘍が食道に陥入しており,腫瘍の形態を把握することができなかった。摘出した腫瘍はいずれも可動性のあるソーセージ様の形態の腫瘍であり,喉頭に嵌頓すると突然に窒息する危険があるものであった。また1例は摘出後に脂肪肉腫であることがわかった。窒息の危険性や組織診断の点から,良性が疑われても摘出術の適応であると考えられた。

  • 江川 峻哉, 池田 賢一郎, 池谷 洋一, 櫛橋 幸民, 木村 百合香, 小林 一女, 嶋根 俊和
    2016 年 67 巻 6 号 p. 418-422
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/12/25
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    症例は85歳の男性。主訴は義歯の誤飲。前医にて頸部CTを施行した結果, 下咽頭から頸部食道に義歯が存在し, 上部消化管内視鏡検査にて摘出を試みるも困難であったため当院に救急搬送された。右梨状陥凹に義歯の一部が確認でき頸部CT 画像上, 義歯は頸部食道まで達していた。視診上右披裂部の浮腫を認め, 今後増悪することが予想されたため気管切開術を局所麻酔下に施行後全身麻酔とし, 電子内視鏡を用いながら彎曲型咽喉頭直達鏡を用いて義歯を摘出した。術後は下咽頭に一部粘膜損傷を生じたが明らかな穿孔所見を認めなかった。

  • 菊池 真維子, 中島 政信, 室井 大人, 高橋 雅一, 百目 木泰, 伊藤 淳, 山口 悟, 佐々木 欣朗, 石川 仁, 櫻井 英幸, 加 ...
    2016 年 67 巻 6 号 p. 423-428
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/12/25
    ジャーナル 認証あり

    食道癌salvage手術における,最も重要な予後因子はR0治癒切除とされる。これまではcT1-2のsalvage手術の治療成績が良好とされてきた。今回,食道癌に対して化学放射線療法を施行後,腫瘍の遺残および大動脈浸潤が疑われた症例に対し,大動脈ステント内挿術を施行してsalvage手術によるR0治癒切除が可能であった症例を経験したので報告する。

    症例は,68歳男性,胸やけおよび背部痛を自覚し,近医を受診した。精査の結果,食道癌の診断となり,化学放射線療法を施行した。化学放射線療法施行後も腫瘍の遺残が疑われたため,salvage手術の目的で当科紹介となった。当科での精査の結果,cT4 (大動脈) を疑う所見であり,手術の安全性を考慮し,大動脈ステント内挿術を施行し,食道癌手術を行った。大動脈ステントを挿入していたことで,大量出血をきたすことなく大動脈外膜の合併切除を施行した。病理結果では腫瘍の遺残は認めなかったものの,今後のcT4 (大動脈) が考慮される症例に対しR0治癒切除が可能となる治療戦略として検討されうるものであり,若干の文献的考察を交えて報告する。

  • 上吉原 光宏, 河谷 菜津子, 大沢 郁, 吉川 良平, 二宮 洋, 清水 公裕, 茂木 晃, 桑野 博行
    2016 年 67 巻 6 号 p. 429-438
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/12/25
    ジャーナル 認証あり

    上気道閉塞リスク合併患者の気管切開術後に気道狭窄に対してステント留置,手術,レーザー焼灼を行い治癒し得た症例を経験したので報告する。症例は30歳代前半,男性。肥満,小顎症あり。重症睡眠時無呼吸症候群のため耳鼻咽喉科にて扁桃摘出,咽頭形成術施行。咽頭浮腫対策として術後気管切開術施行。術後8日目に気管切開チューブ抜去。その後呼吸困難の増大あり,16日目CT上,気管切開術孔直上に狭窄を認め当科へ紹介された。気管支鏡にて肉芽増生を認めず,気管が変形・拘縮を起こし刀鞘状に変形。呼吸困難症状が増悪していたためカバー付き金属ステント留置後,手術施行 (頸部襟状切開,気管管状切除,気管形成術) 。頸部および咽頭浮腫対策のため術後気管内挿管とし術後4日目に抜管し,トラニラスト内服を開始し16日目に退院。その後,40日目に気管支鏡にて吻合部からの肉芽を認めたため経気管支鏡的レーザー焼灼を行った。ステロイド吸入およびトラニラストなどを開始し退院し,3カ月後に薬物治療を終了。その後8年8カ月健存中である。気管切開チューブの材質・形状が改良され,医原性合併症としての気道狭窄の頻度は減少傾向にあるが,その治療は決して容易ではない。治療は,薬剤,レーザー焼灼,気道拡張術,ステント留置,手術などがあげられる。気管の変形・拘縮などを認める狭窄の場合は,手術が必要である。

用語解説
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