日本気管食道科学会会報
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68 巻, 1 号
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原著
  • 野本 剛輝, 渡嘉敷 亮二, 平松 宏之, 許斐 氏元, 本橋 玲, 櫻井 恵梨子, 豊村 文将, 上田 百合, 庄司 祐介, 服部 裕之, ...
    2017 年 68 巻 1 号 p. 1-8
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/02/25
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    われわれは声帯内注入術をdouble-bent Cathelin needleを用いて行ってきた。他の注入方法と異なり外来にて表面麻酔下に患者の声を聴きながら行えることが利点であり,入院治療が困難な患者や頸部外切開を希望しない患者に有効である。われわれは自然回復が望めない片側声帯麻痺の患者に対して長期間作用型であるカルシウムハイドロキシアパタイト (RADIESSE®) を用いている。本製剤は他のカルシウムハイドロキシアパタイトとは異なり,あえて吸収されるように作られており,1年から1年6カ月効果が持続するといわれている。今回RADIESSE®による声帯内注入術の長期経過を検討した。

    発症後1年以上経過している片側声帯麻痺9例を対象とし,GRBAS評価,MPT,MFR,VHI-10で検討した。GRBAS評価のA (asthenic,無力性),S (strained,努力性),MPTとVHI-10は術後全例で改善していた。GRBAS評価のG (grade),R (rough,粗造性),B (breathy,気息性) とMFRは7例中6例 (85.7%) で改善していた。長期間効果が20カ月持続している例も散見された。また,過剰注入や注入部位を誤ったことによる声の悪化例はなかった。われわれは患者の声を聴きながら注入量を決めているためそのような例はなかったと考える。さらに注入後の3DCTを検討した。

  • 岡崎 慎一, 那須 隆, 岡崎 雅, 小池 修治, 欠畑 誠治
    2017 年 68 巻 1 号 p. 9-13
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/02/25
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    頭頸部癌は重複癌の頻度が高く,その中でも上部消化管に重複癌を認めることが多い。治療前のスクリーニング検査として,上部消化管内視鏡検査は広く行われるようになったが,治療後の上部消化管内視鏡検査の有用性については,まだ一定の見解が得られていないのが現状である。今回,頭頸部癌自験例を対象に治療後上部消化管内視鏡検査の施行実績と検査結果を検討した。対象は,平成19年から平成23年まで当科で一次治療を行い,1年以上経過を追うことができた頭頸部癌症例121例のうち39例。一次治療後,上部消化管に重複癌を認めたのは口腔癌が最も多く,口腔癌と下咽頭癌以外には上部消化管に重複癌を認めなかった。さらに,一次治療後に食道癌を認めた症例はいずれもフラッシャーであり,一次治療後EGDは,ハイリスクグループと考えられるフラッシャー症例については,できる限り行うべきと考えられた。

  • 中島 政信, 高橋 雅一, 室井 大人, 菊池 真維子, 井原 啓佑, 倉山 英豪, 伊藤 淳, 山口 悟, 佐々木 欣郎, 今野 渉, 平 ...
    2017 年 68 巻 1 号 p. 14-19
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/02/25
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    下咽頭・喉頭などの頭頸部癌や頸部食道癌に対する切除後再建の第一選択は遊離空腸移植であるが,胃管が選択される場合もある。当施設では吻合をより確実にするために,胃管再建に血管吻合を付加している。頭頸部癌重複食道癌あるいは頸部食道癌と診断し,胃管再建と血管吻合付加を行った9例を対象に手術成績の検討を行った。切除術後に3.5 cm幅の大彎側細径胃管を作成し,後縦隔経路で胃管を挙上。頸部吻合の後に胃管大彎の血管と頸部の血管での血管吻合付加を施行した。症例は下咽頭癌と胸部食道癌の同時性重複が2例,喉頭癌と胸部食道癌の同時重複が1例,喉頭癌と頸部食道癌の異時性重複が2例,頸部食道癌が4例であった。術式は咽頭喉頭食道切除が7例,咽頭喉頭温存・食道全摘が2例であった。手術時間 (中央値) は762分,出血量 (中央値) は845 gであった。縫合不全を根治的CRT後の1例 (11.1%) に認めた。全例で吻合部狭窄を認めず,術後12日 (中央値) で食事を開始し,術後27日 (中央値) で退院となった。遊離空腸再建の適応とならない頭頸部癌重複食道癌・頸部食道癌に対する大彎側細径胃管再建および血管吻合付加は,縫合不全や狭窄の可能性が少ない有用な術式であると思われる。

  • 春日井 滋, 赤澤 吉弘, 齋藤 善光, 阿久津 征利, 大戸 弘人, 井上 莊一郎, 肥塚 泉
    2017 年 68 巻 1 号 p. 20-25
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/02/25
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    局所麻酔下での気管切開術は,気管内挿管下と比して難易度があがり合併症も起こりやすいことが知られている。また気管内挿管下でも麻酔科医によって術中管理がされていないこともあり,手術の刺激に対する患者の体動や咳嗽反射などを経験する。われわれは,気管切開術における合併症の頻度や内容について局所麻酔下と気管内挿管下で比較した。また気管内挿管下において,麻酔科医による術中管理の有無による合併症の頻度や内容について検討した。2010年4月から2015年3月までに当科で施行した気管切開術204例を対象とした。204例中41例 (20.1%) に合併症を認めた。気管切開術施行時の状況別にみると,局所麻酔下の気管切開術は,気管内挿管下と比較して皮下気腫など早期合併症の頻度は有意に高かったが,気管孔肉芽など晩期合併症は有意に低い結果であった。気管内挿管下で麻酔科医の管理がない場合は,ある場合と比較して早期合併症に有意差は認めなかったが,気管孔肉芽など晩期合併症の頻度が有意に高い結果であった。気管切開術の合併症を減らすには,可能な限り気管内挿管を行い,さらに麻酔科医による術中管理下での施行が望ましいと考える。

  • 脇坂 仁美, 篠原 尚吾, 末廣 篤
    2017 年 68 巻 1 号 p. 26-31
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/02/25
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    1998年から2013年の15年間で,神戸市立医療センター中央市民病院において原発性副甲状腺機能亢進症 (PHPT) に対して手術を行った症例45例について臨床的検討を行い,術後の病理所見や長期予後での再発を検討することでfocused parathyroidectomy (FPTx) の妥当性を検討した。病理結果の診断は,腺腫が35例,過形成が9例,正常が1例であった。腺腫における画像診断率は超音波検査,MIBIシンチ,CTやMRIの検査をあわせることで,97.1%であった。腺腫においては術後高Ca血症の持続した症例は認めず,過形成の2例で術後4年以上経過してから高Ca血症を認めた。FPTxを施行した29例の術後病理は腺腫26例,過形成3例であった。これらのうち,術後i-PTHが一度でも上昇した症例は69.6%あった。持続してi-PTHが上昇していた症例は3例あったが,2例は慢性腎不全に伴う続発性副甲状腺機能亢進症と診断され,1例は切除腺以外の腺腫を疑い再検索したが,腫大腺を指摘しえなかった。高Ca血症の再発は1例もみられず,FPTxが妥当と考えた。

症例
  • 井上 真規, 小河原 昇, 折舘 伸彦
    2017 年 68 巻 1 号 p. 32-39
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/02/25
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    顆粒細胞腫は全身に発生する良性腫瘍であるが,喉頭への発生は少なく,また小児の症例は非常に稀である。今回,小児喉頭顆粒細胞腫の症例を経験したので報告する。症例は10歳女児で,5歳頃から嗄声を認め増悪していたが放置されていた。母親の虐待が判明し,10歳時に施設入所となった。その後感冒時に吸気性喘鳴が出現したため,前病院を受診し喉頭腫瘤を認め当科紹介となった。CT,MRI所見では喉頭後壁から気管後壁へ3cm大の腫瘤性病変を認めた。気管切開術,腫瘍生検術を施行し,顆粒細胞腫と診断した。喉頭截開による腫瘍摘出術を予定したが,腫瘍は両側披裂から第2気管輪まで進展し,輪状軟骨背尾側へ回り込んでいた。喉頭機能の温存目的で腫瘍部分切除術を行った。喉頭後壁に腫瘍の遺残を認めるが,術後4年経過し明らかな増大は認めていない。顆粒細胞腫は悪性転化は稀であるが腫瘍の大きさや断端陽性であることより,再増大だけでなく悪性転化の可能性も考慮しての長期的な経過観察が必要であると考えられた。

  • 内田 孝宏, 大隈 宏通, 奥田 祐亮, 清水 奈保子, 小川 裕行, 法華 大助, 田中 雄悟, 眞庭 謙昌, 中村 哲, 掛地 吉弘
    2017 年 68 巻 1 号 p. 40-45
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/02/25
    ジャーナル 認証あり

    症例は68歳男性,前医にて食道癌に対して食道亜全摘術,後縦隔経路胃管再建術を施行された。発熱,咳嗽,呼吸困難感を自覚し,精査にて,胃管壊死による胃管気管支瘻と診断され加療目的にて当院に転院となった。胸部CTにて,右肺の広範な無気肺と両側胸水貯留を認めていた。気管支鏡検査では右上葉支分岐部末梢より気道内に壊死性物質の流入を認めた。全身状態も不安定なため緊急手術となった。手術は第5肋間側方切開にて開胸した。胃管は壊死しており右中間気管支幹と交通していた。瘻孔部位の組織は脆弱であり縫縮は困難と判断,広背筋弁を採取し,縫着した。閉胸後に頸部食道瘻および腸瘻を作成し手術を終了した。術後,筋弁の生着を優先するために分離換気 (左片肺換気,右はPEEP 5cmH2Oのみ) を行い,状態を見ながら徐々にPEEP圧を上昇させ,術後7日目に両肺換気を開始した。術後125日目には有茎空腸再建術を行い,現在,転院し引き続き加療を行っている。胃管気管支瘻の加療は非常に複雑かつ困難である。今回,診療科の連携により良好な経過を経た1例を経験したので報告する。

  • 門屋 一貴, 田中 寿明, 的野 吾, 森 直樹, 日野 東洋, 西田 良介, 最所 公平, 赤木 由人
    2017 年 68 巻 1 号 p. 46-51
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/02/25
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    症例は66歳の女性。2014年6月,バセドウ氏病・バセドウ眼症の通院中に撮影された胸部単純X線写真にて縦隔の異常陰影を認めた。精査にて,食道裂孔ヘルニアを指摘され,当科紹介となった。上部消化管造影検査にて,胃の約2/3が食道裂孔より縦隔側へ脱出し,upside-down stomachを合併した傍食道型食道裂孔ヘルニアと診断された。手術は腹腔鏡下にて行った。食道裂孔に約5cmのヘルニア門を認め,胃・大網が胸腔・縦隔側に脱出していた。食道胃接合部の縦隔側への滑脱は認めなかった。脱出した胃・大網を腹腔内へ還納,ヘルニア門を縫縮したのち,胃上部を横隔膜に固定した。術後経過良好で,術後10日目に自宅退院した。術後1年4カ月経過した現在,再発なく経過良好で過ごしている。腹腔鏡手術で良好な結果が得られた傍食道型食道裂孔ヘルニアの1例を経験したので報告する。

  • 田中 英基, 塚原 清彰, 本橋 玲, 岡田 拓朗, 矢富 正徳, 武田 淳雄, 小島 理央, 小川 恭生
    2017 年 68 巻 1 号 p. 52-56
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/02/25
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    非反回下喉頭神経の若年性甲状腺乳頭癌に対して胸骨縦切開を併用した症例を経験したので報告する。症例は18歳女性,左頸部腫脹を主訴に受診した。頸部超音波検査にて甲状腺内にびまん性の微小石灰化を伴う腫瘤と頸部リンパ節転移を疑う所見を認めた。穿刺細胞診検査にてpapillary carcinomaと診断した。また,造影CTにて左内深頸,副神経,両側鎖骨下,上縦隔に多発する腫大したリンパ節を認めた。右鎖骨下動脈の走行異常も認め,非反回下喉頭神経の存在が示唆された。甲状腺癌cT2N1bM0,StageⅡであった。がん診療ガイドラインに基づき高危険度群とした。甲状腺全摘術,両側頸部郭清術および上縦隔郭清術を行った。リンパ節転移は縦隔内の深部まであり,胸骨縦切開を併用した。自験例では非反回下喉頭神経であるがゆえに,上縦隔の操作に際し反回神経に留意する必要がなく,喉頭麻痺を回避可能であった。術後は合併症なく経過した。術後補助治療として外来ヨード治療を併用した。現在1年が経過し,再発転移なく経過している。解剖異常を含めた術前診断が適切な治療方針の決定および合併症の回避に重要である。

用語解説
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