日本気管食道科学会会報
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68 巻, 3 号
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原著
  • 岡 愛子, 牧原 靖一郎
    2017 年 68 巻 3 号 p. 217-221
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/06/25
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    扁桃周囲膿瘍の治療として抗菌薬などによる保存的治療,穿刺もしくは切開排膿,全身麻酔下での即時膿瘍扁桃摘出術 (膿瘍扁摘) がある。治療が有効でない場合には深頸部膿瘍や縦隔炎などで致死的となることがあり注意が必要である。今回,造影CT所見と治療法の選択,臨床経過について検討を行った。対象は2013年1月から2016年4月に当院を受診し,造影CTで扁桃周囲膿瘍を認めた100例とした。CT軸位断で膿瘍腔の最大径を計測し,計測部位が口蓋垂末端よりも頭側にあるものを上極型,尾側にあるものを下極型とし,膿瘍径,喉頭浮腫の有無,治療法,治療期間を検討した。上極型の方が膿瘍径は大きかったが,喉頭浮腫は下極型で多かった。保存的治療とした症例は全例膿瘍径16 mm以下であり,膿瘍扁摘や穿刺・切開の症例と比較して小さかった。上極型では穿刺・切開で十分排膿可能であり,膿瘍扁摘により治療した症例と比較して治療期間が短く,最も多く選択された治療法であった。下極型では膿瘍扁摘と穿刺・切開で入院期間に差がなく,膿瘍径の大きな症例では確実な排膿が可能で再発防止になる膿瘍扁摘を選択した症例が多かった。

  • 本庄 需, 大野 慶子, 木村 百合香
    2017 年 68 巻 3 号 p. 222-227
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/06/25
    ジャーナル 認証あり

    わが国における高齢化は今後も比類なき増加が予想され,気管食道科医にも高齢者医療に対するさらなる理解が必要である。そこで高齢者専門急性期病院における過去10年間の気管切開術について検討を行った。

    症例は全117例,平均年齢は78.0歳であった。中気管切開術を基本術式として用いた。高齢者特有のリスクとして,喉頭低位や,頸部伸展困難,血管走行異常が多くみられた。術後,合併症発現率は16.2%であり,手術関連死はみられなかった。

    当科では,第一・第二気管輪以下での気管切開が困難な症例において,輪状軟骨鉗除による気管孔造設術 (輪状軟骨切開術) を行った。本報告での6例を含む過去30例の輪状軟骨切開術の報告における平均年齢は77.3歳で,合併症は1例で肉芽形成を認めるのみであった。自験例2例を含む4例で気管切開孔閉鎖に至った。輪状軟骨切開術に至った理由としては,喉頭低位が約半数を占め,高齢者特有のリスクとして認識する必要があると言える。

    今後高齢化に伴い,気管切開の適応症例においてもこれらの術前リスク因子がある症例の増加が予想される。個々の症例に適する術式の選択が重要である。

  • 藤田 紘子, 坂本 耕二, 上野 真史, 石川 徹, 新田 清一, 小川 郁
    2017 年 68 巻 3 号 p. 228-234
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/06/25
    ジャーナル 認証あり

    背景:甲状腺腫瘍に対して甲状腺葉峡部切除術を行った症例の一部では,術前のTSH値,FreeT4 (以下FT4) 値が基準値内であっても術後に甲状腺機能低下をきたすことがある。これらの症例では一生涯甲状腺ホルモン剤の内服が必要となり,患者の負担となる。術前に術後の甲状腺機能低下が予測できれば患者への術前説明の一助になる。今回われわれは甲状腺腫瘍に対して甲状腺葉峡部切除術を行った症例の術後甲状腺機能低下に対する予測因子につき検討した。対象と方法:甲状腺葉峡部切除術を行った症例のうち,術前TSH値,FT4値が基準値内であった170例において術後TSH値,FT4値の変動に影響を及ぼす因子を検討した。結果および考察:性別,年齢,病理学的所見,抗甲状腺抗体陽性の有無と術後TSH,FT4低下との間で有意な相関は認めず,術前TSH値,FT4値との有意な相関を認めた。特に術前TSH<2.0 μU/mlでは90%の症例で術後TSH値,FT4値が基準値内であるのに対し,術前2.0≦TSH≦5.0 μU/mlかつ,術前FT4≦1.0 ng/dlの場合では71%で術後FT4値が基準値未満となり甲状腺ホルモン補充療法を要する可能性が示唆された。

症例
  • 池谷 洋一, 江川 峻哉, 池田 賢一郎, 櫛橋 幸民, 古川 傑, 高橋 郷, 川口 顕一郎, 石橋 淳, 小林 一女, 嶋根 俊和
    2017 年 68 巻 3 号 p. 235-239
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/06/25
    ジャーナル 認証あり

    症例は61歳,男性。主訴は右頸部腫瘍。現病歴は1カ月前からのどの違和感がありCT検査を施行したところ右甲状腺の背側に腫瘍を認め他院に紹介された。精査の結果,反回神経鞘腫の疑いで摘出すると嗄声などの合併症が出現する可能性が高いと診断された。その後のどの違和感は改善したが,腫瘍の治療に関してセカンドオピニオン目的にて前医を受診したところ当センターでの手術を勧められ受診した。術前MRI画像から反回神経由来の神経鞘腫を疑い手術を行ったところ食道に発生した神経鞘腫で反回神経の食道枝由来と考えられた。食道神経鞘腫の中でも頸部食道に発生することはこれまでの報告からもまれであった。本症例では術前に実際の由来神経を診断することは困難であり食道神経鞘腫もまれではあるが存在するため鑑別診断の一つとして考慮する必要があると考えられた。

  • 佐分利 純代, 杉山 庸一郎, 板東 秀樹, 廣田 隆一, 久 育男, 平野 滋
    2017 年 68 巻 3 号 p. 240-244
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/06/25
    ジャーナル 認証あり

    食道穿孔を疑った,Zenker憩室に嵌入した魚骨異物症例を経験したので報告する。症例:52歳の男性。鯛のあら炊きを食べた後に咽頭痛が出現し,当院の救急外来を受診した。咽頭喉頭に異物を認めず,翌日CTにて頸部食道に食道壁外へ突出する魚骨を疑う高吸収域と,頸部気腫像を認めた。上部消化管内視鏡にて魚骨を摘出したが,異物による食道損傷を確認した。食道穿孔の可能性を疑い,頸部外切開による手術治療を行った。頸部膿瘍はみられず,術中造影にてZenker憩室と診断,憩室摘出術を施行した。術後嚥下障害はなく,経過良好である。異物誤飲においては,食道憩室への異物陥頓の可能性を念頭におく必要があり,また個々の症例に応じて,治療方法を考慮する必要がある。

  • 田邉 陽介, 岩田 義弘, 吉岡 哲志, 加藤 久幸, 櫻井 一生, 内藤 健晴
    2017 年 68 巻 3 号 p. 245-248
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/06/25
    ジャーナル 認証あり

    今回われわれは,長期間介在した気管支異物の1例を報告した。症例は1歳4カ月の男児で,主訴は長期間持続する咳嗽であり,前医で肺炎と診断されて治療を受けていたが,治癒しなかった。4カ月後に胸部CTで気管支異物と診断された。気管支鏡で異物を摘出した。異物はセロハンテープであった。気管支異物の診断が遅れた理由は,X線透過性異物であったことと初診医が気管支異物を疑わなかったことと考えられた。

  • 齋藤 大輔, 渡邊 健一, 天野 雅紀, 中目 亜矢子, 及川 伸一, 橋本 省
    2017 年 68 巻 3 号 p. 249-253
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/06/25
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    延髄外側に梗塞をきたした場合,延髄外側症候群あるいはWallenberg症候群といわれる多彩で複雑な病態を呈することが多く,単一の症状で発症する例は非常に稀であり,診断に苦慮することがある。今回われわれは嚥下障害のみで発症した延髄梗塞を経験した。症例は66歳男性,突然の嚥下困難を発症し4日目に当院を受診した。口腔咽頭所見では泡沫状唾液貯留,喉頭流入を認めるも,反回神経麻痺は認めず。頭頸胸部CTでは異常所見を認めなかった。入院3日目に脳MRIを撮影し延髄右外側梗塞の診断となった。病巣部位は疑核とCPG (中枢パターン形成器) を含む狭い範囲であり,このため嚥下障害のみを呈したものと考えられた。

用語解説
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