日本気管食道科学会会報
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68 巻, 6 号
選択された号の論文の7件中1~7を表示しています
原著
  • ―一時性麻痺と永続性麻痺についての考察―
    都築 伸佳, 佐々木 俊一, 遠藤 理奈子, 喜田 有未来, 阿部 実恵子
    2017 年 68 巻 6 号 p. 379-387
    発行日: 2017/12/10
    公開日: 2017/12/25
    ジャーナル 認証あり

    (背景) 甲状腺手術では解剖学的に反回神経の温存が問題となるが,神経を温存しても術後反回神経麻痺となる症例がある。 (対象・方法) 2010年12月から2015年11月に足利赤十字病院耳鼻咽喉・頭頸部外科で甲状腺手術を施行し,術中に反回神経を温存した延べ151例 (女性125例),164手術側を対象とし,診療記録を後ろ向きに調査し,リスクを検討した。術後反回神経麻痺を一時性麻痺と永続性麻痺に分類した。 (結果) 一時性麻痺は10例 (6.6%),永続性麻痺は8例 (5.3%) であった。両側反回神経麻痺症例はなかった。病理診断は,麻痺なしで良性82例,悪性51例,一時性麻痺で良性4例,悪性6例,永続性麻痺で良性1例,悪性7例で,麻痺と有意な関連を認めた (p<0.05) 。平均出血量は,麻痺なし29.8 g,一時性麻痺53.2 g,永続性麻痺81.3 gで,有意差を認めた (p<0.01) 。平均手術時間は,麻痺なし123.6分,一時性麻痺124.3分,永続性麻痺218.0分で,有意差を認めた (p<0.05) 。出血量,手術時間とも麻痺なしと永続性麻痺に有意差があった。術前CT (水平断) による甲状腺葉サイズは,有意差はなかったが,一時性麻痺で高い値を示した。 (まとめ) 一時性麻痺では,甲状腺サイズが大きく,永続性麻痺では,悪性病理診断率が高く,術侵襲度も大きい特徴があった。

  • 井原 遥, 宮本 真, 熊澤 博文, 岩井 大
    2017 年 68 巻 6 号 p. 388-395
    発行日: 2017/12/10
    公開日: 2017/12/25
    ジャーナル 認証あり

    日常診療の中で気管切開術後やガス産生菌感染症などで,頸部皮下気腫や縦隔気腫を認めることはある。しかし,その原因の一つに歯科治療があることはほとんど知られていない。今回,われわれは歯科治療後に顔面・頸部皮下気腫および縦隔気腫をきたした症例を経験したので報告する。

    症例は21歳,男性。主訴は右眼瞼および頬部の腫脹。近医歯科にて右上顎小臼歯,歯根部膿瘍の治療後に,右眼瞼および頬部を中心とする顔面腫脹を認め,近医耳鼻科より紹介となった。触診上両側頸胸部に握雪感を認め,頸胸部単純CTにて側頭部から顔面,頸部,縦隔に至る広範囲な気腫を認めた。入院の上,絶飲食として抗菌薬による点滴加療を行い,保存的加療にて軽快した。局所処置に用いた歯科用エアータービン,エアーシリンジによる圧縮空気の軟部組織への送気が原因で,顔面・頸胸部皮下気腫および縦隔気腫が生じたと考えた。歯科治療でエアータービンが使用される機会は多いが,気道狭窄から致死的になる可能性があることを,われわれ医科領域でも念頭におき,今後診療に当たる必要があると考えられた。

  • 真栄田 裕行, 安慶名 信也, 金城 秀俊, 上里 迅, 平川 仁, 鈴木 幹男
    2017 年 68 巻 6 号 p. 396-402
    発行日: 2017/12/10
    公開日: 2017/12/25
    ジャーナル 認証あり

    甲状腺未分化癌は極めて予後不良な疾患として知られており,治療の有無にかかわらず確定診断後1年以上の生存を見ることはまれである。近年新たな治療法としてレンバチニブやソラフィニブ等の分子標的薬が登場したが,現状では手術が根治治癒の期待できる第一選択であることに変わりはない。2012年甲状腺未分化癌コンソーシアムにおいて,未分化癌に関する予後規定因子およびそれに基づいた個別化治療指針が提唱された。今回当科で経験した未分化癌症例の治療と,コンソーシアムにおける治療指針がどの程度合致するか検証した。その結果,個別化治療指針の内容はかなりの程度で許容できるものであり,未分化癌治療方針決定の一助となり得ると思われた。ただし現状の予後不良因子該当数のみですべての治療方針を決定するのは困難であり,実際には患者ごとの検討が必要であることは言うまでもない。

症例
  • 中村 努, 太田 正穂, 鬼澤 俊輔, 濱野 美枝, 石多 猛志, 毛利 俊彦, 平井 栄一, 片桐 聡, 新井田 達雄, 廣島 健三
    2017 年 68 巻 6 号 p. 403-408
    発行日: 2017/12/10
    公開日: 2017/12/25
    ジャーナル 認証あり

    食道粘膜下腫瘍のうち比較的稀な食道囊腫の1例を経験したので報告する。症例は43歳男性で人間ドックの上部消化管内視鏡検査にて食道粘膜下腫瘍を指摘され,精査加療目的に当院へ紹介された。既往歴は20歳代に肺囊胞の破裂による気胸で両側とも開胸手術を受けていた。胸部X線検査で左下肺野に陰影を認めた。内視鏡検査では下部食道左壁に1/3周を占める隆起性病変で内腔が透見されEUSで低エコー均一であった。腫瘍は径5 cmありCTでlow density, MRIのT1T2強調画像にて高信号で隔壁があり食道囊腫と診断した。手術は左開胸開腹で行い腫瘍は下縦隔に存在し横隔膜,肺および心囊と癒着しており剥離した。囊腫の口側と肛門側で食道をテーピングした後,腫瘍と食道筋層を分けていき破裂することなく摘出できた。食道粘膜は損傷しなかったが膨隆し食道筋層が約1/3周欠損となったため,胃底部を食道筋層に縫合した。術後経過は良好で10日目に退院となった。囊腫の内容はやや混濁した黄褐色の液体であった。病理検査で囊腫内腔は線毛上皮および非角化扁平上皮で覆われduplication cystの診断であった。食道囊腫の診断および治療に関して最近の知見を含めて報告する。

  • 谷上 由城, 本多 啓吾, 三浦 誠, 山田 光一郎, 木村 俊哉, 中平 真衣
    2017 年 68 巻 6 号 p. 409-413
    発行日: 2017/12/10
    公開日: 2017/12/25
    ジャーナル 認証あり

    類上皮肉腫はまれで予後不良な軟部肉腫であり,頭頸部に発生するのは非常にまれとされている。今回,われわれは頭頸部に発生した類上皮肉腫の1例を経験したので報告する。症例は50歳男性。右鎖骨上窩の腫瘤が徐々に増大するとのことで当科を受診。穿刺吸引細胞診は悪性を示唆したが,PET/CT検査で原発巣は不明であった。原発不明癌頸部リンパ節転移とし,診断もかねて頸部郭清術を施行した。腫瘤は胸鎖乳突筋と強固に癒着しており合併切除した。組織診ではrhabdoid細胞を伴う悪性腫瘍であるとされたが,免疫染色検査でINI1蛋白が陰性であったことから類上皮肉腫と診断した。術後化学放射線療法を受け,治療後5年経過したが再発は認めていない。

  • 太田 俊介, 野口 典男, 小林 宏寿, 山崎 繁
    2017 年 68 巻 6 号 p. 414-421
    発行日: 2017/12/10
    公開日: 2017/12/25
    ジャーナル 認証あり

    はじめに: Emergency room (ER) では,外傷患者に縦隔気腫を認めることがある。縦隔気腫は早期診断,適切な治療を行わないと重症な経過をたどる危険性がある一方で,ERに搬送された外傷患者では,他の重症疾患を併発していることも多く,限られた状況で診断および治療が求められる。目的:ERに救急搬送された外傷性縦隔気腫症例の検討。対象:2013年10月~2014年11月に,ERに搬送された外傷性縦隔気腫症例4例。症例:症例1は転落外傷。内視鏡検査で食道筋層に達する裂傷あり,頸部からのアプローチで洗浄ドレナージを施行。症例2は交通外傷。第3病日に発熱,炎症反応の増悪を認めCTで縦隔気腫,膿瘍形成。頸部アプローチでの洗浄ドレナージを施行。症例3も交通外傷。CTにて縦隔気腫を認めるも,精査で食道/気道損傷は否定され,保存加療とした。症例4は,嘔吐後に転倒し,ER搬送。CTで縦隔気腫を認めた。精査で,糖尿病ケトアシドーシスによるものと診断し,保存加療とした。いずれも軽快退院された。結語:ERで認める外傷性縦隔気腫症例でも,あらかじめ決められたプロトコールに従い,可及的速やかに詳細な評価を行い,それに基づいた治療選択をすることで重症化することなく治癒できると考えられた。

用語解説
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