当科における乳幼児吸気時喘鳴症例について検討を行った。原因は,従来の報告同様喉頭軟弱症が最も多く,そのうち21.4%では声帯運動障害や舌根嚢胞等,他の気道狭窄所見(secondary airway lesions: SALs)を合併していた。SALsは喘鳴の重症度や予後にも影響するため,重症例やSALsを疑う症例では,外来での喉頭内視鏡検査に加え,全身麻酔下喉頭直達鏡検査等を追加して正確な診断を行う必要がある。また背景疾患,挿管歴,低出生体重はrisk factorであった。問診では,これらの既往に加えて喘鳴タイプ(吸気性/呼気性/二相性,急性/慢性)や発症時期,喘鳴を生じる場面や程度,嚥下障害の有無等を十分に把握することが適切な診断および治療法選択には不可欠である。乳幼児は解剖学的・生理学的に気道狭窄をきたしやすく,短期間で重篤になりやすい特徴があることを認識し,迅速な診断かつ対応を行う必要がある。
喉頭摘出患者における永久気管孔狭窄は,生命の維持およびADLに直接影響する。今回われわれは永久気管孔狭窄をきたした症例に関して検討を行った。対象は2005年4月から2016年12月までに喉頭摘出を含む手術を行った頭頸部癌患者107例である。これらのうち永久気管孔に狭窄をきたした症例は18例(16.8%)であった。狭窄症例と非狭窄症例において,術式および切除組織の差は認めなかった。術後合併症としては頸部皮弁先端の壊死症例が狭窄群において有意に多かった。すべての症例で治療として気管孔開大術が行われており,全例で自覚症状の改善が得られ,カニューレ留置不要な状態となっていた.大きさが安定するまでに必要となった手術回数は1回: 13例,2回: 3例,3回: 2例であった.開大術式はZ形成およびV-Y形成を組み合わせた方法が基本として行われており,再狭窄をきたさなかった症例の形成部位は平均2.46カ所であったのに対して,再狭窄をきたした症例では平均1.20カ所であった.永久気管孔狭窄を予防するためには気管孔周囲の皮弁血流が重要である。また,狭窄をきたした場合は気管孔開大術が有効であるが,再狭窄を予防するためには複数カ所の形成を行うのが望ましいと考えられた。
われわれは,類白血病反応を呈した稀な椎前間隙膿瘍の1症例を経験したので報告する。症例は78歳の男性で,呼吸苦と気管食道廔の部分からの出血と排膿であった。CTでは椎前間隙の部分にair像を認め,採血データは白血球数が51,800/μl,芽球0.5%,骨髄球2.5%,後骨髄球2.5%を含んでいて,CRP 9.736 mg/dlであった。外科的切除術と多剤の抗生剤(SBT/ABPC, Metronidazole, MCFG)にて加療した。術後10日に,38.6度の高熱と採血データの悪化(白血球数が181,000/μl,好中球が125,000/μl)を認めた。抗生剤をTEIC, DRPM, FOM, PZFXに変更して治療した。抗生剤の治療中に,血液内科に相談し,BCR-ABLの変異を精査したが,認めなかった。さらに血液培養で緑膿菌が検出され,IL-6も上昇していたため,慢性白血病ではなく,類白血病反応と診断した。約1カ月後,類白血病反応の白血球数や他の採血データも正常範囲内に改善していた。
CHARGE症候群はCHD7遺伝子変異が主因の多発奇形症候群である。乳幼児期に呼吸状態の悪化を認め,気管切開を要することも少なくない。当施設で治療を行った症例について検討を行った。対象は過去20年間に当センターに入院したCHARGE症候群16例であり,気道病変の病型,気管切開の有無・期間などを後方視的に検討した。結果,長期呼吸管理を要したのは11例(68.8%)であり,内訳は気管喉頭軟化症が7例,上気道狭窄(詳細不明)が2例,声門下狭窄1例,両側声帯麻痺が1例であった。治療は,気管切開が7例,非侵襲的換気療法が3例に施行された。気管切開孔の閉鎖は3例で施行されており,気管切開の閉鎖時年齢はそれぞれ,11歳6カ月,12歳1カ月,16歳2カ月であり,気管切開の維持期間はそれぞれ,11年4カ月,11年7カ月,15年8カ月と長期にわたっていた。考察だが,CHARGE症候群では気道狭窄病変や呼吸器感染症が生命予後を決定する一因となるが,成長発達により気管孔を閉鎖できるケースもある。耳鼻咽喉科医が長期にわたり気道管理に関わっていく重要性は高いと考える。
症例は57歳男性。咳喘息で通院中,37.8℃の発熱のため受診,胸部レントゲンで左上肺野浸潤影を認め入院となる。入院時採血で末梢血中好酸球数増加(3255/μl)を認め,胸部CTで気管支区域に一致しない間質性陰影を認めた。気管支鏡検査で気管に白苔を伴う隆起性病変を認め生検,組織診は好酸球性潰瘍で血管炎所見は認めなかった。左上葉の気管支肺胞洗浄液(BALF)中好酸球分画92%,経気管支肺生検(TBLB)組織診では著しい好酸球浸潤を認め,血管炎所見は認めなかった。喀痰培養およびBALF培養でAspergillus fumigatusを検出したが,血中β-D-グルカン値やガラクトマンナン抗原は陰性だった。好酸球性肺炎の診断でステロイド治療をおこなった。肺野陰影,血中好酸球数ともに速やかに正常化,気管潰瘍も消失した。咳喘息発症前と好酸球性肺炎発症後で血清中アスペルギルス特異的IgE抗体の陽性化を認め,アスペルギルスに対する感作が好酸球増多に何らかの影響を及ぼした可能性が疑われた。