日本気管食道科学会会報
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70 巻, 5 号
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特集:気管食道科領域における好酸球性疾患
総説
  • ─喘息抗体医薬からみえてきた病態─
    權 寧博, 福田 麻佐美, 山田 志保, 黒澤 雄介, 丸岡 秀一郎
    2019 年70 巻5 号 p. 315-319
    発行日: 2019/10/10
    公開日: 2019/10/25
    ジャーナル 認証あり
    電子付録

    生物製剤の登場により,気管支喘息や副鼻腔炎を始めとする気道炎症の治療は,病態生理に基づいてエンドタイプを同定し,病態に合致した適切な薬剤選択により有効性を高めるprecision medicineを実行する必要がある時代に入った。ILC細胞の発見により,Th2細胞を中心に理解されてきた喘息や副鼻腔炎の好酸球性炎症の免疫学的多様性の機序がより明確となり,IgEやIL-5,IL-4/13の抗体製剤の使い分けにもこのような概念が導入され,その薬剤機序が説明されるようになった。好酸球性炎症は喘息の基本となる病態であるが,アレルゲンを介したI型アレルギーに起因するもの,Th2細胞の活性化に由来するもの,また,ILC2の活性化に由来するものと,発生機序には多様性があり,その背景には喘息の発症と深く結びつく免疫学的機序の違いがあるが,これらの概念を理解して薬剤選択に活かしていくことは,今後のこの領域の治療においてはより重要になってくる。本稿は,好酸球性気道炎症の病態の多様性について診療に活用できるよう理解を深めることを目的としている。

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  • 黒野 祐一
    2019 年70 巻5 号 p. 320-325
    発行日: 2019/10/10
    公開日: 2019/10/25
    ジャーナル 認証あり

    耳鼻咽喉科領域の代表的好酸球性炎症としてアレルギー性鼻炎,好酸球性副鼻腔炎,好酸球性中耳炎がある。アレルギー性鼻炎では好酸球は遅発相の鼻閉に関与し,好酸球から放出されるケミカルメディエーターやサイトカインによってもたらされる。好酸球性副鼻腔炎は両側性で粘稠な鼻汁と鼻茸を伴い,篩骨洞優位の病変を認め,内視鏡下鼻内副鼻腔手術後に再発を繰り返し難治性の疾患である。Th2型サイトカインであるIL-4やIL-5,IL-13,ペリオスチンによって好酸球浸潤がもたらされ,好酸球の細胞死であるextracellular trap cell death(ETosis)が粘稠な鼻汁の形成に関与すると考えられている。好酸球性中耳炎も難治性の疾患で好酸球浸潤が著明なニカワ状の中耳貯留液を認め,感音難聴をきたす。その発症機序は好酸球性副鼻腔炎と類似している。これらの好酸球性疾患はいずれも気管支喘息を合併することが多く,その治療に際しては呼吸器内科との連携が重要である。

  • 堀口 高彦
    2019 年70 巻5 号 p. 326-333
    発行日: 2019/10/10
    公開日: 2019/10/25
    ジャーナル 認証あり

    好酸球は,広範囲の臓器における炎症反応の病因に関与する多機能白血球である。好酸球性呼吸器疾患には,組織または末梢血好酸球増加症と関連する多様な疾患が含まれる。原発性好酸球性呼吸器疾患には,単純性肺好酸球増加症,急性好酸球性肺炎,慢性好酸球性肺炎,好酸球増多症候群,および好酸球性気管支炎が含まれる。好酸球増加症は,アレルギー性気管支肺アスペルギルス症,気管支中心肉芽腫症,または寄生虫感染症もしくは真菌感染症を有する患者において,ならびに薬物または毒素に対する反応として二次的に起こり得る。さらに,好酸球増加症は,アレルギー性肉芽腫症など血管炎患者に見られることがある。喘息はしばしば併発しており,必要条件であり得る。軽度の好酸球増加症が他の呼吸器疾患(肺癌,肺線維症,およびマイコバクテリア感染症など)に関連することがあるが,好酸球増加症との関連は軽微であり,その経過に影響しないため,これらは一般的に好酸球性肺疾患とは見なされない。本稿ではさまざまな好酸球性呼吸器疾患の,特徴的な臨床的,組織学的,および放射線学的所見について概説する。

  • 藤原 靖弘
    2019 年70 巻5 号 p. 334-340
    発行日: 2019/10/10
    公開日: 2019/10/25
    ジャーナル 認証あり
    電子付録

    好酸球性食道炎(EoE,eosinophilic esophagitis)は食物のつまり感や嚥下困難があり,生検にて上皮内好酸球が高視野で15個以上浸潤する慢性アレルギー疾患である。以前はプロトンポンプ阻害薬(PPI,proton pump inhibitor)が有効な類似症例はPPI反応性食道好酸球浸潤(PPI-REE,PPI-responsive esophageal eosinophilia)とされていた。しかしながら,さまざまな研究により病態がほぼ同一であることが判明し,最新の国際ガイドラインではEoEの診断基準にPPI反応性の有無は問わないとされた。EoEは本邦では稀とされてきたが,最近その有病率は徐々に増加傾向にある。特に健診などで偶然見つかる症例も多い。EoEの病態は遺伝的素因に加えて環境因子が重要とされる。食物抗原や吸入抗原に対するTh2型アレルギー反応であり,主としてTSLP,IL-13,eotaxin-3による好酸球浸潤を主体とする粘膜炎症相とTGF-b1やperiostinによる粘膜下層の線維化相に分けられる。治療は約2/3の症例でPPIが有効であり,PPI無効症例のほとんどはステロイド嚥下療法が有効である。海外では6種除去食療法,狭窄例に対するバルーン拡張術,難治例に対する生物学的製剤が報告されている。

  • 近藤 光子
    2019 年70 巻5 号 p. 341-347
    発行日: 2019/10/10
    公開日: 2019/10/25
    ジャーナル 認証あり

    全身性好酸球性疾患には好酸球性多発血管炎性肉芽腫症(eosinophilic granulomatosiswith polyangiitis; EGPA)と好酸球増多症候群(hypereosinophilic syndrome;HES)が含まれる。1500/μl以上の末梢血好酸球増多が長期間持続すると不可逆的な臓器障害をきたしてくる。EGPAは気管支喘息や好酸球性副鼻腔炎が先行し,末梢血好酸球の著明な増加とともに全身諸臓器の好酸球性炎症と血管炎症状(臓器虚血)を特徴とする。約40%にp-ANCA陽性を認め,血管炎症状は全身症状に加え,多発性単神経炎,紫斑,心障害,消化管虚血,pauci-immune型壊死性糸球体腎炎などが含まれる。病態生理はTh2型炎症,好酸球由来の顆粒蛋白による組織障害,肉芽腫性血管炎である。主たる治療はコルチコステロイドで,血管炎に対してシクロフォスファミドを用いる。末梢神経障害にはγ-グロブリン大量療法が行われる。最近,抗IL-5抗体が再燃や治療抵抗性例に効果を示すことが示された。生命予後は比較的よいが,心病変は死因になる。HESではWHO分類に基づき,好酸球がクローン性に増加している場合,PDGFRAPDGFRBFGFR1遺伝子などの検索を行う。変異陽性例ではチロシンキナーゼ阻害薬が奏効する。

用語解説
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