喉頭画像・音声・声の基本周波数・音響解析結果等を時間軸を一致させて記録保存し結果を二次利用することが,誰でも簡単に行えるようになった。検査をする側の技術的な問題は解決されたため,次に,検査の説明を受ける側(被検者,家族,医療関係者,医師等)の環境整備が必要と考えられた。喉頭動画像および解析結果(声の基本周波数,音響解析結果等)を,各個人が自由に同時にリアルタイムに見られるようにしておく必要がある。今回われわれは,インターネット関連技術のWebRTCとH.264等を用いることにより,一般的に使用されているWi-Fiを用いて,iOS, Androidいずれの携帯端末が混在している環境でもリアルタイムに動画像が共有できることを確認した。
在宅医療は第3の医療と呼ばれる。寝たきりの患者からがん終末期患者など,第3の医療を必要とする患者は増加傾向にある。第3の医療に対する社会の要望に応えるために複数の病院・医院・訪問看護ステーションなどが緊密に連携・協力し,各々が相互補完を図り,管理を行う時代になった。しかしながら,「特定行為に係る看護師の研修制度」施行以降,看護師による診療の補助が制限され,気管カニューレの事故抜去など患者が生命の危機に瀕する事態に発展する事例が散見される。このような事態に陥る背景には,特定行為に係る看護師の研修制度に対する解釈の誤認があるように思われる。第3の医療の要望は医師のみで対応することには限界があり,看護師による診療補助は重要なマンパワーである。同時に第3の医療を担う医師の技術の維持,向上の機会も求められてきた。われわれは専門技術の指導・教育を行い,その技術を獲得,維持して頂くことを目的として出張・出前技術指導を行っている。第3の医療の要望に応えるわれわれの取り組みを紹介させて頂く。
2012年11月から2015年8月までに日本赤十字社和歌山医療センターでFNAを行った症例のうち,鑑別困難であった甲状腺腫瘍149例について後方視的に検討を行った。
68例(45.6%)で手術が施行され,68例中29例(42.6%)が悪性であった。悪性では乳頭癌が,良性では腺腫様甲状腺腫,続いて濾胞腺腫が頻度の高い組織型であった。FNA再検は80例で施行された。再検にて悪性疑い/悪性となった7例全例で手術が施行され,6例が悪性であった。再検にて良性となった症例のうち7例で手術を施行され,そのうち3例が悪性であった。
最終的に45.6%で手術が施行され,そのうち42.6%で悪性であった。FNA再検で良性であっても悪性を完全に否定することは不可能であり,手術をしない場合でも慎重な経過観察が必要である。
甲状披裂筋麻痺,いわゆる内筋麻痺とは部分的喉頭麻痺の一つで,比較的稀な病態とされている。一般的に,気息性嗄声を示し,喉頭内視鏡所見では声帯の内転外転運動は正常であるが,患側声帯の弓状弛緩と発声時の声門間隙を認める。確定診断には喉頭筋電図が必要とされている。今回われわれは,挿管後の気息性嗄声を主訴に当科を受診し,喉頭筋電図により甲状披裂筋麻痺と診断できた4症例を経験した。4症例中3症例は右側,1症例は左側の麻痺であった。喉頭内視鏡所見は声帯の内転外転運動は正常であるが,患側声帯の弓状弛緩を認めた。喉頭筋電図にて,患側の内筋で筋放電の消失を認め内筋麻痺と診断した。4症例全例内服加療を行わずに経過観察とし,2カ月から4カ月(平均3カ月)で自然軽快した。内筋麻痺は喉頭筋電図で診断をして,基本的には経過観察のみで回復すると考える。
熱傷患者が救急搬送された際,気道熱傷の有無は治療方針を決定づける重要な指標の一つとなる。鼻毛の焼失や煤の付着などが気道熱傷を疑う所見となるが,咽喉頭内視鏡による観察が確定診断を行う方法として信頼度が高い。気道熱傷所見に乏しく,気道狭窄のリスクが低いと考えられる場合でも,その後の粘膜腫脹により緊急気道確保が必要となる場合があるため,慎重な経過観察が必要となる。今回,われわれは高温のラジエータ液による顔面頸部熱傷受傷時には気道熱傷所見が確認できなかったものの,時間経過とともに,限局性の咽喉頭浮腫をきたし,緊急気道確保を要した症例を経験した。気道狭窄が遅発性に発生した要因として,気道熱傷による急激な咽喉頭浮腫ではなく,顔面頸部熱傷後の全身性の体液移動(以下,fluid shiftとする)により,咽喉頭粘膜の中でも組織圧が低い部位の限局性の浮腫が発生したと考えられた。緊急気道確保後,7日程度で全身状態は改善し,咽喉頭浮腫も消失したため抜管された。気道熱傷の可能性が考えにくい症例についても,顔面頸部熱傷からfluid shiftによる遅発性の咽喉頭浮腫をきたす場合もあるため,慎重な経過観察が必要であると考えられた。
従来の気管切開の管理では気管腕頭動脈瘻のリスクが高い脊椎変形症例に対し,気道確保の術式の工夫を行い良好な臨床経過であった2症例を経験したので報告する。症例1は側弯症の進行による気管軟化症例。気管狭窄解除の目的に胸骨U字状切除術を行い,誤嚥防止目的に喉頭中央部切除術を同時に行った。症例2は円背での腕頭動脈高位例。声門癌を発症し,症状緩和目的に輪状軟骨開窓術を行った。両術式は低侵襲かつ安全に施行可能であった。
小児気管支異物は,急性期症状が見逃された場合,難治性肺炎として治療されることがある。さらに異物反応の慢性化に伴い摘出に難渋する。今回われわれは,滞留期間の違いで治療経過の異なる小児気管支異物の2例を経験した。症例1は1歳2カ月女児。節分豆を誤嚥した直後から24時間以内に診断・摘出し,良好な経過をたどった。症例2は1歳7カ月男児。持続する咳嗽から肺炎を疑われ,近医で2週間治療され,後の病歴聴取からアーモンドチョコレートの誤嚥が契機だったと判明した。泣き止まないことを主訴に総合病院救急外来を受診し胸部CTで縦隔気腫,頸胸部皮下気腫,左主気管支の陰影と左肺野過膨張を認め,気管支異物が疑われ,当院へ救急搬送され緊急手術となった。硬性気管支鏡で異物の同定が困難なため気管切開術を施行した。経気管孔的に鼻咽腔内視鏡を挿入したが,気管内の炎症が強く異物を摘出できなかった。全身管理と抗菌薬による肺炎治療を行い,硬性気管支鏡下で異物を摘出し救命しえた。長期滞留の影響で気管内の炎症が強い場合,複数回の手術も視野に入れた治療選択を検討すべきと考えた。