日本気管食道科学会会報
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71 巻, 3 号
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原著
  • 鈴木 啓誉, 中村 一博, 三浦 怜央, 釜谷 まりん, 大島 猛史
    2020 年71 巻3 号 p. 239-244
    発行日: 2020/06/10
    公開日: 2020/06/25
    ジャーナル 認証あり

    内転型痙攣性発声障害 (ADSD) の治療法として甲状軟骨形成術2型 (TP2) がある。手術に使用されるチタンブリッジは2017年12月に初めて医療機器として承認された。また手術手技は喉頭形成術 (甲状軟骨固定用器具を用いたもの) K400-3として保険診療に収載され,全国の医療機関で施術が可能となった。当科では全国でもいち早く2018年7月の保険診療に収載された後より7症例に対して手術を施行した。術前および術後の音声所見および音響分析の結果を提示しつつ,その手術経験について報告する。VHI,GRBAS評価,Mora法および音響分析の結果はいずれも術前と比較して,術後有意に改善していたことが示された。術後に重篤な有害事象は認めなかった。TP2の利点は局所麻酔下に音声をモニタリングをしながら手術を施行でき,術後不具合が生じた際に再調整が可能な可逆性があることである。長期的な治療効果について既報でも明らかになっており,自験例においては観察期間が短期であるため,引き続き経過観察を行っていく所存である。前述した良好な治療成績や保険診療に収載されたことで,TP2がより一般的なADSDの外科治療として全国に広まると予想される。

  • 増山 敬祐, 宮崎 恭子, 石井 裕貴
    2020 年71 巻3 号 p. 245-250
    発行日: 2020/06/10
    公開日: 2020/06/25
    ジャーナル 認証あり

    気管食道瘻発声いわゆるシャント発声は,音声獲得率が高く,喉頭摘出後の代用音声として欧米では広く普及している。特別な訓練を必要とせず,自然な発声のため日本でも徐々に広まりつつある。また,頭頸部癌も高齢化している現在,代用音声の選択肢となりうるのではないかと思われる。しかしながら,手術にあたっては多くの課題がある。当科ではこれまで47症例にプロヴォックスを用いたシャント発声の音声再建を行ってきた。そのなかでその後3症例にシャント孔の閉鎖を行った。これらの症例を呈示し,特に高齢者におけるシャント発声に関わる課題について考察を行った。その結果,多職種間ネットワークによる支援が欠かせず,また,耳鼻咽喉科医には閉鎖も含めた経過観察と継続的なケアが求められると思われた。

  • 篠原 尚吾, 竹林 慎治, 濵口 清海, 齊田 浩二
    2020 年71 巻3 号 p. 251-257
    発行日: 2020/06/10
    公開日: 2020/06/25
    ジャーナル 認証あり

    甲状腺低分化癌の定義は変化してきた。特に本邦では甲状腺癌取扱い規約 (規約) が取り決める定義とWHOの定義の2種類が存在し,この2つはしばしば食い違ってきた。このような状況下のため,本邦では甲状腺低分化癌の症例報告は極めて少ない。本研究では規約の第6版に準拠した,すなわち低分化成分は10%以下でも甲状腺低分化癌と定義した場合の,甲状腺低分化癌20例につき臨床的に検討を加えた。症例は男性5例,女性15例で2例を現行のWHOの定義であるトリノ基準,10例を第7版の基準 (低分化成分は50%以上必要) のみ,8例を第6版の基準のみとグループ分けした。術前血清サイログロブリン値はほとんどの症例で上昇していた。再発例は8例あり,再発時には放射線ヨードは陰性で,サイログロブリンは上昇しない症例が多く,再発のチェックにはPET-CTが有用であった。死亡例は7例で再発症例はほとんど救済できていない状況であった。2年累積再発率は36%,3年全生存率は65%であった。再発/死亡症例と病理学的なグループとは関連がなく,低分化癌に限らず低分化成分を含む分化癌は,それに応じた治療と経過観察の仕方が必要であると結論した。

症例
  • 松本 祐磨, 宮本 真, 中村 健大, 川田 往嗣, 甲能 直幸, 齋藤 康一郎
    2020 年71 巻3 号 p. 258-263
    発行日: 2020/06/10
    公開日: 2020/06/25
    ジャーナル 認証あり

    気道異物は常に窒息の危険性がある救急疾患の一つであり,迅速に対応しなければ生命に関わる。気道異物は特に小児と高齢者に多く,一般的に気道異物は小児ではピーナッツやおもちゃが原因で生じることが多く,高齢者では義歯などの歯科関連異物の頻度が多い。今回,神経性食思不振症を既往にもつ33歳の女性が嘔吐誘発の際に使用したスプーンを誤飲したため,救急外来を受診した。その際に声門下に嵌頓したスプーンを認めたため,外来にて用手的にスプーンの摘出を試みたが,疼痛と呼吸苦の増悪により摘出が困難であった。気道確保のために気管切開術を施行し,口腔側と気管孔側と同時に回転させることで経口的にスプーンの摘出を行えた。今回の気管切開術は気道確保と異物抜去を行うために必要な処置と考えられた。気道異物は対応を誤ると致死的になる可能性もあり,異物抜去の方法を検討する前に的確な気道管理が必要と思われた。

  • 本多 正樹, 春木 茂男
    2020 年71 巻3 号 p. 264-269
    発行日: 2020/06/10
    公開日: 2020/06/25
    ジャーナル 認証あり

    症例は77歳の女性で,食事のつかえを自覚し前医を受診した。胸部食道癌(cT4b (下行大動脈) N1M0,cStage IVa)の診断で化学療法が施行されたが,食道縦隔瘻,縦隔膿瘍を合併した。食道ステントが留置され一旦は退院したが,間もなく経口摂取困難となり当院を紹介受診した。食道縦隔瘻の残存を認め,食道壁とステントの間隙から瘻孔への交通があると考えられたため,経口摂取を目的とした食道バイパス術を施行した。放射線治療も見据えてステント抜去も併施した。術後経過は良好で,術後11日目に経口摂取可能となり,52日目に自宅退院した。適応を厳密に考慮することで,狭窄を伴わない瘻孔形成例に対する食道バイパス術はステント留置よりも効果的な可能性がある。

  • 平野 正大, 冨藤 雅之, 木村 栄子, 塩谷 彰浩
    2020 年71 巻3 号 p. 270-275
    発行日: 2020/06/10
    公開日: 2020/06/25
    ジャーナル 認証あり

    症例は42歳男性。甲状腺癌に対して甲状腺全摘術および両側の頸部郭清術,内頸静脈切除施行後両側反回神経麻痺を認め気管切開およびレティナでの気道管理を要していた。その後気道管理に難渋し,最終的に4回の手術を必要とした。第1回手術では気管孔閉鎖のため左Ejnell法を施行したが喉頭浮腫が強く十分な開大を得られなかった。その後肉芽による気管孔狭窄を認め第2回手術では右Ejnell法,気管孔肉芽切除を施行した。しかし気管孔は狭窄し第3回手術では気管孔拡大手術を施行するも再狭窄をきたした。第4回手術では縫合線が一直線にならないようにジグザグ型の気管孔を形成した。気管孔はカニューレフリーでの管理が可能となりその後狭窄も認めていない。本症例では声門上,声門,気管孔の3つのレベルで狭窄をきたし,最終的に声門上での狭窄を解除することができず気管孔閉鎖は不可能であった。一方で過剰瘢痕形成,感染,カニューレによる慢性的な刺激,ケロイド体質などにより気管孔狭窄を繰り返した。今回複数の三角弁を形成しジグザグ型の気管孔を作ることで創部の緊張を緩和し再狭窄を予防しえた。

  • 上村 佐和, 木村 百合香, 丸山 祐樹, 江川 峻哉, 平野 康次郎, 櫛橋 幸民, 藤居 直和, 嶋根 俊和, 小林 一女
    2020 年71 巻3 号 p. 276-282
    発行日: 2020/06/10
    公開日: 2020/06/25
    ジャーナル 認証あり

    重症筋無力症 (myasthenia gravis;MG) は,高齢発症の頻度が近年増加している。高齢発症のMGは,構音障害や嚥下障害の症状からの脳血管障害と診断されたり,易疲労性の症状が加齢による変化と認識されることが多く,鑑別が難しい疾患である。今回,眼筋症状を示さず,嚥下障害と構音障害を主訴としたMGの1例を経験したので報告する。症例は77歳男性で,経過観察中に亜急性に進行する嚥下障害を認め咽頭収縮の不良などから神経筋疾患を疑い,血液検査で抗アセチルコリン受容体抗体陽性,エドロフォニウム負荷試験前後で球麻痺の改善を認めたことからMGと診断された。

用語解説
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