日本気管食道科学会会報
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71 巻, 5 号
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特集:気管食道科領域とサルコペニア
総説
  • 荒井 秀典
    2020 年 71 巻 5 号 p. 347-351
    発行日: 2020/10/10
    公開日: 2020/10/25
    ジャーナル 認証あり

    高齢化の進行とともに,加齢に伴って増加する疾患,病態の重要性が高くなっている。加齢とともに骨格筋量は減少するが,骨格筋量とともに歩行速度や握力など機能的な低下も認められる。このような加齢に伴う骨格筋の機能低下がサルコペニアと定義されたが,サルコペニアは,日常生活活動(ADL)の低下,フレイル,転倒・骨折,入院,施設入所,死亡などの危険因子であり,その診断基準も欧米およびアジアで確立してきた。その後,2018年EWGSOPは診断基準の改訂を発表し,続いてAWGSも2019年10月に診断基準を改訂した。呼吸器・食道疾患領域においても高齢化とともにサルコペニアの診断・治療の重要性は高まっており,治療の質向上のためにもガイドラインに応じたサルコペニアの管理が必要である。

Related Paper
  • 黒澤 一
    2020 年 71 巻 5 号 p. 352-357
    発行日: 2020/10/10
    公開日: 2020/10/25
    ジャーナル 認証あり
    電子付録

    慢性閉塞性肺疾患(COPD)は最も一般的なタバコ関連疾患の一つであり,緩徐に進行する閉塞性換気障害が特徴である。一秒量が経年的に減少する結果,呼吸困難が顕在化するようになる。サルコペニアはCOPDの多くある併存症の一つであり,生命予後を規定する重要な臨床因子であることが明らかになっている。その成因には廃用,栄養障害,全身性炎症および身体の非活動性など複数の要素が影響している。身体活動を日常的に強化させる行動変容を促す介入は,COPDの安定期の管理の基本であり,キーポイントとなるものと思われる。

  • 錦織 達人, 吉田 真也, 角田 茂, 久森 重夫, 松村 由美, 小濱 和貴
    2020 年 71 巻 5 号 p. 358-363
    発行日: 2020/10/10
    公開日: 2020/10/25
    ジャーナル 認証あり
    電子付録

    わが国は,人類史上で類をみないスピードで高齢化しており,医療現場では,加齢に伴って増加する疾患,病態に対する対策の必要性が増している。骨格筋量が減少し,筋力や身体機能が低下するサルコペニアは,一般集団だけでなく食道癌患者においても注目を集めている。サルコペニアの診断方法はさまざま存在しているが,食道癌患者ではstagingなどのために実施するCT検査を利用することもできる。サルコペニアを有する食道癌患者は,サルコペニアを有さない患者と比較して,根治手術後の合併症を高率に発症し,術後の生存率が不良であることが報告されている。また,化学療法や放射線化学療法においても,サルコペニアを有する患者では,減量や中止が多く,奏効率が低いことが報告されている。筋量を増加し,筋力,身体機能を改善するためには,栄養療法と運動療法を組み合わせることが有用である。今後,食道癌患者を対象とした周術期を中心とした栄養運動療法のさらなる研究が望まれる。

  • 藤島 一郎, 國枝 顕二郎
    2020 年 71 巻 5 号 p. 364-371
    発行日: 2020/10/10
    公開日: 2020/10/25
    ジャーナル 認証あり

    サルコペニアは生命予後とも関連することから注目を浴びているが,サルコペニアの定義は確立されていない。これまでは筋肉量の減少が必須であるとされたが,2019年のEWGSOPの発表では筋力の減少がまず必要で,筋肉量のみならず筋肉の質が大事であるとされている。また,廃用症候群とサルコペニアの相異についても理解しておく必要がある。サルコペニアによる嚥下障害も報告が増えているが,全身のサルコペニアと嚥下筋は別であるという理解が大切である。確かに嚥下に関する筋肉は横紋筋であるが,発生学的には鰓弓由来の呼吸筋に近く,四肢の骨格筋とは別の特性を持っている。嚥下筋については安静時にも呼吸からのドライブがかかっているために廃用に陥りにくい。ただしオトガイ舌骨筋のみは例外で,サルコペニアが生じやすい。純粋な嚥下筋のサルコペニアによる嚥下障害を理解することは大切であるが,高齢者では嚥下障害の原因となる多くの疾患がサルコペニアと合併し病態を複雑にしている。

  • 山田 実
    2020 年 71 巻 5 号 p. 372-379
    発行日: 2020/10/10
    公開日: 2020/10/25
    ジャーナル 認証あり

    サルコペニアは加齢に伴う骨格筋量減少および筋力低下を指し,その有病率の高さ,有害健康転帰への影響の大きさなどから注目されている疾病である。また,二型糖尿病,慢性閉塞性肺疾患,慢性腎臓病,骨粗鬆症などの疾病との関連性が深いことから,医療現場において高頻度に遭遇する疾病となっている。そのため,さまざまなセッティングでサルコペニアの管理が必要とされ,適切なスクリーニング,予防・治療介入,効果判定が求められている。スクリーニング方法としては,複数の国際的ワーキンググループがそれぞれ筋力および骨格筋量より判定することを推奨している。また,介入方法としては,運動療法,栄養療法,およびそれらの併用療法が有用とされ,サルコペニア診療ガイドラインの中でも推奨されている。

用語解説
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