日本気管食道科学会会報
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最新号
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原著
  • 齋藤 善光, 春日井 滋, 稲垣 太朗, 望月 文博, 明石 愛美, 宮本 康裕, 岡田 智幸, 肥塚 泉
    2021 年 72 巻 1 号 p. 1-9
    発行日: 2021/02/10
    公開日: 2021/02/25
    ジャーナル 認証あり

    2011年4月~2019年3月の8年間に咽喉頭食道異物を主訴として当院を受診した1714例を対象として検討した。そのうちの60.1%の1040例で異物が同定された。異物の種類は魚骨が,異物同定部位は口蓋扁桃が最多を示した。嚥下時痛・咽頭痛の自覚症状と異物の有無との間には,有意な関連を認めた。左右の自覚症状と異物の同定部位との一致は90%を超え,垂直方向の自覚症状では,自覚症状が口腔であれば,91.4%で口蓋扁桃に存在した。合併症は4.6%で認められ,ロジスティック回帰分析を用いた多変量解析で合併症に影響を与える因子を評価した。異物同定が可能であった全例では年齢,受傷期間,異物の種類(義歯),異物同定部位(食道)が,魚骨例に限った評価では,年齢,受傷期間,異物同定部位(食道)が影響を及ぼす因子となった。咽喉頭食道異物例を診察する際は,自覚症状を確認することで,異物同定や摘出までの時間短縮,見落としの減少にも繋がる可能性があるため,問診によって得られる情報の重要性が示唆された。

  • 横井 麻衣, 平松 真理子, 向山 宣昭, 藤本 保志, 曾根 三千彦
    2021 年 72 巻 1 号 p. 10-15
    発行日: 2021/02/10
    公開日: 2021/02/25
    ジャーナル 認証あり

    経皮的気管切開術(PDT)は外科的気管切開術(ST)と比べて手術時間が短く簡便でありICU等のベッドサイドで施行される例が増えている。当院におけるSTとPDTについて比較検討すると,STが157例,PDTは25例施行されており,抜管困難による気管切開術を選択する症例が最も多かった。合併症は創部感染12例,術後出血6例,チューブ閉塞8例,交換困難4例,気道肉芽5例であり,創部感染率はSTの方が高かった。術後出血と交換困難については,それぞれPDT術後の出血が持続し処置に難渋した症例と,穿刺時の輪状軟骨前壁損傷による交換困難を生じた症例を経験した。当院におけるPDTは主科(他科)が行う傾向がある。われわれが経験した術後治療に難渋した2症例は,ともに最初の穿刺場所が問題点と考えられ,穿刺前に体表からメルクマールとなる甲状軟骨,輪状軟骨などがわかりにくい症例はSTの方が安全である可能性が示唆される。また,安全性を高めるためには,適応を十分に考慮する必要がある。

  • 冨山 克俊, 栃木 康佑, 井上 由佳理, 穴澤 卯太郎, 西嶌 嘉容, 田中 康広
    2021 年 72 巻 1 号 p. 16-22
    発行日: 2021/02/10
    公開日: 2021/02/25
    ジャーナル 認証あり

    膿瘍切開術を施行した深頸部膿瘍症例において気管切開術の併施に影響する因子を検討するため,当院で経験した36症例を対象に身体所見,画像検査所見等と実施された術式について集計した。その結果,全36症例のうち20症例に対して気管切開術が実施されていた。また術前造影CT画像において,副咽頭間隙・内臓間隙・頸動脈間隙・咽頭後間隙(「特定4間隙」と呼ぶ)いずれかに膿瘍形成を認める症例は,これらに膿瘍形成がない症例と比べて統計学的有意に喉頭浮腫を認める割合が高く(p<0.01),気管切開術を併施している割合も高かった(p<0.01)。さらに,「特定4間隙」の中で,膿瘍形成が3間隙以上の症例は,3間隙未満に限局して存在する症例と比べ,統計学的有意に気管切開術を併施している割合が高かった(p<0.01)。深頸部膿瘍症例の術前造影CT画像において,舌骨下へ拡がりかつ喉頭に隣接した間隙である内臓間隙・頸動脈間隙・咽頭後間隙および,それら間隙への重要な起点となる副咽頭間隙における膿瘍形成の有無を正確に評価することは,適切な気道管理の一定の指標になると考えられた。

症例
  • 島岡 秀樹, 吉村 文博, 平野 陽介, 田中 敬太, 山田 哲平, 槇 研二, 長谷川 傑, 二村 聡
    2021 年 72 巻 1 号 p. 23-29
    発行日: 2021/02/10
    公開日: 2021/02/25
    ジャーナル 認証あり

    食道癌肉腫は食道癌の中で0.5~2.8%と比較的稀な組織型である.今回,当施設において2017年7月から同年11月までの約5カ月間に,病理学的に食道癌肉腫と診断された食道切除症例4例について報告する.全例男性,平均76歳.咽頭違和感や胸部のつかえなどの症状を契機に診断された症例が3例,無症状が1例であった.術前の生検で癌肉腫と診断された症例は2例であり,他2例は扁平上皮癌と診断されたが,その特徴的な肉眼形態から癌肉腫も鑑別に治療を行った.5-FU/CDDPによる術前化学療法を行った症例は1例で,ほか3例では術前療法は行わなかった.全例に郭清を伴った胸腔鏡下食道亜全摘術が施行された.病理学的腫瘍深達度は全例cT1bであり,1例で2群リンパ節への転移を認めた.平均観察期間2年2カ月経過し,全例無再発生存中である.有茎性の食道腫瘍を認めた場合には癌肉腫であることを念頭に置いて診断を進める必要がある.現時点で定まった食道癌肉腫に対する標準治療は存在しないが,リンパ節郭清を伴う食道切除術を中心とした治療が適当と考えられる.

  • 金子 昌行, 那須 隆, 新川 智佳子, 渡邉 千尋
    2021 年 72 巻 1 号 p. 30-37
    発行日: 2021/02/10
    公開日: 2021/02/25
    ジャーナル 認証あり

    症例は54歳女性。某年10月末感冒罹患後に左頸部発赤腫脹を自覚。翌11月前医を経て頸部蜂窩織炎疑いで当科紹介初診となった.明らかな口腔・咽頭の局所感染原病巣が認められなかったのにもかかわらず,CT等画像検査で左深頸部膿瘍と診断され,同日切開排膿ドレナージ手術を施行した。炎症消退後に側頸嚢胞などが疑われる単独病変が残存したことから,翌年2月に摘出術を施行した。手術所見では皮膜に覆われた充実性腫瘤であり,病理学的な検索の結果,p16陽性扁平上皮癌と診断された。この後PET-CTを施行し原発病巣を検索したが明らかな病変は確認されず,HPV関連中咽頭癌と診断された。深頸部感染症を罹患した際,明らかな口腔・咽頭の局所感染原病巣がない場合には,容易に悪性腫瘍の存在を否定してはならないと考えられた。特に側頸部単独病変を認めた場合にはHPV関連中咽頭癌など悪性疾患も念頭に置く必要があり,悪性疾患であっても画像検査,穿刺吸引細胞診では良性所見として報告されることがあるため,診断,治療過程で悪性疾患を想定した準備を行う必要がある。

  • 秋定 直樹, 門田 伸也, 岸野 毅日人, 青井 二郎, 林 祐志, 髙橋 紗央里, 中村 匡孝
    2021 年 72 巻 1 号 p. 38-46
    発行日: 2021/02/10
    公開日: 2021/02/25
    ジャーナル 認証あり

    中咽頭前壁は他の頭頸部領域と比較し術野が得られにくく,嚥下機能や構音機能,整容面など術後の問題点も多岐に渡る。中咽頭前壁へのアプローチ方法は大きく分けて,口内法,頸部外切開法,下顎骨離断法の3種が考えられる。口内法は視野が狭く,頸部外切開法は嚥下機能の低下や縫合不全のリスクがあり,下顎骨離断法は侵襲性と整容面で問題が生じる。中咽頭前壁腫瘍に対する舌正中アプローチ・舌弁後方移動術は,舌尖より正中切開を行い,腫瘍を摘出後,患側の舌前方部分を後方に移動し舌根を再建する術式である。舌根のみならず舌尖の可動性や血流も一部温存を期待できる。当科では,T2以下の症例で表在性腫瘍であればTOVS,深部浸潤を疑う画像所見を認めれば舌正中アプローチ・舌弁後方移動術,尾側や側方への進展を認めればFKリトラクターの併用や頸部外切開法を検討している。舌正中アプローチ・舌弁後方移動術や,同術式とFKリトラクターとの併用法にて機能面・整容面・根治性いずれも良好な結果を得た症例を当科での治療方針を交え報告する。本法は腫瘍進展範囲,全身状態を考慮すれば,根治性を確保し機能障害を最小限に抑えられる術式と考えられる。

  • 平山 俊, 榎本 圭佑, 熊代 奈央子, 大橋 拓矢, 保富 宗城
    2021 年 72 巻 1 号 p. 47-52
    発行日: 2021/02/10
    公開日: 2021/02/25
    ジャーナル 認証あり

    全身麻酔下手術時に気管膜様部裂創をきたした1例の治療について文献的考察を含めて報告する。症例は43歳女性。脳性麻痺の既往があり,前医にて全身麻酔下に抜歯手術を実施された際に,広範囲な皮下気腫と両側緊張性気胸を認めた。気管支鏡にて門歯より15 cm程度の気管膜様部に頭尾側方向3 cm程度の裂創を認めた。気管切開のうえ,気管切開孔から気管膜様部の裂傷を結紮縫合した。術後14日目には創部は治癒し,気管カニューレの抜去が可能となり,気胸再発も認めなかった。術後15日目に前医転院となった。気管損傷は軽症であれば保存的治療での治癒も期待できる反面,外科的治療が必要な場合には,反回神経損傷等のリスクも伴う。損傷部位に基づき,気管切開孔からの気管内縫合が侵襲も少なく有用な場合があると考える。

  • 笠原 健, 大久保 啓介, 森川 淳, 酒井 瑞乃
    2021 年 72 巻 1 号 p. 53-59
    発行日: 2021/02/10
    公開日: 2021/02/25
    ジャーナル 認証あり

    深頸部膿瘍は頸部に存在する疎な結合組織からなる間隙に感染が波及し膿瘍を形成したものであり,外科的治療を含め早急かつ適切な治療が必要となる。深頸部感染症が重力や呼吸運動,胸腔内の陰圧などにより間隙から縦隔に波及した状態を降下性壊死性縦隔炎(descending necrotizing mediastinitis,以下DNM)と呼び,死亡率は20~40%とも言われている。症例は35歳男性で,左頸部腫脹,咽頭痛を自覚したため受診した。来院時頸胸部造影CTにて左顎下間隙,左咀嚼筋間隙を中心に境界不明瞭で不均一な造影効果を伴う低吸収域およびガス産生像を認めた。左深頸部膿瘍と診断し,同日気管切開術および外切開による排膿術を施行した。術後は人工呼吸器を装着し,鎮静および鎮痛管理下に連日の創部洗浄,デブリードマンを施行した。手術後12日目に人工呼吸器から離脱,41日目に退院となった。本症例は気管切開孔の周囲に膿瘍を認め,ガス産生を伴う広範囲におよぶ深頸部膿瘍であり,DNMへの進展の可能性が高いと考えられた。人工呼吸器装着による呼吸管理はDNMへの進展を抑制する一助になると考えられた。

用語解説
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