日本気管食道科学会会報
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最新号
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原著
  • 髙橋 希, 奥羽 譲, 富里 周太, 守本 倫子
    2021 年 72 巻 3 号 p. 115-123
    発行日: 2021/06/10
    公開日: 2021/06/25
    ジャーナル 認証あり

    小児気管切開児のカニューレ抜去は成人と比較し困難と言われているが,その原因のひとつに,「気管孔上の肉芽」や「気管孔上軟骨の内腔への陥入」が生じやすいことがあげられる。そこで,過去5年間にカニューレ抜去に至った48症例を対象に,気管切開期間・カニューレの種類・ADLなどによる,気管孔上の肉芽・陥入の発症率,および「気管孔上部形成術」の適応と効果について検討を行った。48症例のうち手術が必要だったものは27例で,うち18例に肉芽,16例に陥入がみられた(7例で重複)。気管カニューレ留置期間の長さや気管切開時の年齢については,手術群・非手術群に有意差を認めなかったが,カニューレ抜去時の年齢がより幼少である場合に,手術が必要となる症例が有意に多かった。またシリコン製のカニューレを使用している症例に比べ,より硬いポリ塩化ビニル製のカニューレを使用していた場合に,有意に手術が必要であった。また誤嚥や唾液の垂れ込みが存在する症例で,有意に肉芽発生率が高かった。比較的容易な手技でも気管孔上の狭窄は改善されることが多く,カニューレ抜去につながっていた。確実な診断と適切な治療が重要と考えられた。

  • 伊藤 裕之, 加藤 孝邦, 小泉 千秋, 鈴木 康司, 棚橋 汀路, 三枝 英人
    2021 年 72 巻 3 号 p. 124-131
    発行日: 2021/06/10
    公開日: 2021/06/25
    ジャーナル 認証あり

    14例の原発性脳腫瘍術後の治療成績を報告した。全例,嚥下障害の治療前には経管栄養に依存していた。8例は四肢の麻痺や運動失調を合併していた。1例は側頭葉の髄膜腫であった。他の13例はテント下腫瘍であった。そのうちの1例の病理学的診断は不明であった。他の12例は,髄膜腫3例,小脳橋角部神経鞘腫3例,延髄血管芽腫2例,小脳血管芽腫2例,第4脳室上衣腫2例であった。14例中6例が血管芽腫や上衣腫などの低発生頻度の腫瘍であった。14例に理学療法を行い,4例は経口摂取が可能になったが,10例は経口摂取が可能にならなかった。この10例のうち8例に嚥下障害の手術を行った。行った手術は,輪状咽頭筋切断術,喉頭挙上術,口角牽引術,披裂軟骨内転術,甲状軟骨形成術,咽頭縫縮術などである。この8例のうち7例は経口摂取が可能になった。小脳橋角部腫瘍術後に片麻痺,両側聴力障害,両側顔面感覚低下,片側顔面神経麻痺を合併した1例は,経口摂取が可能にならなかった。理学療法で改善しなかった他の2例には嚥下障害の手術が行えなかった。

症例
  • 相原 勇介, 中村 一博, 服部 和裕, 岡吉 洋平, 塚原 清彰
    2021 年 72 巻 3 号 p. 132-137
    発行日: 2021/06/10
    公開日: 2021/06/25
    ジャーナル 認証あり

    甲状軟骨形成術I型(TP I)では,声帯を内方移動させるために人工材料を挿入する。その晩期合併症として人工材料逸脱の報告がある。今回われわれはTP I施行後にゴアテックスが下咽頭腔内へ逸脱した症例を2例経験したので報告する。症例1は69歳男性。食道癌術後の声帯麻痺に対して披裂軟骨内転術とTP Iを施行した。術後2年後に嗄声の増悪を認め追加でTP Iを施行した。術後5年後,咽喉頭違和感を感じ受診した。下咽頭梨状陥凹から下咽頭腔内に逸脱するゴアテックスを認め,全身麻酔下で経口的に摘出した。症例2は67歳男性。挿管性声帯麻痺に対してTP Iを施行した。術後6カ月目に下咽頭梨状陥凹にゴアテックスが透見された。術後8カ月目にゴアテックスの突出が進行したため,術後11カ月目に全身麻酔下で経口的摘出を行った。TP Iの原法では窓の軟骨板と内軟骨膜は保存するのが原則であるが,後方強調のため内軟骨膜をこえて甲状披裂筋や披裂軟骨そのものを内方移動や回転させることもある。本症例は2例とも後方強調のため内軟骨膜をこえて挿入した。TP Iにおいて内軟骨膜をこえて人工材料を挿入する際には,晩期合併症である人工材料内腔逸脱の危険性を念頭に置くべきであると考えられた。

  • 佐藤 公宣, 千年 俊一, 栗田 卓, 末吉 慎太郎, 深堀 光緒子, 梅野 博仁
    2021 年 72 巻 3 号 p. 138-144
    発行日: 2021/06/10
    公開日: 2021/06/25
    ジャーナル 認証あり

    喉頭気管分離術は比較的低侵襲な誤嚥防止術である。しかし,喉頭気管分離術の術後合併症のなかでも最も頻度の高い喉頭皮膚瘻に対して有効な対処法はほとんど報告されていない。今回,喉頭気管分離術後に生じた縫合不全に対して喉頭皮膚瘻を作製し,声門閉鎖術(鹿野法)により二期的に閉鎖した症例を経験したため報告する。症例は59歳男性,多発性脳梗塞後の嚥下障害のため嚥下性肺炎を繰り返していた。誤嚥防止手術として喉頭気管分離術(Lindeman変法)を行った。術後14日目に創部からの排膿と制御困難な出血を認め,全身麻酔下での止血術と創部処置を行った。吻合部は縫合不全により瘻孔となるも,感染により瘻孔の即時閉鎖は困難であったため,喉頭皮膚瘻を作製した。創部の感染が制御できた段階で,鹿野法により喉頭皮膚瘻を二期的に閉鎖した。喉頭皮膚瘻閉鎖後の経過は良好で早期退院が可能であった。本来,鹿野法は誤嚥防止術の術式の一つであるが,喉頭気管分離術の瘻孔閉鎖に対しても有用な術式と考えられた。

  • 宮本 佑美, 永野 広海, 大堀 純一郎, 黒野 祐一
    2021 年 72 巻 3 号 p. 145-152
    発行日: 2021/06/10
    公開日: 2021/06/25
    ジャーナル 認証あり

    食道入口部狭窄をきたすとして報告されている疾患および病態は,粘膜類天疱瘡,表皮水疱症,Plummer-Vinson症候群,Behcet's病,頭頸部癌化学放射線治療後などである。今回われわれは,上部消化管内視鏡通過不可により発見された食道入口部狭窄の1例を経験した。本症例のようにSjögren症候群(SS)に食道入口部狭窄を合併している症例の報告は稀である。治療は食道入口部の粘膜性の狭窄に対し,直達下に食道入口部の開大術を施行した。治療により上部消化管内視鏡は通過可能となった。SSやC型慢性肝炎,GERD,萎縮性胃炎と食道入口部狭窄との関連の明らかな報告は渉猟しえなかったが,口腔内乾燥やEGF量の低下による組織修復障害や,長期ステロイド内服等が関連している病態が考えられた。日常診療において嚥下障害の原因に食道入口部狭窄のような観察され難い稀な疾患があることを念頭におき評価を行う必要がある。

  • 若松 元気, 冨藤 雅之, 溝上 大輔, 宇野 光祐, 木村 栄子, 谷合 信一, 荒木 幸仁, 塩谷 彰浩
    2021 年 72 巻 3 号 p. 153-160
    発行日: 2021/06/10
    公開日: 2021/06/25
    ジャーナル 認証あり

    術後瘢痕拘縮による鼻咽腔狭窄に対し,伸展皮弁法であるY-V plastyを応用し,軟口蓋咽頭形成術を行い治療し得たので報告する。症例は60歳女性。中咽頭癌(左後壁,扁平上皮癌,T2N1M0 stage III)に対し,経口的咽喉頭部分切除術(transoral videolaryngoscopic surgery:TOVS)および左頸部郭清術を施行し,放射線治療70 Gy/35 Fr.を追加した。術後11カ月で瘢痕拘縮により軟口蓋と中咽頭後壁が癒着・瘢痕狭窄し,鼻閉,閉鼻声,啜り込みづらさを訴えた。術後約5年で中咽頭癌の再発は見られなかったが,鼻咽腔狭窄が増悪したため,口蓋垂の両外側をY字切開しV字皮弁の頂点をY切開線の下端に縫合するY-V軟口蓋咽頭形成術を施行した。手術時間89分。術後,鼻閉や閉鼻声,啜り込みづらさが改善し,voice handicap index:VHIは106点(術前)から21点(術後4カ月)へ改善した。術後1日から全粥食で経口摂取を開始,20日には常食摂取が可能となり,鼻咽腔逆流もなかった。鼻咽腔内視鏡で鼻咽腔閉鎖も良好であった。術後鼻咽腔狭窄は稀であったが,近年急速に普及しつつある経口法による腫瘍切除術の適応拡大に伴い,増加する可能性がある。Y-V軟口蓋咽頭形成術は低侵襲で技術的にも容易な術式であり,術後瘢痕性鼻咽腔狭窄に考慮すべき術式である。

  • 山口 学, 大平 善之
    2021 年 72 巻 3 号 p. 161-165
    発行日: 2021/06/10
    公開日: 2021/06/25
    ジャーナル 認証あり

    背景:膿胸合併で瘻孔化した肺瘻部分に対して胸腔鏡下手術,endobronchial Watanabe spigot(EWS)気管支充填術,胸膜癒着術を行い完治に18カ月を要した症例を報告する。症例:78歳女性。前医で気胸を認め胸腔鏡下手術をしたところ胸水および喀痰から結核菌が証明され当院転院となった。ドレナージを行いながら抗結核療法を開始し,2カ月後に抗酸菌塗抹陰性となったが肺瘻の改善が見られず,3カ月経過したところで胸腔鏡下手術を施行した。術中所見では肺瘻部分は強固に癒着し瘻孔化しており,PGAシートを充填して手術終了した。術後肺瘻が継続したため,EWS気管支充填および胸膜癒着術を施行し,初回胸腔鏡下手術から12カ月後にドレナージのまま退院となった。外来ドレナージのまま経過を見ていたが,膿胸を合併して抗生剤治療を開始。感染がコントロールされた2カ月で肺瘻が閉鎖し4カ月後にドレーンを抜去した。その後19カ月再発を認めていない。結語:結核合併気胸のハイリスク患者に対して長期にわたりさまざまな治療を組み合わせることでADLを維持して治療が可能であった。

  • 笠 伸大郎, 山名 一平, 栁澤 純, 市川 淳, 乘富 智明
    2021 年 72 巻 3 号 p. 166-169
    発行日: 2021/06/10
    公開日: 2021/06/25
    ジャーナル 認証あり

    症例は81歳女性。発熱と咽頭痛を主訴に当院を受診した。胸部X線検査で傍気管支にniveau像を伴う腫瘤影を認めた。CT検査で頸部にring enhancementを伴う多房性の膿瘍形成を認め,降下性壊死性縦隔炎と診断した。緊急で頸部アプローチでの膿瘍ドレナージ術を施行した。治療は奏効し,術後2週間で退院となった。降下性壊死性縦隔炎は頸部から胸部にかけての重篤かつ進行性の感染症であり,早期診断が難しいとされる。今回われわれは降下性壊死性縦隔炎に対して早期診断し,頸部アプローチによるドレナージ術で救命しえた症例を経験したので報告する。

  • 西山 友理, 重冨 征爾, 冨岡 拓矢, 藤井 ゆず
    2021 年 72 巻 3 号 p. 170-177
    発行日: 2021/06/10
    公開日: 2021/06/25
    ジャーナル 認証あり

    甲状腺分化癌は一般的に進行が緩徐であり,適切な切除で予後の改善が期待できる。しかし高度な気道狭窄を伴う場合,気道確保や手術操作時に換気,挿管いずれも困難な状態(CVCI:cannot ventilate and cannot intubate)となる可能性があるため,術前に気道確保の方法について検討しておく必要がある。今回,声門下狭窄を伴う甲状腺濾胞癌に対してVV(veno-venous:静脈脱血・静脈送血)-ECMO(extracorporeal membrane oxygenation:体外式膜型人工肺)を使用し,気道確保を行った1例を経験したので報告する。気道狭窄によるCVCIが予想される症例では,VV-ECMOでの呼吸補助が選択肢になると考えられた。

用語解説
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