切除不能進行・再発食道癌に対して二次治療としてNivolumab療法が強く推奨されている。この推奨はATTRACTION-3試験の結果が根拠となっているが,この試験には75歳以上の高齢者は含まれておらず,高齢者食道癌症例に対するNivolumab療法の有効性は明らかではない。これまでに当科でNivolumab療法を施行した75歳以上の症例23例を対象とし,有効性および安全性について後方視的に検討した。症例は男性19例,女性4例,年齢中央値78歳(範囲75—84歳),組織型は22例がsquamous cell carcinoma,1例がbasaloid squamous cell carcinomaであった。治療開始理由は術後再発が9例(根治切除術後再発8例,ESD後再発1例),非切除が14例であった。Nivolumab投与前または投与後に放射線療法を受けたものが14例であった。治療対象の病変(複数選択)は,リンパ節26病変(頸部6例,縦隔9例,腹部10例,腋窩1例),原発巣13病変,肺9病変であった。有害事象は全Gradeで16例(69%)に認め,Grade3以上の有害事象は8例(34%)に認めた。治療効果判定は,PR3例,SD8例,PD12例で奏効率14%,病勢コントロール率47%であった。全生存期間は中央値で12.7カ月であった。高齢食道癌患者に対するNivolumab療法は有害事象の発生頻度が高く,十分な有害事象のスクリーニングが必要であると考えられた。
新生児の喉頭蓋嚢胞は比較的稀な疾患であるが,嚢胞病変が大きい場合上気道狭窄による重篤な呼吸障害を呈するため,迅速な治療が求められる。症例は日齢1の男児。在胎38週2日,骨盤位のため予定帝王切開術で出生し,生後2時間頃より吸気性喘鳴と動脈血酸素飽和度(SpO2)の低下を認め当院に搬送された。喉頭内視鏡所見では中咽頭から喉頭にかけて白色透明,表面平滑な嚢胞性病変を認め,頸部単純CTでも喉頭蓋谷に嚢胞性病変を認めたため,喉頭蓋嚢胞による上気道狭窄と診断した。日齢15に全身麻酔下,経鼻挿管にて小児用喉頭鏡で視野を確保し,軟性内視鏡を使用して喉頭蓋嚢胞切除術を施行した。術後経過は良好で,呼吸,哺乳ともに問題なく退院した。新生児喉頭蓋嚢胞の治療としては,嚢胞の穿刺吸引,切除(開窓)術,摘出術があるが,切除(開窓)で十分とする考え方が一般的である。過去には再発例や嚢胞内容物での窒息例も報告されている。新生児喉頭蓋嚢胞では症例ごとに気道確保の方法と手術侵襲,再発のリスクを考慮して,小児科,麻酔科と連携をとって治療していく必要がある。
咽頭食道憩室は全消化管憩室の中でも発生頻度が低い,圧出性の憩室であり,その中でも輪状咽頭筋下縁と食道縦走筋の間で発生するKillian-Jamieson憩室は報告数が少ない。今回,Killian-Jamieson憩室に対して頸部外切開による憩室切除術を施行した症例を経験した。術前の頸部造影CT検査で憩室基部が食道の左側,輪状軟骨の尾側にあることからKillian-Jamieson憩室を疑い,手術で輪状咽頭筋の下縁より生じるKillian-Jamieson 憩室であることが確認できた。Zenker憩室とKillian-Jamieson憩室は術前画像検査で鑑別することが難しいという報告も多いが,輪状咽頭筋が付着する輪状軟骨を基準に憩室の基部の位置を確認することが鑑別の手段となりうる。Killian-Jamieson憩室が発生する間隙は反回神経の入口部でもあり,解剖学的にかなり接近している。よって,Capsular dissection法で甲状腺を安全に剥離し,さらに神経モニタリング装置で反回神経を確実に確認,温存することが有用であると考えられる。
冠静脈瘤の報告は稀であるが,近年,房室副伝導路との関連が明らかとなり,不整脈の潜在的な原因となりえる。症例は55歳男性。健康診断の精査の単純CTにて傍心臓結節を疑われ当院を受診した。造影CT,MRIを含めた検査を行ったが診断が困難であったため,胸腔鏡下手術を施行した。胸腔鏡下に冠静脈瘤を同定し審査胸腔鏡として終了,術後の心電図同期心臓CT所見と併せて診断した。本例は,不整脈を伴わず,冠静脈洞から比較的離れて発生し,血栓も小型であるため切除せず,増大による破裂に留意した経過観察の方針とした。
CASTLEは甲状腺内または甲状腺に隣接する異所性胸腺組織に由来する比較的稀な悪性腫瘍であり,甲状腺扁平上皮癌などの悪性疾患と類似した組織像であるため,穿刺吸引細胞診による正診率は低く,外科的切除後に病理学的診断が確定することが多い。今回われわれは,術前に針生検を施行し,組織を免疫染色することでCASTLEの診断を得た1例を経験した。手術による根治切除に加えて,術後放射線照射が局所再発の予防に有用とされており,比較的予後良好な疾患であることから,甲状腺葉切除術+両中央区域リンパ節郭清術+健側の外側区域リンパ節郭清術を施行し,臓器温存を図った。現在治療後1年非担癌生存しており,経過観察中である。