日本気管食道科学会会報
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76 巻, 6 号
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原著
  • 竹内 一隆, 森田 浩太朗, 林 暁利, 山田 智史, 佐原 聡甫, 瀧澤 義徳, 三澤 清
    2025 年76 巻6 号 p. 299-306
    発行日: 2025/12/10
    公開日: 2025/12/10
    ジャーナル 認証あり

    縦隔甲状腺腫に対する手術は,通常の甲状腺手術と異なるアプローチ方法や合併症に注意が必要である。自験例を提示するとともに文献的考察を加えて,縦隔甲状腺腫における手術マネージメントを検討する。対象は2014年1月~2023年12月の10年間に浜松医科大学耳鼻咽喉科・頭頸部外科で手術を行った,縦隔甲状腺腫22例である。この期間における甲状腺手術の6.2%(22/354件)が縦隔甲状腺腫であった。縦隔内頭尾側径は26~80 mm(中央値43.5 mm),腫瘍尾側端は第3胸椎レベルが10例,第4胸椎が6例,第5胸椎が6例であった。術前診断は全例良性腫瘍であった。胸骨切開や縦隔鏡を併用する症例はなく,全例頸部アプローチで摘出可能であった。手術合併症は,副甲状腺機能低下症が2例,一過性反回神経麻痺が1例,輸血を要したものが1例あり,すべて甲状腺全摘出術の症例であった。摘出検体量は30~280 g(中央値72.5 g)であり,摘出検体量が100 g以上の症例と腫瘍尾側端が第4胸椎より尾側の症例で有意に出血量,手術時間が増えていた(p<0.05)。縦隔進展のある甲状腺腫は,経過観察して大きくなる前に手術による摘出を考慮すべきであり,腫瘍が大きく,縦隔内深部まで進展しているものは手術時の合併症に注意が必要である。

症例
  • 石永 一, 平田 智也, 竹内 万彦
    2025 年76 巻6 号 p. 307-312
    発行日: 2025/12/10
    公開日: 2025/12/10
    ジャーナル 認証あり

    喉頭垂直部分切除術は喉頭温存手術を希望する症例や放射線治療での制御不能例に対して行われる手術である。この方法は安全で効果的であり,高い割合で喉頭機能温存が可能である。喉頭部分切除後に喉頭狭窄をきたす症例は少ないとされている。しかしながら,本症例では喉頭垂直部分切除後に披裂粘膜が喉頭腔に引き込まれる喉頭狭窄を呈した。その原因としておそらく併存疾患として持っている喘息や慢性閉塞性肺疾患がある程度関与しているものと思われた。本症例では右披裂粘膜に対する喉頭微細手術が施行され,術後に呼吸苦は消失した。

  • 鷲見 久美子, 宇野 光祐, 荒木 幸仁, 塩谷 彰浩
    2025 年76 巻6 号 p. 313-320
    発行日: 2025/12/10
    公開日: 2025/12/10
    ジャーナル 認証あり

    喉頭原発神経鞘腫は稀であるが,さらに希少な喉頭外に神経鞘腫を併発した喉頭原発神経鞘腫の2症例を経験した。症例1は19歳男性,左仮声帯から左梨状陥凹の膨隆を認め,画像検査で喉頭蓋に進展するダンベル型腫瘍を認めた。頸部外切開により腫瘍を摘出し,声帯麻痺は認めず,ガレン吻合由来と推定された。術後画像検査にて無症状の右聴神経鞘腫,左頸静脈孔および脊髄病変を指摘され,経過観察となっている。症例2は20歳女性,前額部神経鞘腫,左聴神経鞘腫,右頭頂部髄膜腫の既往があった。左披裂喉頭蓋ひだ原発の神経鞘腫を指摘され,経口的手術目的で当院へ紹介された。喉頭機能温存を重視し,経口的に可及的切除を施行した。上喉頭神経由来と推定され,術後2年増大所見を認めない。2例とも神経線維腫症2型の診断基準には該当しなかった。他領域病変の存在に伴う特別な臨床的特徴は明確でないものの,喉頭外への進展,多結節性の病変では,喉頭以外にも神経鞘腫が多発する可能性も念頭に置いた,全身検索,経過観察が望まれる。良性疾患でもあり,可能であれば頸部外切開よりも,低侵襲・機能温存を目指した経口的切除術が望ましいと考える。

  • 石田 知也, 陣野 智昭, 首藤 洋行, 田中 成幸, 佐藤 有記, 嶋崎 絵里子, 峯崎 晃充, 杉山 庸一郎
    2025 年76 巻6 号 p. 321-329
    発行日: 2025/12/10
    公開日: 2025/12/10
    ジャーナル 認証あり

    頸部外傷はさまざまな要因で生じるが,剣道の突きによる外傷では強い力で限局的な外傷を生じる。喉頭に損傷が及ぶと声帯粘膜下血腫や腫脹による気道狭窄だけでなく,甲状軟骨骨折や喉頭粘膜損傷による音声障害も問題となる。今回われわれは剣道中の竹刀による頸部外傷により甲状軟骨骨折をきたし,生じた音声障害に対して整復術を行った。症例は40歳代,男性。剣道中に竹刀による突きで前頸部を受傷。当日は体表に出血を認めたがすぐに止血,直後から嗄声を自覚していたが呼吸苦はなかった。受傷2日後に近医耳鼻咽喉科を受診し,喉頭内視鏡検査にて右披裂部~右声帯にかけて粘膜下血腫を認めたが明らかな声帯麻痺や上気道狭窄は認めなかった。CTでは甲状軟骨に縦骨折を認め,軟骨偏位も認めた。嗄声が継続したため,観血的整復固定術目的に受傷9日目に当科紹介。受傷11日目に全身麻酔下甲状軟骨骨折整復術を施行。軟骨表面を丁寧に剥離して骨折線を確認し,生体内分解吸収性骨接合材を用いて甲状軟骨を固定整復した。喉頭外傷による甲状軟骨骨折は気道狭窄等の呼吸障害がなくとも嗄声が生じている場合には速やかに整復術を行う必要があると思われた。

  • 西 純平, 宇野 光祐, 塩谷 彰浩, 荒木 幸仁
    2025 年76 巻6 号 p. 330-338
    発行日: 2025/12/10
    公開日: 2025/12/10
    ジャーナル 認証あり

    気管切開後に気道管理に難渋した再発性多発軟骨炎(relapsing polychondritis:RP)の1例を経験した。症例は内科にて限局型多発血管性肉芽腫症(granulomatosis with polyangiitis:限局型GPA)として加療中,当科併診していた67歳女性である。高用量ステロイド投与,免疫抑制薬での内科加療を行うも呼吸困難症状が増悪し,声門下狭窄に対して気管切開術を施行した。軟骨輪の破壊により気管は扁平状に変形し,縦走ヒダは消失して内腔は狭窄しており,気管切開術直後から気管が虚脱し人工呼吸器管理を要した。のちに臨床所見からRPの診断となった。RPの気道病変はステロイド抵抗性のことも多く,気管全長に渡って狭窄を伴うことがある。治療に難渋する気道病変に対して気管切開術を行う際は,RPの可能性を念頭に人工呼吸器のバックアップ,チューブ管理等を含めた治療計画を整えることが必要である。急性期の気道管理としては陽圧換気が重要であるが,挿管不可の際に備えてECMOの準備も必要と考える。

  • 鈴政 俊, 宇野 光祐, 塩谷 彰浩, 荒木 幸仁
    2025 年76 巻6 号 p. 339-345
    発行日: 2025/12/10
    公開日: 2025/12/10
    ジャーナル 認証あり

    輪状甲状膜切開キットは緊急時の気道確保や術後の気道分泌物を吸引する目的として,主に使用されている。輪状甲状靭帯穿刺・切開術を簡便に行える一方で,処置に伴う出血や縦隔気腫,気胸,声帯麻痺などの合併症も報告されている。今回われわれは,輪状甲状膜切開キットの気管カニューレが誤挿入された2症例の対応を経験したので報告する。症例1は肺腫瘍に対する術後の吸痰目的に輪状甲状膜切開キットが使用されたが,気管カニューレが気管後壁を貫通し右胸腔内に迷入していた。症例2は膵頭部癌に対する術後の吸痰目的に同処置が行われたが,気管カニューレが声門上部から声門下部に向かって挿入されていた。いずれも穿刺部位や方向,挿入後の確認が不十分であることが原因であった。当科へのコンサルテーション同日に誤挿入された気管カニューレを抜去し,外科的気管切開術を行って対応した。われわれは気管食道領域の診療に携わる医師として,輪状甲状膜切開キットの特徴を理解し,合併症の対応を迅速で正確に行うこと,さらにキットの取り扱いについて広く啓蒙することが重要であると考えられた。

  • 波多野 雅輝, 長谷川 智宏, 中村 一博, 渡邊 雄介
    2025 年76 巻6 号 p. 346-350
    発行日: 2025/12/10
    公開日: 2025/12/10
    ジャーナル 認証あり

    本報告は,ステロイドネブライザー療法の長期使用により医原性クッシング症候群(ICS)を発症した20代女性の症例である。患者は声優・ライバー(raiba-,live streamer)であり,音声酷使による声帯炎・声帯結節に対してステロイドネブライザー療法を開始した。数カ月後,満月様顔貌や下腿浮腫が出現し,血液検査でACTH,コルチゾールなどが低値を示したため,ICSと診断された。ネブライザー療法を中止したところICSの症状は改善したが,声帯結節は悪化したため,喉頭微細手術を行った。ネブライザー療法は喉頭疾患に使用されるが,ステロイドの長期使用は副腎皮質機能低下症のリスクがある。本症例では,デキサメタゾン吸入液の連続長期使用がCRH-ACTH-コルチゾール系を抑制し,ICSを発症させたと推察される。漫然とステロイドネブライザー療法を行わず,経過中は喉頭をよく観察し副作用に注意しつつ,休薬期間を設け適切なネブライザー管理を行う必要がある。

  • 小林 祐太, 石井 亮, 東 賢二郎, 橋本 光, 安達 美佳, 香取 幸夫
    2025 年76 巻6 号 p. 351-357
    発行日: 2025/12/10
    公開日: 2025/12/10
    ジャーナル 認証あり

    舌下神経電気刺激療法は睡眠中,舌下神経を電気刺激することで舌根部気道を確保する,閉塞性睡眠時無呼吸(obstructive sleep apnea, OSA)に対する新規治療である。OSA治療の第一選択である持続気道陽圧療法(continuous positive airway pressure, CPAP)でアドヒアランスを保てない患者に対して米国を中心に普及が進んでいる。本邦でも2021年6月に保険収載され,その実施件数は徐々に増えている。舌下神経電気刺激装置埋込術では神経刺激カフを舌下神経に留置する必要があるが,舌下神経の舌を突出または硬化させる分枝を含み,かつ,舌を後退させる分枝を除く必要がある。この分岐点はfunctional breakpoint(FB)と呼ばれ,術中はNerve Integrity Monitor(NIMTM)を用いて同定を行うが,これは必ずしも容易ではない。今回,当科で舌下神経電気刺激装置埋込術を行った2例について,顕微鏡,NIMTMを用いて舌下神経を追跡したにもかかわらず,神経刺激カフの適切な留置部位決定が難しかったことを経験した。FB同定時に注意すべき点について考察する。

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