日本気管食道科学会会報
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最新号
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原著
  • 濵田 充, 髙橋 紘樹, 及川 敬太
    2026 年77 巻3 号 p. 209-218
    発行日: 2026/06/10
    公開日: 2026/06/10
    ジャーナル 認証あり

    制御困難な難治性誤嚥に対し,重症心身障害児(者)には誤嚥防止手術が広く行われている。今回,当科で2002~2023年に施行した42例を後方視的に検討した。手術時年齢中央値は7.5歳(0~54歳)で,6歳以下が約半数を占め,原疾患は周産期障害が最多であった。術式は年齢や気管切開の有無に応じて喉頭気管分離術または気管食道吻合術を選択した。術後合併症として瘻孔形成や肉芽増殖を認めたが,致死的な気管腕頭動脈瘻は1例もみられなかった。術後観察期間中央値は3年9カ月(2カ月~21年1カ月)で,半数以上は5年以上,12例(28.6%)は10年以上追跡可能で,20年以上の症例も存在した。長期にわたる多数例の報告は稀であり,本術式が生命予後改善に寄与する可能性が示唆された。さらに,20年以上の観察例を含めても気管腕頭動脈瘻を認めず,適切なカニューレの選択とともに長期にわたる定期的な外来診察が気管カニューレ不適合に伴う肉芽や出血の予防に寄与したと考えられた。喉頭気管分離術・気管食道吻合術は根治的な誤嚥防止手術として,QOL改善に加え,長期予後と安全性の面でも有用性が期待される。

症例
  • 柳生 健吾, 津田 潤子, 中林 遥, 橋本 誠, 菅原 一真
    2026 年77 巻3 号 p. 219-227
    発行日: 2026/06/10
    公開日: 2026/06/10
    ジャーナル 認証あり

    喉頭悪性リンパ腫は稀な疾患であり,中でも末梢性T細胞リンパ腫(PTCL)は非Hodgkinリンパ腫の約7%とされ,喉頭原発PTCLは極めて稀である。放線菌症はActinomyces属による炎症性疾患であるが,実際に悪性腫瘍と合併することがあり,しばしば診断に難渋する。今回われわれは当初喉頭放線菌症と診断し加療を開始したが,のちに喉頭原発PTCLの診断となった症例を経験した。症例は67歳男性。全身麻酔下に脊髄腫瘍摘出術を施行後から咽頭痛が持続し,近医耳鼻咽喉科で喉頭蓋病変を指摘され当科へ紹介となった。喉頭内視鏡検査で喉頭蓋舌面に白苔を伴う潰瘍性病変を認め,組織生検を施行したところ,放線菌の菌塊と高度炎症細胞浸潤を認め放線菌症と診断した。抗菌薬加療を開始したが,自覚症状および喉頭所見の改善は乏しく増悪を示した。治療開始2週間後に再度組織生検を施行したところPTCLの診断となったため,当院血液内科へ転科した。化学療法開始1週間後に疼痛は消失,1カ月後に喉頭所見も治癒し,現在再発なく経過している。喉頭悪性リンパ腫は診断が難しく,放線菌症を含めた炎症性疾患と診断後も改善が乏しい場合には,組織生検の反復や採取方法を検討し,再度診断を見直すことが重要である。

  • 上野 雄介, 橘 智靖, 古川 智英子, 信久 徹治, 安藤 瑞生
    2026 年77 巻3 号 p. 228-233
    発行日: 2026/06/10
    公開日: 2026/06/10
    ジャーナル 認証あり

    木箸異物が上咽頭に埋没した成人例を経験したので報告する。患者:24歳,男性。主訴:後頸部痛。箸を口にくわえた状態で顔面を打ち,箸が咽頭に刺さった。箸先が欠損していることに気づいたため,当科を紹介され受診した。鼻咽腔内視鏡では,上咽頭後壁右寄りに粘膜の刺創および血液の付着を認めた。CT所見上は上咽頭に気腫像を疑わせる所見は認めたが異物と確信が得られず,再診時のMRI所見にて上咽頭の椎前筋背側に異物が明瞭に描出された。全身麻酔下,経口腔的に内視鏡を併用しながら異物を検索したところ,椎前筋の深部に埋没する木片を同定し異物を摘出し得た。上咽頭異物においては,素材および局在に応じて適切な画像評価および摘出法を選択することが重要である。

  • 松野 文香, 伊藤 伸, 原 聡, 肥後 隆三郎, 松本 文彦
    2026 年77 巻3 号 p. 234-239
    発行日: 2026/06/10
    公開日: 2026/06/10
    ジャーナル 認証あり

    転移性甲状腺癌は,血行性やリンパ行性転移による二次性の悪性腫瘍であり,頻度が低く,その原発巣としては腎癌や肺癌,乳癌が多い。大腸癌治療ガイドラインでは,血行性転移の治療方針として,切除可能な場合は切除を考慮するとされている。今回われわれは,直腸癌の甲状腺,頸部リンパ節転移に対し手術加療を行った1例を経験した。症例は50歳代の男性。右頸部腫脹を主訴に当科を受診した。X−3年に下部直腸癌に対し腹腔鏡下直腸超低位前方切除術が施行された。術後化学療法を行うも,X−2年に肝転移を認め切除術を施行,X年に右頸部腫脹を認めたため,画像検査を施行したところ右頸部リンパ節腫脹,右甲状腺腫瘍を認め当科に紹介となった。頸部超音波検査で甲状腺右葉に25 mm大の充実性腫瘤を認め,右頸部にも腫大したリンパ節を認めた。穿刺吸引細胞診で転移を疑う所見であったため,甲状腺右葉切除術および右頸部リンパ節郭清術を施行した。術後に病理で直腸癌からの転移と確定診断された。転移性甲状腺癌に対する手術加療は局所進行による嗄声や気道閉塞,嚥下困難などを回避するために有用であると考えるが,本症例では術後早期に郭清野内の頸部リンパ節再発を認めている。細胞診で転移性甲状腺癌を示唆された場合には,原発病変の経過や状況を考慮し,患者本人と十分に相談して方針を決める必要があると考える。

用語解説
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