日本気管食道科学会会報
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原著
  • 植野 広大, 鈴木 邦士, 齋藤 賢将, 篠原 元, 三浦 昭順
    2024 年 75 巻 4 号 p. 245-251
    発行日: 2024/08/10
    公開日: 2024/08/10
    ジャーナル 認証あり

    高齢者の食道癌診療では生理機能や併存疾患,社会背景などを考慮して治療方針を検討する必要があり,治療方針の決定には苦慮することが多い。今回,高齢者Stage II/III食道癌に対する治療の成績を検証し,治療選択の際のE-PASSスコアの有用性を明らかにすることを目的として後方視的な検討を行った。対象は1995年から2021年の間に当院で食道癌Stage II/IIIと診断された80歳以上の症例とし,手術群,Chemoradiotherapy(CRT)群,Best supportive care(BSC)群の3群に大別して検討した。全生存期間中央値は手術群1602日,CRT群519日,BSC群344日であり,手術群,次いでCRT群で生存期間が長かった。E-PASSスコアのうちPRSは手術群とCRT群で差がなく,両群ともBSC群より低かった。手術群とCRT群を根治治療群とし,BSCとのカットオフ値を算出するとPRS 0.668であった。手術群において,術後合併症を発症した症例では合併症を発症しなかった群と比較して生存期間が短かった。E-PASSスコアのうちPRSとCRSは術後合併症を発症した症例で高値であり,そのカットオフ値はPRS 0.499,CRS 1.078であった。80歳以上のStage II/III食道癌でも,手術,次いでCRTにより生存期間の延長に期待することができ,その治療方針を決定する際には,E-PASSスコアが有用である可能性が示された。

症例
  • 石川 数馬, 伊藤 伸, 肥後 隆三郎
    2024 年 75 巻 4 号 p. 252-255
    発行日: 2024/08/10
    公開日: 2024/08/10
    ジャーナル 認証あり

    アミロイドーシスは,アミロイドが全身臓器に沈着することによって機能障害を引き起こす疾患群である。心臓や消化管などの臓器に沈着する全身性アミロイドーシスと,喉頭などに限局して沈着する限局性アミロイドーシスに分類される。喉頭に生じるアミロイドーシスは喉頭良性腫瘍の中でも稀な疾患である。本症例では,喉頭アミロイドーシスと診断されるも,診療を自己中断され再診時には扁平上皮癌を合併していた。喉頭癌に対する放射線治療により喉頭癌だけでなくアミロイドーシスにも治療効果が認められた。以上から喉頭アミロイドーシスでは,悪性疾患を併発する可能性を踏まえ全身麻酔での喉頭微細手術による生検が推奨される。また,アミロイドーシスに対する放射線治療の有用性に関しては,今後の研究や臨床の積み重ねによる検討が待たれる。

  • 緒方 政彦, 石田 知也, 峯崎 晃充, 首藤 洋行, 田中 成幸, 相良 駿介, 佐藤 有記, 嶋崎 絵里子, 倉富 勇一郎, 杉山 庸一 ...
    2024 年 75 巻 4 号 p. 256-261
    発行日: 2024/08/10
    公開日: 2024/08/10
    ジャーナル 認証あり

    喉頭に発生する軟骨腫瘍の多くは低悪性度腫瘍で,手術摘出が治療の基本となる。摘出範囲や喉頭温存の可否についてはその発生部位や進展範囲を考慮し,決定する必要がある。輪状軟骨に発生した軟骨肉腫に対し,喉頭温存手術を行った症例について報告する。症例は60代後半の男性。呼吸苦を主訴に受診した。声門下に粘膜下腫瘤性病変を認め,各種画像検査にて輪状軟骨原発の低悪性度の軟骨肉腫を疑い,喉頭温存手術を行った。病理組織診断にてGrade Iの軟骨肉腫と診断,術後約4年経過したが再発転移はみられていない。気管孔は残存しているが,良好な発声,嚥下機能が保たれており,高いQOLを維持できている。術後に広範な輪状軟骨欠損を伴う場合でも,喉頭温存手術を行うことは選択肢として考慮される。一方では術後喉頭狭窄をきたした場合,慎重な気道管理を行う必要があることも留意すべきである。

  • 飯沼 亮太, 山田 達彦, 黒木 将, 柴田 博史, 大橋 敏充, 久世 文也, 小川 武則
    2024 年 75 巻 4 号 p. 262-268
    発行日: 2024/08/10
    公開日: 2024/08/10
    ジャーナル 認証あり

    固形癌の転移診断には18F-fluorodeoxyglucose positron emission tomography(FDG-PET)を用いるが,甲状腺腫瘍の質的診断を行うことは困難であること,偽陽性があることが問題となる。今回,甲状腺濾胞型乳頭癌頸部リンパ節転移症例における術前FDG-PETで斜角筋間に陽性所見を認めた線維腫症例を報告する。症例は28歳女性。X年Y月に右頸部腫脹を自覚し,Y+3月に前医耳鼻咽喉科を受診した。頸部造影CTと頸部ガドリニウム造影MRI,穿刺吸引細胞診にて,原発不明癌頸部リンパ節転移疑いと診断された。原発巣探索の目的でFDG-PET施行後,右上頸部リンパ節に対して摘出生検を行い,甲状腺乳頭癌の転移との診断にて,手術加療目的にY+9月に当科へ紹介となった。甲状腺右葉切除術とD2b郭清術および斜角筋間腫瘍摘出術を行い,甲状腺濾胞型乳頭癌(pT3bN1bM0),斜角筋間腫瘍は線維腫の診断であった。手術後神経障害など認めず,再発も認めていない。

用語解説
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