日本醸造協会誌
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104 巻, 2 号
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解説
研究
  • 藤森 正宏, 柚木 恵太, 後藤 英嗣, 塚本 義則, 大西 正男
    2009 年 104 巻 2 号 p. 123-130
    発行日: 2009年
    公開日: 2016/01/18
    ジャーナル フリー
    本研究では,醸造酢中のC18111酸の由来を究明するため,純米酢でモデル発酵試験を行い,原料および各工程での脂肪酸成分をキャピラリGCで分析し検討した。
    (1) 3銘柄5製品の純米酢中には,C18111酸が全脂肪酸成分に対し1.6%~15.9%検出され,C18111酸/(C1819酸+C18111酸)比(以下,バクセン酸値)は0.21~0.54であった。
    (2) 純米酢の原料である精白米と米麹ならびに酵母菌体中にC18111酸はほとんど存在しなかった。一方,工場で生産に使用している酢酸菌とNBRC菌体中のC18111酸は全菌体脂肪酸の40%前後を占め,バクセン酸値はそれぞれ0.87と0.73と極めて高い値を示した。
    (3) 糖化および酒精発酵後に可溶部に移行したC18111酸量はいずれも微量(1%以下)で,両バクセン酸値はそれぞれ0.03と0.02と低値であった。
    (4) 2タイプの酢酸菌で発酵させたモデル純米酢中のC18111酸量は,全工程の中で最高値となり,酢酸発酵前に比し,10~20倍増加し,バクセン酸値はそれぞれ0.22と0.47となった。
    (5) 純米酢製品中のC18111酸は,極性脂質画分に濃縮されていることが判明した。
    (6) 純米酢中に検出されたC18111酸の由来は,酢酸発酵の段階で,菌体膜の一部が発酵液中に移行したことを強く示唆するもので,この移行菌体膜の脂肪酸を検出したものと推定される。
  • 奥田 将生, 磯谷 敦子, 上用 みどり, 後藤 奈美, 三上 重明
    2009 年 104 巻 2 号 p. 131-141
    発行日: 2009年
    公開日: 2016/01/18
    ジャーナル フリー
    鑑評会の出品酒を実験材料として,窒素(N)や硫黄(S)含量と50°C1ヶ月間貯蔵後のポリスルフィド生成量の関係を検討した。清酒中のNとS含量には強い正の相関関係がみられ,清酒中の硫黄化合物の多くは原料米のタンパク質に由来することが推察された。また,全硫黄化合物の2~5割がアミノ酸であることがわかった。50℃1ヶ月貯蔵により生成するポリスルフィドについて,DMDSは全試料で検知閾値以下であったが,DMTSは約半数の試料において検知閾値を上回った。貯蔵前清酒中の成分との関係において,DMTS,DMDS含量は,全N及びS含量,アミノ酸態のNやS含量に有意な正の相関関係がみられた。各成分間の偏相関分析の結果,着色度の増加には全Nとグルコース含量が深く関係するのに対し,ポリスルフィドの生成にはアミノ酸態のS含量が深く関係することが示唆された。以上から,硫黄化合物の多い清酒は老香が生じやすいというこれまでの推定を成分的に裏付ける結果が得られた。
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