研究では,難脱色性の糖蜜色素を含み,その安価で効率的な処理方法が求められている黒糖焼酎蒸留粕を,栄養源を添加しなくても脱色する糸状菌
P. oxalicum d株を単離し,活性汚泥法とオゾン処理を併用した処理方法の検討を行った。本研究で得られた結果を以下に列挙する。
1) 自然界から広く黒糖焼酎蒸留粕を脱色する微生物の探索を行ったところ,単離した糸状菌
P. oxalicum d株は栄養源を添加しなくても,3倍希釈の黒糖焼酎蒸留粕を30℃,72時間の振とう処理で最大47%脱色した。
2) 単離した糸状菌
P. oxalicum d株は,黒糖焼酎蒸留粕中の有機物を利用して旺盛に増殖し,黒糖焼酎蒸留粕を脱色するだけでなく,廃液中のDOC,DTN及びDTPをそれぞれ51%,78%,86%除去した。
3) 菌糸体への吸着試験の結果より,
P. oxalicum d株による黒糖焼酎蒸留粕の主要な脱色機構は,菌体への糖蜜色素の吸着が考えられた。また,生菌体の方が死菌体より糖蜜色素の減少量が多く,生物学的な脱色の関与も考えられた。
4)
P. oxalicum d株により黒糖焼酎蒸留粕を処理することによって,オゾンによる脱色処理にかかる時間は,処理前の2分の1まで短縮され,さらに後段に活性汚泥処理を行うことで6分の1まで短縮された。
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