清酒醸造では小仕込みと実際の醸造において製成酒の成分含量,特に有機酸含量が変化することが多い。小仕込みの結果と実際の醸造の結果を相似させることを目的として,小仕込みにおける仕込み容器の容量や形状,仕込み総量を変えることによる製成酒の成分含量の変化について検討した。得られた結果は以下のとおり。
(1)さまざまな形状の容器4 種類を用いて総米100gの小仕込み試験を行った結果,容器の空間高さ・体積,もろみ表面積は値が大きくなるほどリンゴ酸,乳酸が減少,コハク酸が増加した。もろみ高さはそれらと逆の傾向を示した。なかでも,もろみ表面積は強い影響を与えた。
(2)2000mL,1000mL,500mL,250mL のシリンダーを用いて,総米100g の小仕込み試験を行った結果,容器の空間高さ,空間体積,もろみ表面積の値が大きくなるほどリンゴ酸,乳酸が減少し,コハク酸が増加した。もろみ高さはそれらと逆の傾向を示した。
(3)密閉ビンを用いて総米100g,200g,300g,400gの小仕込み試験を行った結果,空間体積・高さが大きくなるとリンゴ酸,乳酸が減少し,コハク酸が増加した。もろみ高さ・体積はそれらと逆の傾向を示した。
(4)2000mL,1000mL,500mLのシリンダーの高さを調節して総米100gの小仕込み試験を行った結果,空間体積・高さ,もろみ表面積が大きくなるほどリンゴ酸,乳酸が減少,コハク酸が増加した。もろみ高さはそれらと逆の傾向を示した。その影響は空間体積・高さに比べて,もろみ表面積・高さで顕著であった。
(5)製成酒のリンゴ酸,コハク酸,乳酸の含量は仕込み容器,容器空間の違いに影響されることが明らかになった。有機酸含量の相違は,仕込み容器の違いで生じる嫌気的環境の変化に関係しており,それがTCA回路及びグリオキシル酸回路における酵素の働きに影響を与えるのではないかと推察している。
抄録全体を表示