清酒用きょうかい酵母(K-701,K-901)及びリンゴ酸高生成酵母(MT-K1401-8,FKW-A245)について,培養法(静置培養,軟寒天培養,振盪培養,バッフル培養)ごとにおけるリンゴ酸生成に関連する酵素の活性,及び有機酸生成量について検討した。酵素活性は,ミトコンドリア画分及び細胞質画分について測定し,その結果を基に酵母のリンゴ酸生成機構について考察した。それらの結果を以下に要約する。
1.培養法で比較すると,すべての酵母菌株で,また,ミトコンドリア,細胞質の両画分において,振盪培養及びバッフル培養の好気的条件よりも静置培養及び軟寒天培養の嫌気的条件で,リンゴ酸の高生成及びMDHの高い活性が見られた。
2.MDH活性は,全ての菌株に,また,ミトコンドリア,細胞質の両画分に存在した。K-701及びK-901では,すべての培養法において,ミトコンドリア画分よりも細胞質画分に若干高いMDHの比活性が見られた。これに対して,MT-K1401-8及びFKW-A245では,静置培養及び軟寒天培養では細胞質よりもミトコンドリア画分で高く,逆に振盪培養及びバッフル培養ではミトコンドリアよりも細胞質画分でやや高かった。
3.リンゴ酸の生成に関し,好気的条件ではTCA回路の酸化的反応の促進に伴いリンゴ酸が減少し,嫌気的条件ではTCA回路の還元的反応,及び細胞質のMDHを介する経路の活性化によりリンゴ酸が増大したと考えられた。
4.リンゴ酸高生成酵母であるMT-K1401-8は,他の酵母と比較して嫌気的条件で最も多量のリンゴ酸の生成と,ミトコンドリア,細胞質の両画分で高いMDH活性を示した。また,ミトコンドリア画分で最も高いMDH活性を示したことから,本酵母はきょうかい酵母に比べて上記3.の嫌気的条件でのMDHの活性化,特にミトコンドリア画分のMDHで促進する経路が活性化しているものと考えられた。
5.もう一つのリンゴ酸高生成酵母であるFKW-A245は,嫌気的条件でMT-K1401-8に次いで多量のリンゴ酸を生成したが,他3種の酵母と比較してMDHは低い活性を示した。このことから,本酵母はTCA回路及び細胞質のMDH以外に,他のリンゴ酸生成経路が存在する可能性が考えられた。
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