近年,各地で特徴のある酵母の開発が盛んにおこなわれている。その方法として,花などの天然物からの新規酵母の分離があるが,もう一つの方法が,過去に分離された酵母の有効利用である。本稿では,1920年代に広島県の酒蔵から分離された歴史の古い酵母である広島6号酵母について,その詳しい性質と胞子形成が良好なことを利用した交配育種について解説していただいた。
近年,独自の酒質を追い求めるため,原料処理や醸造微生物へのこだわりに加え,造りの面でも原点回帰とも言える生酛系酒母に取り組む蔵元が増えてきた。生酛系酒母は複雑な微生物の遷移を必要とするため,安定的に製造することは非常に難しい。本稿では,安定的な生酛系酒母製造を可能にするため,酸基醴酛の概要および実際に選抜した乳酸菌を用いた酒造製造方法にについて解説いただいた。温故知新という言葉のとおり,従来の技術にとらわれない新たな製造方法の開発にもつながることから,是非ご一読をお勧めしたい。
淡口醤油は食材の色や風味を生かしつつ,だしの風味も引き立てる特長を持つことから,広く料理に用いられている。近年,淡口醤油は濃口醤油よりもかつおだし風味の閾値が低く,かつおだしの減塩効果を増強することも明らかになった。本稿では,おすまし液を用いた実際の食シーンに近い実験系を用いて,淡口醤油がかつおだし風味を生かす要因について解説していただいた。
芋焼酎製造時に,ペクチンメチルエステラーゼがペクチンのメチル基に作用しメタノールが生成される。このメタノールは,一旦生成すると除去することが困難である。そこで,我々は,粒状の形状を維持しながらメタノール生成量を低減化できる麹の改質について検討した。その結果,麹水分を40%に調整し,65~70℃で1~4 h加熱処理することにより,形状を維持した状態でメタノール生成量を低減化することができた。改質処理は麹菌の種類に関係なく,A. luchuensis及びA. oryzaeのどちらでも同じ効果が確認された。さらに,原料芋の系統(白系,紫系,橙系)や加熱方法(蒸煮,電子レンジ)は,改質麹のメタノール量の低減効果に何ら影響はなかった。また,改質麹を40℃で通風乾燥してもメタノール量の低減効果は保持されており,乾燥麹としての活用も可能であることがわかった。
なお,本研究の成果は特許出願中(特願2021-000952)である。
α-EGとRPを高めたどぶろく醸造法を開発した。味噌醤油麹で仕込み当初からα-グルコシダーゼ剤を添加することによりα-EGは0.8%から1%程度に上昇した。RP含量はコシヒカリで115-120㎎/100 mL,低グルテリン米のゆめかなえで680-690㎎/100 mLとなった。以上の結果からα-EGの線維芽細胞を活性化してコラーゲン密度を高める効果とRPの便通改善効果や肥満抑制効果を期待するにはどぶろく100 mL/日で有効であると推察できる。
15℃におけるアルコール分(Alc[15]),エキス分(Ex[15])を,20℃における値(Alc[20],Ex[20])に温度換算する,以下の近似式が得られた。
Alc[20]≒(1.0045-0.000041Alc[15]-0.000018Ex[15])・Alc[15]
Ex[20]≒(0.9991-0.000041Alc[15]-0.000017Ex[15])・Ex[15]
(アルコール分24%以下,エキス分25g/dL以下)
標準試料,清酒,ビール,果実酒の計72点について,実測値と当該近似式による近似値とを比較したところ,その誤差は±0.0033%以内(Alc),±0.0030g/dL以内(Ex)であり,実用的な式であることが確認できた。