“香り”は食品や飲料のおいしさを決定付ける大きな要素である。食品や飲料の香りに関する多くの研究のおいては,「特徴への寄与度が高い成分」や「濃度の高い成分」に着目されてきた。本稿では,食品や飲料中で「閾値(人が知覚できる最少の濃度)以下で含まれる成分」が果たす役割について,これまでの報告を基に概説する。著者による既報の「76香気成分を用いたビール香気の再構築」では,たった9成分のみが閾値以上の濃度でビール中に含有されていると報告している。大多数の「単独では特徴に寄与し得ない成分」がビールの香りに果たす役割についても,既報を基に解説する。
全国醤油品評会は,高品位の醤油を顕彰することにより,「しょうゆの品質向上と表示の適正化を図り,消費者の皆様に良質のしょうゆを提供し,合わせて業界の健全な発展に寄与することを目的」に,毎年開催されており,最高賞は農林水産大臣賞である。昭和48年の発足以来の本品評会の歴史と今後について解説していただいた
味噌が日本で古くから親しまれてきた発酵食品であることは論を待たない。近年は様々な視点からの機能性研究も進められている。本稿では味噌についてその分類や成り立ちから改めて整理したうえで,機能性介入試験結果について解説いただいた。塩糀・糀甘酒への展開や新たな価値を提供する手法も興味深く,時代とともに変化する味噌の世界の一端を感じていただければ幸いである。
令和2年(令和2年1月~12月)に国内で発表された酒類に関する研究報告書を収録した。抄録したものは研究報告のみとし,総説,解説記事及び特許については筆者と題目を掲げ,学会およびシンポジウムの口演は除外した。
本格焼酎・泡盛の香気成分と官能評価用語の関係性を明らかにすることを目的として16の成分について,検知閾値及び認知閾値の決定を行った。また,得られた結果を用いてOAVを算出した結果,13成分については本格焼酎・泡盛の品質に寄与があることが示唆された。併せて各成分に対応する官能評価用語を抽出した。本研究の16成分に加え,本格焼酎・泡盛の香気に寄与するものとしてこれまでに閾値,官能特性や香気寄与度の報告がある39成分の併せて55成分の中から,品質への寄与が明確で,香気特性が異なる32成分を選抜し,標準見本候補物質を設定した。当該候補物質を用いて,香気特性による分類試験を実施した結果,各香気成分は8つのグループに大別されることが確認された。今後は得られた結果を基に本格焼酎・泡盛フレーバーホイールを作成する予定としている。
1.酒米分析結果を踏まえた出品酒生産年度の特徴として,消化性Brixが出品酒のグルコースと極めて高い正の,火入れまでの日数,アルコール,日本酒度等の発酵経過に関する項目と高い負の相関関係が認められ,また,グルコースと総合評価の間に相関関係が認められ(p=10%),グルコース濃度が高いと総合評価は良好であった。
2.相関行列から出発した因子分析の結果,バリマックス回転後の因子1は,原料米の溶解性,醪の発酵性に関し,消化性Brixとグルコースが高く,総合評価が良いことに寄与し,因子2は,i-AmOHが高く,アル添量,酸度が低く,濃さ・きれいさに関する因子と解釈した。この結果は,清酒の味の基本的構造を提案した佐藤らの報告に沿った解釈が可能であった。
3.香欠点指摘数の少ないグループについて,成分分析値の出品年度毎の総合評価への影響を主成分分析により解析した。その結果,寄与の大きい項目としてEt-Cap,グルコース,日本酒度,アミノ酸度,i-AmOAcが選択された。しかし,Et-Cap及びグルコースの総合評価への寄与は,パネルの審査基準が変わることによって影響を受けたと推察された。