酒類はアルコールを含んでいるため,微生物汚染による食中毒はほとんどないものと考えられている。しかし,芽胞を持つ食中毒菌は熱などに極めて強いので,潜在的な汚染菌となる可能性がある。本稿の筆者らは,芽胞菌であるセレウス菌が清酒の製造工程において増殖することはなく,清酒は微生物学的に安全であることを実証した。
醤油は日本の伝統的発酵調味料であり,和食のユネスコ無形文化遺産登録にともない和食に欠かせない調味料として世界的にも注目されている。しかし,日本国内での生産と消費は,食生活の変化により減少傾向にある。そのような中で醤油業界は,20年ほど前から醤油の復権をめざした醤油PR事業をスタートさせている。本稿では,多様なPR事業の内容を解説した。
清酒,焼酎,醤油などの仕込みに必要な機械,器具,用品,薬品などの販売をする会社を醸造用品業者という。日頃は「用品屋さん」と呼ばれ,お客様のニーズを考え小物から大型機器までの物品やサービスを提供している。これらの業者と醸造機械メーカー,充填機器メーカーなどの約80社で構成しているのが日本醸造用品組合である。組合を設立し今年で101年目を迎える。この節目に組合の理事長に就任したことに責任を感じるとともに,先人の功績を後世に語りつぐ必要性を強く感じた。日本醸造協会誌編集部からこの機会に,用品業の歴史をまとめたらどうかとのお話をいただき本稿を執筆することとした。
本研究ではサトイモ焼酎の製造と特徴香気および焼酎粕の機能性の探索を試みた。サトイモのデンプン価を測定し,サツマイモ焼酎の仕込み配合を参考とし,二次もろみのアルコール度数が同程度になるように主原料由来のデンプン量を合わせ,さらに汲み水も調整した仕込み配合表でサトイモ焼酎を仕込んだ。サトイモは,皮付きのもの(皮あり)または,皮を除いたもの(皮なし)を用いて焼酎を製造し,サツマイモ焼酎と比較した。サトイモ焼酎のもろみは,サツマイモ焼酎とほぼ同等に発酵した。このことからサトイモの外皮および外側部分は発酵に影響を与えないことが確認された。またサトイモ焼酎のもろみ酸度はサツマイモ焼酎よりも高く,サトイモの成分が酵母の生育にストレスを与えたと考えた。蒸留歩合はサツマイモより,サトイモの蒸留歩合が低いものの,十分蒸留できると判断した。焼酎の官能評価より,サツマイモ焼酎と比べて,サトイモ焼酎の香りは草様が強いことが特徴であった。味は,渋味,苦味,濃厚さが強い傾向であることが分かった。香気成分分析よりサトイモ焼酎は,サツマイモ焼酎より果実香や花様の香りを有するエステル化合物やテルペン化合物の含量少なく,一方で草様やセッケン様の香りを有するアルコールやアルデヒドを多く含むことが明らかになった。加えて,サトイモ焼酎粕の上清液には,抗糖化活性と強いACE阻害活性を持つことを確認した。このことから,サトイモ焼酎の香味はサツマイモ焼酎と比べて草様が強く,果実香と花様の香りが弱い特徴を持つが,全体としては全ての項目に強弱なく,均整が取れていることが確認された。さらにサトイモは,焼酎粕の有効活用も期待できる原料であることが示された。
米麹と主原料を別々に仕込む二次仕込み法と呼ばれる焼酎特有の仕込み法に,中国の蒸留酒である米香型白酒の仕込み法である固体糖化を融合した新規な仕込み法による芋焼酎の製造の可能性について検討した。その結果,最適な糖化条件は,糖化温度は60℃,糖化時間は24時間,麹歩合は10%であり,この時の糖化率は48.5%であった。サツマイモに含まれるスクロースが米麹由来の酵素により分解されることが分かった。麹歩合を上げても,糖化率は向上しなかった。これは,α-アミラーゼの蒸し米への無効吸着が原因であることが分かった。ニューラーゼF3G(プロテアーゼ)を添加すると糖化率は70 %に向上した。最適な糖化条件で芋焼酎を製造すると,従来の仕込み法と比べ発酵は遜色なかった。得られた焼酎は,従来法の焼酎と比べ,香りは焼芋様や花様が強く,味は苦味の評点が高くまた,キレと濃厚さがあった。また,香気成分は同定された42成分のほとんどが,固体糖化焼酎が従来焼酎と比べて僅かではあるが高濃度に含まれ,その内17成分が両焼酎間の濃度に有意差があった。これらのことから,焼酎製造における二次仕込み法に中国の米香型白酒の固体糖化工程を融合する新規な芋焼酎製造が可能であるとともに,酒質の多様化が期待できることが分かった。
In champagne production, malo-lactic fermentation(MLF)is basically performed in the vinification of the base wine to remove malic acid in the wine. The removal of malic acid is extremely important to prevent the growth of wild lactic acid bacteria after the secondary fermentation process. On the other hand, some champagne producers make champagne from a base wine which is made without MLF in order to enhance the aging potential. However, the effects of MLF have not been investigated in traditional sparkling wine making. We investigated the effect of the MLF during the base wine vinification in the traditional sparkling wine making from Koshu, and clarified the changes in its composition. As a result, in the sensory evaluations after short-time storage in this study, there were no clear differences between sparkling wines with or without MLF. On the other hand, the sparkling wine made from overripe grapes with MLF showed a lower evaluation score. Thus, it is suggested that a single bottle of sparkling wine without MLF could be contaminated with wild lactic acid bacteria. Therefore, the importance of microbiological stabilization by MLF before a second fermentation was clarified.