坂口フラスコやバッフル付三角フラスコによる振盪培養は,微生物を取り扱っている者にとってはごく一般的な作業である。培養に当たっては,先輩から受け継いだ方法で何気なく実施しているのが普通で,フラスコ内部の状態について考えたことは少ないのではないだろうか。本稿の著者らは,見過ごされがちな振盪フラスコ内の環境を実験的に検証し,最適な培養のために注意すべき事項を明らかにした。
米麹は蒸米に麹菌を増殖させたもので,清酒などの日本の伝統的発酵食品の製造において,デンプンやタンパク質の分解に欠かすことができない役割を果たしている。米麹では菌糸が米粒内に侵入することが重要視されてきたが,米粒内の菌糸の詳しい状態については不明な点が多かった。本稿では,米麹内で,麹菌がどのように増殖するのかについて細胞レベルで詳細に解析した結果を解説した。
一部の醤油事業者においては,醸造設備の洗浄・殺菌と醤油乳酸菌スターターの添加によってヒスタミン低減を図っているが,多くは通年,低減状態を維持するのが難しく,時として高いヒスタミン生成をきたして困っている。以前,実証試験を介して低減化対策を模索した時の経験とその後の動向を踏まえた,大局的な観点からの提言である。実際の問題解決の足掛かりとなるものである。
窒素源として硫酸アンモニウムを用いた際に清酒酵母がビタミン非要求性を示すことを利用し,清酒製造用酵母の分離を目的とした抗菌物質を添加しない新たな集積培地(BV培地)を設計した。BV培地とともに実用酵母の分離実績があるBY培地,KY培地を用いて八重桜の花からの新規清酒製造用酵母の分離を試みたところ,BY培地,KY培地からは取得できなかったが,BV培地から清酒製造に利用できる可能性がある酵母を取得することができた。分離酵母BV-2株とBV-3株は,リンゴ酸,コハク酸,酢酸エチル,酢酸イソアミル,カプロン酸エチルの低生成という共通した特徴を有していたが,その含有量は有意な差が見られ,また製成酒のアルコール濃度や酸度にも有意な差が見られたため異なる株であると考えらえた。
焼酎・泡盛を含む主要なスピリッツの英文品質評価用語について,英国における酒類品評会受賞酒の公開されたテイスティングノートを用いて計量テキスト分析の手法により解析した。
形態素解析により得られた用語の対応分析から,第一にウイスキー,ブランデー,ラムなどの樽貯蔵に由来する香味特性とジンやアクアビットのボタニカルに由来する香味特性の用語の違いが大きく,次いで白酒,焼酎,泡盛などアジア系蒸留酒に関連性がある香味特性の用語の違いが大きいことがわかった。焼酎・泡盛では,acidity,roasted,umamiなどが特徴的な関連語であった。さらに,グループ化した香味特性や焼酎の原料別,テイスティングのタイミング毎に特徴的に見られた評価用語を解析し,それぞれの起因物質等について考察した。
焼酎・泡盛の評価用語について開催年の推移から,具体的な香味特性を示す用語の使用が増加していく傾向が見られた。また,受賞区分別に解析を行い,香味量の多さを示す用語と上位区分との関連性が高かった。