醸造物の色は,製品の特徴を形づくる重要な要素の一つであり,原料に由来するものと製造工程に由来するものがある。アミノ酸やタンパク質と糖によるメイラード反応(アミノカルボニル反応)は,原料には存在しない着色を醸造物に与える代表的な反応である。メイラード反応による色素生成の詳しいメカニズムについては不明な点が多かったが,最近の分析技術の進歩により,低分子の反応生成物の構造が解明され,それらが結合して高分子化する経路が判明しつつある。この分野の第一人者である筆者に最近の進歩を解説していただいた。
酒粕は清酒醸造で得られる固形の副産物で,麹菌や清酒酵母,生もと造りでは乳酸菌も関与するなど,発酵食品といってよいと思うが,発酵食品イメージが十分でなく,酒粕研究者が少ないこともあり,レジスタントプロテインやαエチルグルコシドなど一部の例外を除き,論文,特にヒト試験の論文が乏しい状況にある。これまで酒粕に含まれる機能性成分含量の調査・研究を行ってきた著者に,酒粕の持つ潜在力と,老化抑制や脳機能活性化の可能性について紹介していただいた。
沖縄県固有の蒸留酒である泡盛では,長年貯蔵した古酒が昔から珍重されてきた。泡盛における古酒の育成方法の一つに「仕次ぎ」があり,貯蔵年数の長い古酒に貯蔵年数の短い古酒を順に注ぎ足すことによって,品質の優れた古酒を安定して供給することが可能となる。本稿では,泡盛における仕次ぎの現状と将来に向けての課題について解説していただいた。
ジメチルトリスルフィド(DMTS)は清酒貯蔵中に増加する劣化臭,老香の主成分である。我々は,全国の清酒製造場から収集した清酒の70℃で7日間貯蔵後のDMTS濃度(DMTS-pp)と製造要因との関係からDMTS-ppを増加させる可能性がある4つの製造要因を抽出し検証実験を行った。これら4つの製造要因の中で,使用酵母の違い及び酒母製造法の違い(生もとと速醸法)については,DMTS-ppへの明らかな影響は示されなかった。一方,アルコール添加量を変えて製造した製成酒では,アルコール添加による希釈率以上にDMTS-ppが減少した。水による希釈でもDMTS-ppが減少したことから,DMTS-ppの減少はDMTS生成に関与する成分の希釈が原因であることが示唆された。自動圧搾機と槽による上槽方法の違いについては両法の上槽圧力の違いに着目し,自動圧搾機で上槽圧力の異なる画分を比較した。あらばしり画分や中垂れ画分に比べ,上槽末期の責め画分でDMTS-ppが高くなることを見出した。その理由として上槽末期に増加することが知られている銅,亜鉛,鉄等イオンにはDMTS-ppを増加させる効果は認められず,上槽末期の画分で260 nmの吸光度が増加していることから,責め画分におけるDMTS-pp増加は酵母内容物漏出の影響であることが示唆された。
沖縄で新規に開発された3回蒸留泡盛に特徴的な酒質を解明すべく,市販の泡盛を出発原料とし,小型蒸留機による再留試験を実施した。その結果,各種香気成分の蒸留挙動は5つのグループに分類され,その傾向によって2回目,3回目の蒸留によって濃度が増減することが判明した。
また,市販3回蒸留泡盛と市販泡盛(一般酒)の香気成分の濃度を比較したところ,小型蒸留機を用いて2回の再留工程を経て増加していた成分は市販3回蒸留泡盛において高い濃度を,2回の再留工程を経て減少あるいは除去されていた成分は市販3回蒸留泡盛において低い濃度を示す傾向があった。これらの成分の中には検知閾値以上の濃度で含まれているものも多く検出され,濃度の増加や減少による変化によって泡盛の香気バランスが変化することが3回蒸留の効果であり,ひいては市販3回蒸留泡盛「尚」の特徴に寄与していると考えられる。特に3回蒸留泡盛の特徴である甘い風味には果実様の香りに寄与するエステル類の増加が,クリーンさには辛みや苦味に関係するイソアミルアルコールの減少が影響していると推察される。
今後は,今回得られた知見を基に,3回蒸留泡盛の特徴をより引き出すための蒸留条件の検討などの研究が進められることが期待される。
1)HepG2細胞において,複数のD-アミノ酸による脂質蓄積抑制効果を確認した。そのうち,特に効果の高かったD-Ala,D-Ser,D-Argの効果をL体と比較したところ,D-AlaとD-SerはL体よりも優れた効果を示した。
2)RNA-seqとエンリッチメント解析の結果,D-AlaはL-Alaと比較して,脂肪細胞の分化抑制を上方制御し,中性脂肪の生合成などの脂質に関する同化作用を下方制御することにより,HepG2細胞細胞において優れた脂質蓄積抑制効果を示す可能性が考えられた。
3)発酵食品中D-アミノ酸組成による脂質蓄積抑制効果を検討し,生酛清酒,味噌,醤油,黒酢のD-アミノ酸組成に脂質蓄積抑制効果を確認した。醤油と黒酢には特にD-Alaに多く含まれることが報告されており,D-Alaを高含有する発酵食品には脂質蓄積抑制効果が期待される。