日本食品標準成分表2020年版(八訂)が2020年12月に文部科学省から公表された。成分表2020年版では,エネルギーの算出方法の変更に伴い,全ての食品のエネルギー値が変更された。本稿では,食品成分委員会の委員として成分表2020版の策定に携わられた著者に,成分表2020年版の特徴および改訂のポイントについて解説をして頂いた。特に,醸造食品の成分値についても解説を加えて頂いた。
黒麹菌は,泡盛醸造において,原料米に含まれるデンプンを糖化し,もろみの腐敗を抑制するクエン酸を生産する役割を果たしている。最近,黒麹菌が泡盛における香気物質生成にも関与することが注目されている。筆者らは,黒麹菌Aspergillus luchuensisの遺伝子破壊株,過剰発現株を用いた香気物質の分析等によって,泡盛の特徴香である1-オクテン-3-オールが黒麹菌によって生成されていること,その責任遺伝子が脂肪酸オキシゲナーゼppoCであることを明らかにした。黒麹菌による1-オクテン-3-オール生合成メカニズムについて解説頂いた。
鮮度保持機能を搭載した醤油容器が登場してから十数年が経過し,この容器を使用した商品が小売店の醤油の棚で存在感を高めている。鮮度を保持する2重構造の容器は,食用油やマヨネーズなどにも採用され,鮮度という潜在的であったニーズは,今や顕在化した価値として消費者に広く認知されている。今回は鮮度保持容器を世界に先駆けて投入したヤマサ醤油の開発担当者に,醤油容器の変遷と鮮度保持容器の開発経緯をまとめて頂いた。食品の包材開発に役立つ価値ある記事であり,関係者にはご一読をお勧めする。
日本酒百年貯蔵プロジェクトに提供された清酒28点について10年貯蔵後の成分分析を行い,以下の知見を得た。
1.0年目の分析値と比較すると,紫外部吸収,着色度,色彩値のb*,3-DGが顕著に増加した。酸度は有意に減少し,個別のアミノ酸も多くが有意に減少したが,アミノ酸の増加がみられた清酒もあった。香味成分については,カプロン酸エチル,酢酸イソアミル,酢酸エチルといった主要香気成分は減少し,カルボニル化合物,分岐脂肪酸および有機酸のエチルエステル,ポリスルフィド,ハルマンは増加するものが多かった。ただし,アルデヒド類は酒によっては減少した。
2.香味成分について閾値と濃度との関係を調べると,既報のソトロン,イソバレルアルデヒド,メチオナール,ベンズアルデヒド,DMTS,DMDS,ハルマンに加えて,乳酸エチル,フェニル酢酸エチルも閾値を超えるものがあった。
3.主成分分析の結果,麹歩合や精米歩合が高く,アミノ酸や有機酸が多い清酒ほど,色や香気成分の変化が大きい傾向がみられた。
4.成分間の相関を調べたところ,ECの増加量と0年目の尿素濃度との間に非常に高い相関がみられ,尿素がEC生成の支配的な要因であることが確認された。
シードルの品質特性パラメータを説明変数とし,香りの官能評価スコアを目的変数として,PLS(Partial Least Square)回帰分析を実施した。官能評価スコアに寄与する品質特性は,ステップワイズPLS-VIP(Variable Importance in Projection)により特定した。りんご香に対して正に寄与した成分はBrix,酢酸プロピル,酢酸ヘキシル,プロピオン酸エチル,1-ヘキサノールであった。また,甘い香りに対して正に寄与した成分はBrix,酢酸ヘキシル,プロピオン酸エチル,オクタン酸エチルであった。香りの好みに対して正に寄与した成分はBrix,総ポリフェノール,酢酸ヘキシル,デカン酸エチルおよび1-ヘキサノールであった。りんご香,甘い香りおよび香りの好みに共通して負に寄与した成分はイソアミルアルコール+2-メチル-1-ブタノールとフェネチルアルコールであった。
りんご果汁酸度からシードル醸造後の酸度を予測するモデルおよび醸造前後のBrix値差からシードルのエタノール濃度を予測するモデルを作成した。また,シードルの酸度/Brixおよびエタノール濃度/Brixからシードルの味嗜好性を予測するモデルを作成した。これにより,りんごの果汁Brix値と酸度および目標醸造後Brix値が決定されれば,醸造前に味嗜好性を予測できる。このモデルは,目標醸造後Brix値の検討に活用できる。