2020年,Lactobacillus属を細分化し,23の新属を提案する論文が発表された。Lactobacillus属はこれまで桿菌の形態を有する乳酸菌に対応する属として,ある意味わかりやすい分類群であったが,Lactobacillus属は急速な種の増加により200種を超えて属内の多様性が顕著になり,属レベルの分類の再検討が必要とされていた。Bergey’s manualでもLactobacillus属内をいくつかのグループに分けて種の解説がされていた。現在原核生物の分類は16S rRNA遺伝子の塩基配列に基づく系統分類で体系が構築されており,Lactobacillus属の再分類においてもそれに沿ったものである必要があると同時に,それが代謝様式,形態,細胞成分等の旧来の分類指標や分離源,生態学的特性などとの関連からも評価されなければならなかった。また,Lactobacillus属以外の乳酸菌の分類とのバランスも重要である。Zhengらの論文では今までLactobacillusと同定してきた菌種を25の属に細分化する提案である。その概要について解説する。
甘酒は,美容や健康への効果で注目を集めている発酵食品である。甘酒中の機能性成分については様々な研究があるが,著者は,米由来の難消化性タンパク質であるレジスタントプロテインが甘酒中に存在しており,有効成分として機能している可能性を見出した。甘酒のレジスタントプロテイン量を高める方法や,甘酒で確認された新たな機能性についても解説した。
我が国の国菌である麹菌は,日本酒,味噌,醤油,酢,味醂等の日本の醸造・発酵食品に欠くことのできない糸状菌である。醸造・発酵分野に加え,麹菌をチーズ製造へ活用することを目指して,著者らは産学官共同によるコンソーシアムを立ち上げ,製品開発に取組んだ。麹菌を用いたソフトタイプのナチュラルチーズの製品開発について,その研究・開発の経緯と学術的成果について,わかりやすく解説していただいた。麹菌の活躍分野をより広めるヒントが含まれていると思います。
新潟県産米の五百万石と越淡麗について,山田錦を対照として,醪中での蒸米の老化(消化性低下特性)を推定するため,エタノール含有緩衝液で液中放置した蒸米の酵素消化性を調べた。
その結果,これまでの他の米品種の報告8, 10-12)と同様,五百万石,越淡麗は,液中放置期間が長いほど酵素消化性が低下した。また,エタノール存在下で酵素消化性が低下するが,その程度はエタノール濃度が高いほど大きかった。
また,本研究では,液中放置した蒸米の酵素消化性と精米歩合の関係を調べた。以前の報告15)では,酵素消化性は精米歩合50 %の方が70 %より高いことが示された。しかし,本研究において,液中放置した蒸米の相対消化性の低下は,精米歩合50 %の方が70 %より大きかった。この結果は,高精白米は低精白米より液中老化が進行しやすい事を示唆した。
さらに,液中放置20日間で低下した相対消化性を100 %とし,液中放置の初期(0-10日)と後期(10-20日)での相対消化性の低下割合を調べた。その結果,消化性の低下割合は品種により異なる傾向を示した。
最後に,放置期間の初期(1-11日)と後期(11-21日)に分け,酵素消化性の総和(初期総和∑1+後期総和∑2=∑3)を推定,比較した。その結果,越淡麗と山田錦の方が五百万石より初期(∑1)及び20日間の総和(∑3)が大きく,以前の報告15, 17)と同様の傾向であった。しかし,後期の酵素消化性の総和(∑2)は,精米歩合50 %では,五百万石が最も大きかった。以上より,米の酵素消化性は,品種や精米歩合により異なることが示唆された。
以上より,液中放置の初期と後期において米の酵素消化性は,品種,精米歩合,エタノール濃度の影響を受けることが示唆された。醪での蒸米の酵素消化性を推定するには,更なる解析が必要である。
全国新酒鑑評会出品酒の「甘臭・カラメル様」,「焦臭」に寄与する成分およびその生成要因について検討した。揮発成分の網羅的解析の結果,鑑評会審査において「甘臭・カラメル様」(以下「甘臭」と略)もしくは「焦臭」の指摘が多かった出品酒(指摘酒)は,これらの指摘のなかった成績上位酒(対照酒)に比べて,アルデヒド類,アセタール類,含硫化合物などが多い傾向がみられた。また,GC-olfactometryにより,「甘い」においを連想させる成分としてホモフラネオールなどが見いだされた。網羅的解析およびGC-olfactometryにより見いだされた成分(候補成分)を対照酒に添加すると,官能評価による「甘臭」および「焦臭」の強度が指摘酒に近づく傾向がみられ,候補成分の「甘臭」「焦臭」への関与が示唆された。これらの特性の生成要因について検討するため,小仕込み試験を行った。もろみへの酵素剤添加やもろみ期間の延長により,原エキス分や酵母死滅率の増加とともに,アルデヒド類,アセタール類,含硫化合物,ホモフラネオールなどが増加した。また,火入れ前に貯蔵することにより,アルデヒド類やアセタール類が大きく増加した。これらの結果から,もろみでの米の溶解や酵母の死滅,ならびに貯蔵が「甘臭」「焦臭」に関与する成分の生成に影響を及ぼすことが示唆された。