芋焼酎には,ラベンダーや沈丁花,紅茶,マスカット,柑橘,ヨーグルトなど様々な香りを特徴とする製品が現れており,その酒質に影響を与える香気成分の解明も進んでいる。筆者らは市販芋焼酎の多検体分析による香気成分濃度と製造条件の関係,さらに,一次もろみのクエン酸濃度が芋焼酎の香気成分へ与える影響を検討している。ここで示す香気成分は幅広い酒類に含まれるため,芋焼酎以外の分野の方にもぜひご一読いただきたい。
関東甲信越地区の醤油の特徴は,甘味料などの添加物を使用しないこいくち本醸造醤油が主流であることだ。これは,江戸から明治時代に銚子・野田で起こった醤油醸造会社が醸造技術と品質を高め,大きく発展し,現在まで続く大規模な醤油メーカーとなっているためでないかと推察される。なぜこのような特徴を持つに至ったのか,歴史を紐解いて考察したい。
著者らは「食を介した予防医学」への貢献を目指す中で,「もろみ酢」にたどり着いている。もろみ酢の魅力的な性質を健康増進に活用するために,乳酸菌と酵母による発酵技術を取り入れた新規飲料の開発に成功し,その機能性を明らかにしている。もろみ酢は泡盛の副産物(泡盛蒸留粕)を原料とするため,本飲料の普及は副産物の削減にも繋がる。「健康と環境の両面に関連するSDGsの実現」を目指している方は,ぜひご一読を。
二分搗き精白米および精白米を用いて製麹を行い,麹中のXln,FAEおよびPAD活性の測定と麹およびもろみ中のFAO,FAおよび4VGの定量を行った。その結果,XlnおよびFAEは製麹初期の活性が最も高く,PADは製麹後期に活性が高いことが分かった。また,FAEおよびPADの酵素活性はPR98麹の方が高かった。XlnおよびFAEの酵素反応生成物であるFAOおよびFAは,麹中ではもろみ発酵3日後と比較すると1/4程度しか検出されなかった。すなわち,製麹中に発現・蓄積されたXlnおよびFAEによって,FAOおよびFAの一部は製麹中に,多くはもろみ中で生成されたことが分かった。4VGは麹中ではほとんど生成されず,多くはもろみ中で生成されていた。製麹30時間の麹で仕込んだもろみ中では,遊離FAが十分あるにも関わらず,4VGがほとんど生成されなかった。このことから,もろみ中ではFAの有無に関わらずPADの発現は誘導されず,製麹中に既に蓄積されていたPADによって,もろみ中のFAが4VGに変換されることが示唆された。また,精米歩合の高い二分搗き精白米を用いることで,通常の精白米を用いる場合に比べ,麹の菌体量あたりのFAE活性およびPAD活性が高くなり,結果としてもろみ中の4VG量が著しく増加し,最終的に4VGを多く含む泡盛原酒を製造できることが分かった。
ワイン酵母株(計43株)の4-VG生成能と清酒醪を模した小規模発酵試験によるアルコール発酵力を評価した。その結果,4-VG非生成株は10株存在しており,生成アルコール濃度が対照株として用いたきょうかい901号の9割以上の株が34株存在していた。4-VG生成試験によって候補株を43株中10株に選抜できたことから,4-VG生成能を指標とした選抜は,清酒醸造に適したワイン酵母株の効率的な探索に必要であることが強く示唆された。4-VG非生成で発酵力が高かったRIB1026,RIB1045,RIB1049,RIB1062,RIB1063およびRIB1069(計6株)の清酒小仕込み試験での醸造特性について検討したところ,16.1~18.85%のアルコールを生成し,清酒醸造が可能な発酵力を示した。また,これらの株は有機酸や香気成分の生成能に特徴があることに加え,キラー性を有しておらず,酒造場にて他の清酒製造用酵母に影響を与えることなく,特徴的な清酒を製造する能力を有していることが示唆された。
本研究では,蒸米の溶解性予測を念頭に,デンプンの糊化特性と老化特性との関係性について調べた。2015から2019年に収穫されたコメ4品種44点を試料とし,デンプンの糊化ピーク温度(℃),アミロペクチン割合(%)及び最高粘度とデンプンの老化特性値との関係を調べた。デンプンの老化特性値は,デンプンの老化速度と試料濃度との関係から得られる近似直線の傾きと定義した。デンプンの糊化ピーク温度と老化特性値との相関係数は0.536であり,糊化ピーク温度に基づいて老化特性値を推定することは可能と考えられる。一方,最高粘度とデンプンの老化特性値の関係を調べたところ,相関係数が0.615であり正の相関が認められた。したがって,最高粘度は蒸米の溶解性を予測するための指標として有望であると考えられる。