出芽酵母では,これまで8倍体,16倍体,32倍体あるいはそれ以上のいわゆる“超”高次倍数体を自在に育種できる技術は開発されていない。出芽酵母は,どこまで高次の倍数体を育種できるのか,どこまで大きな細胞を作ることができるのか,倍数性に限界はあるのか,あるとすれば,それはどのような因子によって決められているのかなど,現時点では他の生物種では挑戦不可能な,高次倍数体をめぐるいくつかの話題について解説をしていただいた。
新潟大学は,日本文化や伝統に根差した日本酒に対象を絞った「対象限定・領域横断型」の「日本酒学(Sakeology)」を始めた。その誕生の経緯と「日本酒学センター」の取り組みや将来展望について解説する。
近年,アレルゲン28品目を使用していない加工食品のニーズが高まっている。本稿の筆者が所属する会社は,えんどう豆を用いた醤油様調味料の開発に成功し,えんどう豆醤油として販売している。これまでも,大豆・小麦を使用しない醤油様調味料は数多く開発されてきたが,醤油とは風味が異なるものが多かった。本稿のえんどう豆醤油は,醤油に比較的近い特性を有しているようであり,大豆・小麦アレルギーの患者向けの醤油代替品として期待できる。
製造現場における製麴法の違いについて理解を深めるために,蓋麹法と箱麹法について麹周辺環境の計測評価を実施し,その品質を評価した。その結果,箱麹法で箱内の空間温度が品温より明らかに低い経過をとるのに対し,蓋麹法では,蓋内の空間温度は品温に近い高い経過をとることが確認できた。加えて,蓋麹法では蓋内の空間湿度が,箱麹法よりもかなり高く推移していた。このような製麴状態の違いが出麹時の計測箇所毎の品質に影響を及ぼしていると考えられた。出麹時の水分含量は蓋麹法の方が高くなっていた一方で,菌体量は蓋麹法の方が低くなっていた。出麹時の状貌は箱麹法の方が進んでおり,いずれの酵素力価も箱麹法の方が高かったが,GA/A比は蓋麹法の方が高くなっていた。
三重県清酒酵母の遺伝的特性および醸造特性を評価したところ,下記のことが示された。
・酵母の倍数性試験の結果,MK1,MK3,MK5およびMLA12は二倍体であり,MK7は四倍体であると示唆された。
・RIM155067insの遺伝型タイピングから,三重県清酒酵母5株はすべてK7グループに属する株であると判明した。
・PFGEの核型観察やSNP頻度分布解析から,MK1およびMK3はK10系統に属し,MK5およびMK7はK9系統に属することが示唆された。また,MLA12には,おそらく変異処理のため,特にSNPが多いことが判明し,菌株の維持管理の上で,留意が必要と考えられた。
・MK3のカプロン酸エチル高生産能はFAS2G3748A変異がホモ接合型で導入されていることに由来し,MLA12の酢酸イソアミルおよびイソアミルアルコール高生成はLEU4C1652T変異由来と考えられた。
・清酒の小仕込み試験では,ゲノムシーケンス通り,MK3はカプロン酸エチルを高生産し,MLA12は酢酸イソアミルおよびイソアミルアルコールを高生成することが示された。また,有機酸については,MK7はコハク酸を高生産し,MLA12はリンゴ酸を高生成することが示さた。
・主成分分析の結果,おおよそ三重県清酒酵母がそれぞれの酵母の醸造特性を示す形で分布した。中でも,MLA12の醸造特性は特にユニークであることが示された。