人間が転んで膝をすりむき傷ができると,かさぶたができ,やがて治癒する。同じように,酵母が醸造などの過程で細胞表層に物理・化学的ストレスを受け傷ができると,様々な分子の寄与により修復される。本稿では酵母をモデルとして解明されてきた真核細胞の細胞膜修復機構(細胞創傷治癒機構)について解説し,今後の展望を紹介する。
全国各地に清酒造りに関する神社が存在するが,稲作が定着せず,温暖な気候もあって,清酒造りが難しかった南九州には当然のことながら清酒造りに関わる神社はない。また,焼酎造りに関する神社も存在していなかった。南九州に焼酎にふさわしい神社はないか。神話をひもといていくと,焼酎の誕生からその発展の歴史を予見するような神々を祀る神社があった。本稿で,竹屋神社が焼酎神社と呼ばれるに至った経緯を紹介し,あわせて焼酎製造法と風土の関係,その独自性を知ってもらえれば幸いである。
2.8%精米の超高度精白米は全て無心白米で,35%精米と比較して粗タンパク質が少なくなっていたが,米に含まれる主要なタンパク質組成に大きな変化はみられなかった。また,超高度精白米を用いて製造した麹は,35%精米の大吟醸麹と比較して,A活性が低く,ACP活性が高いという特徴を示した。この高いACP活性は,タンパク質が少ない超高度精白米を用いた醸造において,酵母の代謝(発酵)に最小限必要なアミノ酸を供給する役割を果たしていると考えられる。
上記のような特徴を持つ超高度精白米とその麹を用いても,酒母,もろみ共に,一般的な大吟醸造りの指標に沿った管理,製造が可能であった。精米歩合の違いの観点から,35%精米と比較した超高度精白米の製成酒は,①アミノ酸総量が半分以下であり,主要アミノ酸におけるプロリンの組成が高く,タウリン量が多い,②有機酸総量はやや少ないが,酢酸が多い,③グリセロール,長鎖脂肪酸とそのエチルエステルが多い一方で,短鎖脂肪酸エチルエステルと高級アルコールは少ない,という特徴がみられた。さらに,超高度精白米を用いたもろみでは,発酵終了時まで酵母の死滅が確認されず,特徴的に多くなっていたタウリンやグリセロール等の寄与が推測された。このように,超高度精白米を用いると,製成酒においてアミノ酸が少なくなるだけではなく,発酵中における酵母の代謝活性に様々な変化が生じることが推察され,これまでにない特徴を持った酒質の清酒製造が可能になると考えられる。
酒米新品種山恵錦は,当時開発途中であった「自己消化法を用いた麹製造適性評価法」を用いて選抜した品種である。本評価法は少量の酒米からプラスチック容器を用いた製麹を行い,麹の自己消化によって得られる4指標を基に評価を行うものである。本研究では本評価法の妥当性を確認するとともに,育種時点では評価しきれていなかった山恵錦の麹製造適性評価を,美山錦,ひとごこち,金紋錦,山田錦といった既存品種とともに行った。
(1)山田錦と美山錦間のように特定の品種間で有意差のある評価結果が得られ,品種間の特性の差異を評価可能なことを確認した。また,統一した条件下では複数品種の麹製造適性を相対評価することができた。
(2)本評価法において,収穫年,産地,種麹の種類などによる影響を受けることを確認した。
(3)山恵錦は美山錦と同等以上の溶解性を持ち,アミノ酸生成において美山錦と同等に低い性質であった。
(4)本評価法は酒米育種において,酒米の製麹特性を把握するための有用なツールと考えられる。
麹製造適性評価は,蒸米のデンプンやタンパク質の分解に関わる多くの酵素が総合的に働いた結果を示すものと考えられ,溶解性の程度,グルコース生成の程度,アミノ酸生成の程度といった最終的な酒質に重要な酒米の製麹特性を予測する実用的な方法であることを確認した。
本研究では焼酎の醸造に用いられる白麴を用いた甘酒を調製し,同じく我々が調製した黄麴甘酒を対照として比較分析を行った。また,白麴菌はクエン酸を多量に生成することから,酸味の調整や含有成分の改変を目的として製麴時間を変更した白麴を用いた甘酒についても検証した。その結果,黄麴甘酒と比較して白麴甘酒に多い成分はクエン酸や一部のアミノ酸,ポリフェノールなどであった。一方,白麴甘酒にはGABAがほとんど含まれていなかった。白麴の製麴時間が甘酒の成分に与える影響については,グルコースとクエン酸などの有機酸,多くのアミノ酸は製麴時間が長くなるほど含量が増加したが,オリゴ糖やフェルラ酸は逆に減少した。抗酸化能についてDPPHラジカル消去活性を測定した結果,白麴甘酒の抗酸化能は製麴時間30時間以上になるとほとんど差はなく,これは総ポリフェノール含量の傾向と一致した。黄麴甘酒の抗酸化能は白麴甘酒よりも高く,ポリフェノール含量との相関はみられなかった。以上の結果から,白麴甘酒は一般的な黄麴甘酒と異なる成分特性を有しており,用いる白麴の製麴時間によって成分組成が変化することが明らかとなった。