麹の品質に影響を及ぼす因子は多く,しかもそれぞれが複雑に絡み合っていることから,どこをどう変えれば目的とする麹が出来るのか,製麹担当者の悩みや迷いは尽きません。本解説では,現場の麹の経時的な分析による相関を調べ,さらに重回帰分析と深い解析が行われており,麹を作るものにとって大きな道標になることでしょう。
筆者らは醤油の品質向上と安心安全な原料調達を目的に,地元での醤油醸造に適した新品種の小麦・大豆栽培に取り組んだ。米,小麦,大豆を2年間で輪作することで農地の有効利用を進め,諸味粕堆肥を用いて地力の維持・向上を図る資源循環型栽培法を確立した。更に化学肥料の使用削減の可能性も含めSDGsの推進を目指した。新品種はたつの市での栽培に適しており,醤油原料としての品質も良好であった。このような取り組みが全国に広がり,食糧自給率の向上につながることを期待したい。
アントシアニン色素を豊富に含む紫黒米「佐賀40号」を用いて純紫黒米酢の開発に取り組んだ。アルコール発酵工程ではクエン酸を多量に生成する焼酎麹を使用し,酢モロミ発酵後に色素抽出工程を加えることで,アントシアニンの色素と機能性を活かしつつ,酸味のまろやかな旨味の強い醸造酢を製造することに成功した。
酒造用原料米の醸造特性(玄米千粒重,20分吸水率,120分吸水率,粗タンパク質含量,消化性(フォルモール窒素;FN),Brix/FN比)と出穂後1ヶ月間の気温との相関関係を米品種ごとに全22品種について詳細に解析したところ,以下の知見が得られた。
(1)玄米千粒重は,15品種において,出穂後1ヶ月間の最低気温,最高気温のいずれとも負の相関を示した。米品種によるものの,一般米では最低気温の影響が強く,酒造好適米では平均気温,最高気温の影響が強い傾向が示唆された。出穂後1ヶ月間の中期から後期の気温の影響がより大きい傾向が示唆された。
(2)吸水率は,20分吸水率,120分吸水率共に,14品種において,特に出穂後1ヶ月間の最高気温と正の相関を示した。
(3)粗タンパク質含量は,11品種において,出穂後1ヶ月間の最低気温や平均気温と正の相関を示し,特に最低気温と相関を示す品種が多かったことから,夜間の気温の影響を強く受け,夜間の気温が高い場合は粗タンパク質含量が高くなることが示唆された。
(4)FNは,粗タンパク質含量及びBrix値双方の影響を受け,出穂後1ヶ月間の気温条件の影響が相殺されたと考えられ,一定の傾向を示さなかった。
(5)Brix/FN比は,11品種において,出穂後1ヶ月間の最低気温,最高気温のいずれとも負の相関を示した。
東京都内の花壇に飛来した1匹のコマルハナバチから3株の酵母,Ha-1,Ha-2及びHa-3を分離した。rRNA遺伝子におけるITS領域の塩基配列からHa-1はS. cerevisiae,Ha-3はW. anomalusと同定した。Ha-2はS. cerevisiaeと類縁の酵母と思われるが,現時点では同定できず,不明とした。いずれの菌株も15%(v/v)以上のアルコールを生成した。TTC染色性はHa-1とHa-2が赤,Ha-3は白であった。また,Ha-1の30 ℃における発酵速度はK-901とほぼ同等であった。Ha-2ではその77%,Ha-3はHa-1やK-901の44 %と遅かった。Ha-1とHa-2はK-901とK-701に対するキラー性も認められなかった。以上の結果から,Ha-1株は清酒醸造への実用化が可能と考え,Ha-2株をも加えて,K-901を対照として小仕込み試験に供した。その製成酒の各成分と官能評価から,Ha-1は実用株として使えると判断した。よって,Ha-1を用いて総米200kgの仕込みを行い,純米吟醸原酒として製品化することができた。
米溶解性の推定法として用いられている蒸米酵素消化性について,米溶解性の簡易推定法として報告のある出穂後30日間の平均気温とアルカリ崩壊性試験,筆者らが報告したヨウ素呈色多波長走査分析のλmaxによる推定を比較検討した。出穂後30日間の平均気温と蒸米酵素消化性のBrix値は相関性が低い結果となった。アルカリ崩壊性試験とヨウ素呈色多波長走査分析のλmaxによるBrix値の推定では同等の精度を示した。ヨウ素呈色多波長走査分析の測定は分光光度 計を用いるが,単日で推定可能な点,数値として客観的に計測可能であることから,原料米の品質管理に用いられることが期待される。