各地で地域性に根差した清酒酵母の開発が行われている。京都市の地方独立行政法人 京都市産業技術研究所は,2003年に独自のカプロン酸エチル高生産酵母を開発し,翌年から「京の琴」の名称で分譲を開始した。その後も次々と新規酵母の開発と分譲を進め,現在では5種類の「京都酵母」をラインアップしている。近年は,京都酵母のブランド化と京都酵母を使用した多様な製品開発にも取り組んでいる。
鹿児島県および宮崎県のかんしょ(サツマイモ)産地においてサツマイモ基腐(もとぐされ)病が多発し,いもの生産量が減少して焼酎の原料不足が深刻な問題となっている。本稿では,本病が発生するしくみと防除するための「持ち込まない,増やさない,残さない」対策について解説するとともに,発生から4年目にしてようやく被害の減少に至ったその理由について私見を記す。焼酎やかんしょの生産に不安を感じている方はご一読を。
しょうゆは日本人の食生活を支えている基本的な調味料であり,地域によっていろいろなタイプがある。中国地域で販売されている売れ筋しょうゆは,旨味が強く,醸造香が少なく,甘みが強いしょうゆであるとの報告がある。同地域の地理的,歴史的な背景を考察することにより,同地域で受け入れられているしょうゆの特徴について推察した。
亜硫酸および酵母無添加のワイン製造において,醸造機器やブドウ畑のS. cerevisiaeが発酵に関与するとの報告もあるが,樽の洗浄後にどの程度酵母が残存し発酵に関与するかを調べた報告は少ない。そこで,S. cerevisiaeで発酵させた醪にoak chipsを浸漬することで酵母を定着した後,(1)水洗い,(2)80℃熱処理,(3)50 mg/L亜硫酸浸漬,(4)30% ethanol浸漬の4区分の洗浄処理を行った。その後,当該チップに殺菌処理した果汁を加えた結果,(2)80℃熱処理以外の条件で発酵が起こった。さらに,発酵後のオークチップを取り出し水洗いした後,収穫直後の未殺菌の果汁を添加したところ,ブドウ由来のH. uvarumとオークチップ由来のS. cerevisiaeが増加し,最終的に約1:1の割合となった。非殺菌果汁発酵終了後のオークチップ表面を走査電子顕微鏡で観察したところ,卵型およびレモン型の酵母が観察され,オークチップのような木材表面は酵母が留まりやすい環境であり,留まった酵母がワインの発酵に関与する可能性を示唆した。
温度が清酒の品質に及ぼす影響について基盤的な知見を得ることを目的に,市販清酒を0~35℃で最長6か月間貯蔵し,官能評価および成分分析を行った。官能評価の結果,いずれの試料も35℃で老香が顕著に増加し,総合評価が悪くなった。一方,0℃と15℃では,すべての試料において有意差がみられなかった。成分分析の結果,DMTSは35℃で顕著に増加し,25℃以下ではあまり増加がみられなかった。メチオナールは35℃で大きく増加したが,25℃でもやや増加がみられた。DMTS,メチオナールとも老香強度と高い相関を示した。貯蔵開始時と6か月後の各成分の濃度の平均値を比較すると,0℃では変化率は10%以内だったが,25℃ではメチオナールが約2倍に増加し,35℃ではDMTSが10倍以上に増加した。これらの結果から,清酒の品質を保持するためには貯蔵温度は15℃以下が望ましいと考えられた。
我々が自然界から分離した清酒製造用酵母(26株)の4-Vinylguaiacol(4-VG)生成能とその生成遺伝子の遺伝子型について調べた。全ての実用分離株の50 mg/Lフェルラ酸添加麹汁培地における培養液中の4-VG含量は,きょうかい9号酵母と比較して同等かそれ以下であり,4-VG生成能を持たない株が選抜されていた。4-VG生成遺伝子の遺伝子型について解析した結果,全ての株のFDC1およびPAD1はホモザイガスな配列であり,現在汎用されている清酒酵母に特徴的な遺伝子型を有していた。また,FDC1に生じたナンセンス変異(c. 160A>T)による機能欠損が4-VG非生成の原因であった。従って,4-VG生成能は清酒製造用酵母の選抜指標として有用であり,FDC1の遺伝子型はこれを識別するマーカーとして有用であることがあらためて確認された。