日本には古くから発酵の文化が根付き,発酵を利用した食品は数多く存在する。しかし,全国的にはほとんど知られていない発酵食品も多い。発酵食品は,乳酸菌の働きによって独特の風味を付与するだけでなく,乳酸菌が生産する種々の抗菌物質が保存性の向上に寄与する。乳酸菌の中にはバクテリオシンと総称される抗菌ペプチドを生産するものがあり,熊本県球磨地方に伝わる伝統的な発酵食品の味噌漬け豆腐から,複数のバクテリオシンを生産する乳酸菌を見出したので,その研究を紹介し,将来展望を考察する。
醤油乳酸菌に関する研究では,バクテリオファージ非感受性変異株の研究や,内在性の挿入配列を用いたアルギニン非分解性スターターの育種など新しい知見についての報告があった。ヘリウムガスの供給量不足対策として,改良デュマ法による醤油の窒素分析においてキャリアガスにアルゴンガスを用いた場合の再現精度について検証報告があった。醤油の歴史では,原典現代語訳日本料理秘伝集成から江戸期における醤油の料理への利用の変遷について調査報告があった。
変異遺伝子数が少ないというイオンビーム育種技術の特徴を生かした清酒酵母開発を行うため,生存率の高い照射試料調製方法を検討し,5-FOA耐性獲得を指標とした変異株の全ゲノム解析を行った。K701を用いて前培養条件を検討したところ,1 Mソルビトールを添加したYPDS培地を用いることにより,フィルター固定した清酒酵母の生存率が上昇した。また,フィルター固定した清酒酵母を回収する際,YPD培地で回復培養を行うことにより,生存率は約90 %まで上昇させることができた。この結果は,8株の他のきょうかい系清酒酵母でも同様であった。続いてK701に6種類のイオンビームとUV照射処理を行い,5-FOA耐性を指標にした変異株を試みたところ,C220,C320,He50,Ar460及びUV照射により候補株が得られた。LETが高くなると同じ線量でも致死効果が高くなる傾向であった。一方,最もLETが高いAr460では致死効果があまり高くなく,オーバーキル効果によるものと考えられた。変異株のゲノム解析の結果,UVに比べてイオンビームは,ゲノムに入るユニークな点変異が少なく,LETが高ければLOHと推測される大規模な変異が入りやすい傾向が確認された。これらのことから,発酵能などの醸造特性に悪影響を与える余計な変異が入ることなく,目的の酒質改善のみをさせるという,イオンビーム照射による清酒酵母開発の処理条件が見つけられたと言える。