麹を原料とする味噌や醤油,食酢,味醂,日本酒,焼酎,泡盛などは我が国の食卓に欠かせない発酵飲食品である。そのなかでも麹甘酒は,麹と水からだけでつくられることから麹そのものを摂取する飲み物と言える。主成分がグルコースという世界的に見てもユニークな甘味飲料であるが,近年その健康効果についての科学的根拠が積み上がってきている。本解説ではその一端を紹介し,麹甘酒研究進展の一助になることを期待する。
酢は,酵母がつくったアルコールを酢酸菌がさらに好気的に発酵して酢酸に変換することによってつくられる。したがって,各地で地域の様々な酒を原料として特徴的な酢が製造されている。世界各地の酢に詳しい筆者に,その原料,製造方法,製品の特長,調味料やその他の利用方法について解説していただいた。
パンの伝統的な発酵では,sourdoughとよばれる乳酸菌と酵母が自発的に増殖したドウを微生物源に用いる。このsourdoughに生息する乳酸菌と酵母は,出来上がったパンの風味や食感に影響を及ぼすことが知られている。近年は,“イースト”を利用した合理的な製パン法にsourdoughの個性的な美味しさを融合させた新たな製パン法が開発されている。本稿では,sourdoughに生息する乳酸菌と酵母のの多様性について概説していただき,sourdoughを継代する過程で起こる乳酸菌と酵母の変遷現象について筆者らの研究成果をご紹介いただいた。
「白鶴錦」は「山田錦」に匹敵する優良酒米開発を目的として,種子親に「山田穂(九大)」,花粉親に「渡船2号」を用いて育成された酒米品種である。「山田錦」の両親品種は現存しないため,本研究では「山田錦」「白鶴錦」とこれらの両親品種に相当する「山田穂」3系統,「渡船」3系統に加え,「白鶴錦」の姉妹2系統,酒米品種「雄町」,一般食米品種「コシヒカリ」の全ゲノム情報を比較することで,「山田錦」と「白鶴錦」の遺伝的背景を明らかにすることを試みた。
12品種・系統の全ゲノム情報から系統樹を作成したところ,「山田穂」グループ,「渡船」グループに大別でき,現存する各3品種・系統はそれぞれ遺伝的に非常に近縁であることが示された。次に,多型比較解析を行った結果,「渡船」3系統間では「渡船(九大)」が,「山田穂」3系統間では「新山田穂1号」がより共通の品種・系統の遺伝子型を多く含むことが示された。
「白鶴錦」は「山田錦」と比較して短稈形質を持つ。「山田錦」と「白鶴錦」間で異なる多型を抽出した結果,稈長QTLが存在する第1,2,4染色体に集積していることが明らかとなった。さらに,「日本晴」「渡船2号」「白鶴錦」は第1染色体短腕領域の日本晴型短稈QTLや草型に関与するOsSPYの対立遺伝子多型を共通して保持していることから,「渡船2号」の短腕遺伝子座を「白鶴錦」が継承することにより短稈形質が受け継がれたことが本解析により示唆された。