新潟県農業総合研究所食品研究センターにて開発された米の低タンパク質化処理技術を活用した酒造りを検討した結果,以下のような知見を得た。
(1)使川菌種はLactobacillus plantarum(LPT)を採用し,低タンパク質処理時間は目標のタンパク質含量から15時間が妥当であると判断した。SDSPAGEの観察では,PBI及びIIともに対照に比べ薄くなっていた。特に22~23kDaの塩.某性サブユニットの減少が顕箸であった。
(2)40℃ で低タンパク質化処理を行うため,米中の構造が脆くなり,デンプンの流出が大きくなると考えられたが,通常の原料処理との比較からデンプン流出の影響はほぼないことが認められた。また江川の報告の通り,低タンパク質化処理によって糊化状態がより保持され,また溶解性も保持されることが確認できた。
(3)小仕込み試験により得られた清酒は,いずれも幅のあるふくらみを持ち,ソフトな清酒として位置づけられた。目標の清酒に近い品質が得られ,また製成酒の型から低アルコール酒としての展開も示唆された。
最後に,本研究は(株)エヌ・ワイ・ケイの事業化に向け,朝日酒造(株)が原料処理に関わる分析を担当した。本稿の投稿を許可いただいた(株)エヌ・ワイ・ケイ和田勇吉社長,朝日酒造(株)平澤亨社長に深謝いたします。
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