一、清酒の揮發性「アルデヒード」は「アツエトアルデヒード」なり
二、清酒の「アルデヒード」量は其の釀造工程中翫醪の時期に於ては極めて僅少に過ぎず、貯藏期に入りては漸時増加するを定則とし滿一ケ年にして熟成の頂上に達するとき最大量に及ぶ
三、新酒の平均含量は〇・〇〇五七%にして秋期には〇・〇一一一七%にも上昇す即ち「アルデヒード」含量によりても新古酒を辨別する事を得
四、「アツエトアルデヒード」は防腐性を有し清酒中其含量の多少は能く火菌菌に對する抵抗の強弱を指示するが故に貯藏期中其の變化に注意して適當なる處置を講するならば火落の害を逃れ得べし、此れ著者が「アルデヒード」の定量を以て火落警戒の一法とする所以なり
五、清酒の品質と「アルデヒード」含量との間には格別の關係なし、強ひて云はゞ、若造りせる清酒は「アルデヒード」含量は比較的小なり
六、日本産釀造物中、醤油に於ても「アツエトアルデヒード」の存在を證する事を得たり、燒酎にては、其の香氣が全く「アルデヒード」含量に正比例するを發見したれば「アツエトアルデヒード」が清酒香氣の一成分として重要なる位置を占むべき事は推し得らるるなり
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