一、酸浸漬に於て各酸の濃度に依り、其の蛋白質の溶出量の異なるを見たり。而して最も多く溶出せる酸の濃度は酸の種類に依り同一ならす。盤酸にては〇・三%にして硫酸にては〇・二%亜硫酸にては〇.六%なり。此の濃度に於ては盤酸は蒸溜水の約二六・二倍量の蛋自質を溶出し硫酸にては九・六倍量を溶出し亜硫酸に於ては一三・九倍量を溶出す。一方澱粉に就て見るに溶出量は蒸溜水其の儘のもの最も多く、硫酸之に次ぎ亜硫酸、盤酸は極めて微量なり。而して之等酸浸漬自米の水素「イオン」濃度と糖化醗酵との關係につきては、試験の結果より見て前配の如き酸使用量の範園内於ては糖化醗酵上に差したる悪影響なきを認めたるにより、實地醸造上、化學的に精自度を高め得らるるものなることを知り得たり。之等酸中璽酸は品質上、経濟上最も良好にして〇・三%にて浸漬する時は約割内外の精自度を高むるものと思考せらる
一、璽酸浸漬米にて仕込をなす揚合に於ては適量の無機螢養物を添加すれば醗酵経過更に佳良なるべし之の鮎に關しては今後の研究を期す
一、酸浸漬米のム債を槍したるに五・五-四・〇にして瑞便の差異ポより「ヂアスターゼ」に大なる變化を興へざるも、馬便の小なるに從ひて多少「ヂアスターゼ」の糖化力を減するものの如し
一、璽酸浸漬は硫酸浸漬及び亜硫酸浸漬に比し比較的短時間にして可なることを認めたるにより、甚しき硬質米に封し璽酸浸漬を施行する事は實験上有敷なるものと思考せらる
一、醗酵試験につきこれを見るに、亜硫酸仕込のもの最も醗酵緩漫にして微なる異臭を威せしも、他は大なる差異なく璽酸仕込のもの最も佳良なる香氣を生せり。此等製成酒の品位に就きて見るに璽酸最も良好にして亜硫酸此れに次ぎ硫酸最も劣れり
一、璽酸浸漬米使用の大量仕込は今後試験する豫定なり
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