以上を要約すると
1. 設備・原料処理
当局管内は小醸家の割合が多く設備製造面に近代化を充分に考えなくてはならない。
蒸きょうの面においても短時間蒸きょうなどには意外に消極的である。
2. こうじ
全国的に簡易製こうじの大盛・床こうじ法に移行しているが九州杜氏の普及率は意外と低い。
製こうじは精米歩合の低下によって品温経過も若干低温に又在室時間も短かくなっている。
その中では芥屋, 小値賀・生月, 杜氏群が最高温が低くまた在室時間も短かい。
3. 酒母九州杜氏全体が速醸系の若酒母造りであるがその中で芥屋, 城島, 杜氏群は低温の若い酒母造り, その他の久留米, 瀬高など5杜氏群は中温の標準経過に近い酒母造りをしており, 両者の造りの傾向には5%の危険率で有意差が認められる。
4. もろみ
温暖な九州も1仕込数量が漸次大型化し, また密閉タンク仕込に移行している。またドンブリ仕込が漸増しつつある。
杜氏群別では大差は認められない。
5. 製造歩合
温暖な九州で安全醸造を期して酒母歩合が若干多いのが目立つ。杜氏群別では芥屋, 杜氏群がこうじ, 酒母の使用歩合が最高で, 小値賀・生月, 杜氏群が最も少ないが両者の差はそれぞれ0.5%と0.6%である。汲水歩合には大差は認められない。
以上により九州杜氏の歴史は古いが技術的には新潟・南部・広島杜氏などと同じような技能をもった杜氏集団といえよう。
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