味噌用大豆の原料処理において, 浸漬時間, 蒸煮条件が蒸し豆の水分, 色, 固さ, 消化性などにどのように影響するかを試験した。
1. 浸漬時間の長短により, 浸豆の色にはいちじるしい差を生じ, 時間を長くするほど大豆の明るさ (Y%) は増大する。
2. 蒸煮中に大豆水分の変動はほとんど無く, 浸漬中の吸水度によって蒸し豆の水分が規整される。
3. 一般に蒸煮条件を強くすると大豆の着色は進み, Y%の低下は大きいが, それにも増して蒸し豆の明るさに大きな関係をおよぼすのは, 浸漬大豆自体の色であって, 浸漬時間の短いものは暗く, 長いものは明るく蒸し上る。
4. 強く蒸せばある程度固さは減るが, 浸漬時間の短い大豆は, 長時間浸漬した大豆にくらべ相当固く蒸し上り, かつ後者は加熱程度を強めることにより軟化度が大きい。かような点から, 蒸煮大豆の固さに対しても, 大豆の吸水度の多少が大きな関係をもつことを推定した。
5. 蒸煮大豆の消化性は, 蒸しの条件を強くすれば若干減少するが, 工業的に採用されている諸条件ではいちじるしい消化性の差違は見られない。
これらの結果から, 味噌用大豆の原料処理においては, 蒸煮条件もさることながら, むしろ浸漬時間の長短が蒸し豆の水分, 色, 固さにきわめて大きく影響する様相を明らかにし, 蒸し豆を明るく, 軟かく仕上げるには浸漬時間を長くして充分吸水させることが有効といえる。
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